それ、オウム返し?エコラリア?まずはこの違いから!
子どもとおしゃべりしているときに、「さっき言った言葉をそのまま返された…」なんて経験、ありませんか?
たとえば…
親:「おやつ食べる?」→ 子:「おやつ食べる?」
親:「今日どこ行くの?」→ 子:「今日どこ行くの?」
こんな風に“まるっと同じ言葉”を返されると、「ん?聞いてないの?」「真似してるだけ?」と、ちょっと不安になる方もいるかもしれません。
でも実は、この“くり返しのことば”には、大きく分けて「エコラリア」と「オウム返し」という2つのパターンがあるんです。
言い方は似てるけど、意味や背景は全然ちがうので、まずはこの違いを知っておくことがとっても大切!
この章では、「エコラリア」と「オウム返し」って何なのか? それぞれの特徴や目的、見分けるポイントをわかりやすく解説していきますね。
エコラリアってどういう意味?
― 専門用語だけど、実はよく見かけるあの行動!
「エコラリア(echolalia)」って、ちょっと聞きなれない言葉ですよね。
でも実は、子育てや保育・教育の現場では意外とよく見かける行動なんです。
エコラリアの定義をカンタンに言うと?
「誰かの言葉をそのまま繰り返す行動」のこと。
語源はギリシャ語で、“echo(こだま)+lalia(言葉)”。つまり、「言葉のこだま」みたいなイメージです。
たとえば、
大人:「りんご食べたい?」→ 子ども:「りんご食べたい?」
といったように、問いかけに対して、まったく同じ言葉を返すのが特徴です。
エコラリアが見られる背景には?
この行動は、特に自閉スペクトラム症(ASD)などの発達特性がある子どもに多く見られます。
ただし、ASDに限らず、言語発達の初期段階の子どもなら誰にでも一時的に現れることがあるので、「エコラリア=異常」とは限りません。
また、エコラリアは意味のない言葉の繰り返しではなく、「何かを伝えようとする手段」のことも多いんです。
「自分の気持ちをどう表現していいかわからない」
「相手の言葉を確認している」
「安心したくて、知ってる言葉をくり返している」など、心の中ではちゃんと意味を持っているケースがたくさんあります。
オウム返しって何が目的?
― 日常でも使う“あの返し”との意外な関係
「オウム返し」という言葉は、私たちの普段の会話の中でもよく使われますよね。
たとえば、
「彼、なんでもオウム返しで返すよね(笑)」
なんて言われることもありますが、この場合はわざと真似してる感じがあります。
オウム返し=意識的な“くり返し”会話
一般的に「オウム返し」とは、
相手の言葉を意識的にくり返すことで、会話をつなげたり、共感を示したりするスキルとされています。
たとえば、
Aさん:「最近疲れてて…」→ Bさん:「そっか、疲れてるんだね」
という感じで、相手の言葉を繰り返すことで、「ちゃんと聞いてるよ」と伝える会話技術なんですね。
つまり、エコラリアが「無意識」だったり「発達上の特性」によるものに対して、オウム返しは「意図的」かつ「コミュニケーション目的」で行われることが多いんです。
2つの違いをカンタン解説!
― 迷ったらココを見る!チェックポイントと比較表
では、「エコラリア」と「オウム返し」って、何が違うのでしょうか?
下記に、よくある違いを表でまとめてみました。
比較ポイント | エコラリア | オウム返し |
---|---|---|
意図 | 無意識・反射的な場合が多い | 意識的に相手の言葉をくり返す |
目的 | 安心・刺激の処理・言語練習など | 共感・確認・会話の促進 |
見られる時期 | 幼児期・発達に特性がある人に多い | 全年齢で見られる |
会話の成立度 | 会話がかみ合わないことも多い | 自然な会話の一部になることが多い |
例 | 「バナナ食べる?」→「バナナ食べる?」(答えになってない) | 「楽しかった!」→「楽しかったんだね!」(共感) |
このように、くり返しの言葉でも、その背景や目的が全くちがうんです。
特に子どもに対しては、
「ちゃんと理解してないのかな?」とか「ふざけてるの?」と思う前に、
「この子は、どういう気持ちでこの言葉をくり返しているんだろう?」と想像してみることが大切。
言葉のくり返しには、その子なりの思いがこもっていることも多いんです。
このように、「エコラリア」と「オウム返し」は、見た目は似ていても中身は全然ちがうということが、なんとなくでもつかめたのではないでしょうか?
エコラリアには種類があるって知ってた?
「エコラリアって、ただの“オウム返し”じゃないの?」と思っている方、けっこう多いかもしれません。
でも実は、エコラリアには2つの種類があるんです。しかも、その違いを知ることで、子どもの様子がもっと理解しやすくなったり、声のかけ方のヒントが見えてきたりします。
ここでは、「即時エコラリア」と「遅延エコラリア」という2タイプに分けて、わかりやすく解説していきますね!
「即時」と「遅延」、どう違う?
― タイミングでわかるエコラリアのパターン
エコラリアには、「今すぐくり返すタイプ(即時)」と「時間がたってから出てくるタイプ(遅延)」があります。
一見同じように見えても、くり返すタイミングや背景がまったく違うんですよ。
即時エコラリア(Immediate Echolalia)
これは、相手の言葉をその場ですぐにくり返すタイプ。
たとえば…
大人:「お風呂入ろうか」→ 子:「お風呂入ろうか」
こんな感じで、“聞こえた言葉をそのままリピート”するのが即時エコラリアです。
この時、子ども自身が意味を完全に理解していない場合もあります。でも、「言葉をマネすることで、自分なりに理解しようとしている」「会話の流れに乗ろうとしている」といった意図があることも多いんです。
また、聞いた言葉をそのまま言っていることで、“言葉を口にする練習”や“自分が落ち着くための行動”になっている場合もあります。
遅延エコラリア(Delayed Echolalia)
こちらは、過去に聞いた言葉やフレーズを、時間が経ってから思い出してくり返すタイプです。
たとえば、
- アニメで聞いたセリフを突然言い出す
- 昨日ママが言ったフレーズを、今日また言う
- 「おやつ食べる?(過去の記憶)」と突然つぶやく
など、「なんで今それ言うの!?」とびっくりすることもあるかもしれません(笑)
でも実は、子どもにとってはそれが“記憶の整理”だったり、“不安な気持ちを落ち着けるルーティン”になっていたりすることがあるんです。
とくに、お気に入りの言葉やフレーズに執着する子にはよく見られる傾向です。
また、言葉を使って「場面」や「気持ち」を思い出しているような場合もあります。
なぜエコラリアが起きるの?
― 脳や発達の仕組みにヒントがある!
「なんでこんなにくり返すの?」「ふつうに会話できるようにしたいのに…」と悩んでしまう親御さんもいるかもしれません。
でも、エコラリアが起こるのにはちゃんと理由があります。
脳の“言語処理”の発達途中にあるから
私たちが日常的に会話をするとき、実はものすごい情報処理を一瞬でやっているんです。
聞く→理解する→考える→話す、というプロセスを同時にこなしてるわけですね。
でも、発達に特性がある子どもや、言語発達がゆっくりな子にとっては、この一連の流れがとても大変。
だからこそ、まずは“聞いたままをくり返す”という形で言語に慣れていこうとするんです。
これは、まるで楽器の練習で耳コピから始めるようなもの。正しい言葉の型を体に覚えさせている段階なんですね。
不安や興奮など“感情の整理”にも関係している
もうひとつの大きな理由は、「気持ちの安定」や「刺激の整理」のためです。
たとえば、緊張しているときや環境の変化があったときに、決まった言葉をくり返すことで安心しようとするケースもあります。
これは、エコラリアが“自分を落ち着かせるセルフケア”として機能しているとも言えるでしょう。
「その子なりのストレス対処法」として見てあげると、少し見方が変わってきますよね。
実は大切な発達のステップかも?
― “意味がない”と思われがちな行動の意外な役割
「エコラリアって、会話にならないし意味がないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
でも実は、それは大きな誤解。
エコラリアは、言葉の発達の“はじめの一歩”として、すごく大切な役割を果たしていることが多いんです。
エコラリアは“ことばの模倣”から始まる
言葉を話せるようになるまでの過程って、最初は「聞いた音をまねる」ことから始まりますよね。
赤ちゃんの「バブバブ」も、やがて「ママ」「パパ」となり、少しずつ意味ある言葉に変わっていく。
それと同じで、エコラリアも“意味ある言葉”を話すための準備段階として見守ってあげることが大切なんです。
「会話にならない=ダメ」じゃない!
たとえ今は“意味のないくり返し”に見えても、繰り返すうちに、意味や文脈をつかんでいく子もたくさんいます。
「おやつ食べる?」→「おやつ食べる?」→(数週間後)→「おやつ食べたい!」
というように、エコラリアが“自分の言葉”に変わっていく過程は、実際に多くの親御さんが体験しています。
だからこそ、「意味がないからやめさせなきゃ」ではなく、「成長の途中」ととらえて見守ることが、何よりも大事なんです。
どう見分ける?エコラリア vs オウム返し
「くり返してるだけに見えるけど、これってエコラリア?それともただのオウム返し?」
そんなふうに迷ったこと、ありませんか?
言葉をそのままくり返す行動は、一見するとどれも同じように見えるけれど、実は“目的”や“使われ方”がぜんぜん違うんです。
この章では、実際の会話例をもとに、「どっちか見分けるポイント」をやさしく解説していきます。
さらに、年齢による特徴の違いにも触れながら、「今この子に必要な関わりってなんだろう?」を一緒に考えていきましょう。
実例でスッキリ!会話パターンで見分けよう
― よくある親子のやりとりを解説付きで紹介!
まずは、実際によくある「親子のやりとり」の中で、エコラリアとオウム返しがどう違うのかを見ていきましょう。
例1:「おやつ食べる?」→「おやつ食べる?」
この返し、よくありますよね。
でも、返してきた子の“意図”や“タイミング”に注目すると、違いが見えてきます。
【エコラリアの場合】
- 子どもは言葉の意味をまだしっかり理解していない
- 無意識に音としてくり返している
- そのあとに表情がなく、会話が続かないことも多い
👉この場合は、「音をくり返しているだけで、答えになっていない」というのがポイント。
もしかすると、“おやつ”の意味がまだあいまいだったり、質問にどう返せばいいかわからなかったりしているかもしれません。
【オウム返しの場合】
- 子どもが話の内容をちゃんと理解している
- わざと確認の意味でくり返す
- そのあとに「うん!」「クッキーがいい!」などと会話が続く
👉この場合は、「聞き返し」や「同意」を表現してる可能性があります。
つまり、「うん、それ食べたい!」って気持ちを遠回しに伝えてる感じですね。
例2:「今日はどこ行くの?」→「今日はどこ行くの?」
これもまた見分けにくい例ですが、違いはあります。
- エコラリア → ただリピートして終わる。表情や声に抑揚がない。
- オウム返し → 「うーん、どこ行くんだろうね?」と続けたり、遊びのやりとりに発展する。
“その先のやりとりが続くかどうか”は、判断の大きな手がかりになります。
年齢によっても変わる?
― 乳幼児と学童での違いを知って安心
子どもの“くり返し言葉”って、成長の過程によって意味や現れ方が変わってくるんです。
だから、「エコラリアかな?オウム返しかな?」と悩んだときは、子どもの年齢や発達段階もセットで考えることがとても大切です。
乳幼児期(0〜3歳ごろ)のエコラリアは“言葉の練習”
この時期は、ことばの理解や表現がまだ未熟な状態です。
そのため、音としての言葉をまねること=自然な言語発達の一環としてよく見られます。
たとえば、
- 「おはよう」→「おはよう」
- 「ねんねしようね」→「ねんねしようね」
このように、まだ自分の気持ちや意思を表すのが難しい時期には、エコラリアが“ことばを覚えるプロセスの一部”になっていることが多いです。
👉この場合、「ちゃんとマネできてる!言葉の入力は進んでるんだな」とポジティブに見てOK。
むしろ、まねる力が育っている証拠でもあります。
学童期(小学生以降)でのくり返しは“意図”を見極めて
学童期以降でも、エコラリア的な発言が見られる場合があります。
特に発達に特性がある子どもは、場面に合わないタイミングで過去のフレーズを突然言い出すことがあります。
たとえば、
- 休み時間中に「給食は残さず食べましょう!」(先生のセリフ)をつぶやく
- 突然「お天気お姉さんです!」(テレビのセリフ)を叫ぶ
これは、遅延エコラリアに近い行動で、その子にとっては“意味のある記憶”を再生している行為だったりします。
一方で、学童期以降でオウム返しのような会話が頻繁に見られる場合は、「コミュニケーション方法」として定着している可能性も。
👉年齢が上がるにつれて、「意味のないくり返し」から「意味を持つ表現」へと発展する子も多いです。
まとめると…
- 幼児期は、エコラリア=ことばの練習段階
- 学童期は、「その言葉にどんな意図があるか?」を丁寧に読み取るのがポイント
いずれにしても、“ただのマネ”に見えても、子どもなりの意味や目的があるかもしれないという視点を持つことがとても大切です。
困ったときこそ見直したい!接し方のコツ
子どもが何度も同じ言葉をくり返していたり、質問しても“オウム返し”みたいな返答ばかり返ってくると、
「これで大丈夫なのかな?」「何度言っても伝わらない…」と、不安になったり、ついイライラしてしまうこともありますよね。
でも、ちょっと待ってください。
実は、私たち大人の関わり方次第で、子どもとのやりとりがグンとラクになることもあるんです。
この章では、「ついやってしまいがちなNG対応」から、「今日から実践できる支援アイデア」まで、エコラリアやオウム返しをポジティブに活かすためのコツをご紹介します!
こんな対応はNG!逆効果になる関わり方
― ついやりがちな声かけ、実は子どもを追い詰めてるかも…
まずは、よかれと思ってやってしまいがちだけど、実は逆効果になってしまう関わり方をチェックしてみましょう。
❌「ちゃんと答えて!」と繰り返し叱る
「おやつ食べる?」と聞いて「おやつ食べる?」と返されると、「またオウム返し?」「ちゃんと考えて答えてよ!」と言いたくなること、ありますよね。
でもこれ、子どもにとっては「どう返していいかわからない」からこその行動なんです。
👉 “正解を言わなきゃ怒られる”というプレッシャーになってしまうと、余計に言葉が出にくくなることも…。
❌「それ意味ないからやめようね」と否定する
エコラリアのような“くり返し言葉”が続くと、「意味のないことを何度も言わないの!」と言いたくなることもあるかもしれません。
でも、子どもにとってはその言葉が安心のカギだったり、自分を落ち着かせるためのツールだったりすることも。
👉 否定されることで、“自分の気持ちまで否定された”ように感じてしまうケースもあるんです。
❌ 無視してスルーする
「またそれか〜」とスルーしたくなることもあるかもしれませんが、“無視”される経験は想像以上に子どもの心にダメージを与えます。
特に、エコラリアの背景に「伝えたいけど伝えられない」という気持ちがあるとき、無視されると「やっぱり伝わらない」「どうせ言ってもムダだ」とあきらめてしまうリスクも。
「うまく活かす」考え方で関係が変わる!
― エコラリアを“会話の入り口”に変えるテクニック
では、エコラリアやオウム返しにどう対応すればいいのでしょうか?
大事なのは、「やめさせる」ではなく「活かす」という視点です。
くり返し言葉は、コミュニケーションの“扉をノックしてる”状態だと考えてみてください。
モデルとなる言い方をそっと添える
たとえば、「おやつ食べる?」→「おやつ食べる?」と返されたときに、
「そうだね、“うん、食べたい!”って言えばいいんだよ」と優しく伝えてあげることで、
「なるほど、そう言えばいいんだ」とことばの使い方の“お手本”を学べるきっかけになります。
👉 これを「モデリング」といいます。支援現場でもよく使われているテクニックです!
子どもの“ペース”を大事にする
大人からすると「返事が遅い」「わかってるの?」と思うかもしれませんが、子どもにとっては考える時間が必要なこともあります。
すぐに返事がない=理解してない、とは限りません。
👉 「ゆっくりでいいよ」という雰囲気をつくるだけで、子どもが安心してことばを出せるようになることもありますよ。
くり返しの言葉を“会話の入り口”に変えてみる
子どもがエコラリアで「バナナ食べる?」と返してきたとき、大人が「バナナ食べたいの?それともリンゴにする?」と選択肢を広げてあげることで、“会話のキャッチボール”につながっていくことがあります。
“正解を引き出す”よりも、“やりとりを楽しむ”ことにシフトするのがポイントです。
家庭でできるカンタン支援アイデア
― 今日から試せる!視覚・音・ことばの工夫
「療育に通っていないけど、家庭でできることはある?」
もちろんあります!ここでは、今日からできる身近な工夫をいくつか紹介します。
視覚支援:絵カードや写真を活用
言葉だけだと理解が難しい子も、「見える」情報があると理解しやすくなることが多いです。
たとえば、
- 食べ物の写真カードを使って「どっち食べる?」と見せる
- 「おふろ」「ねんね」など、日常の行動をイラストで提示
👉 絵や写真で“意味が目に見える”ようになると、言葉のくり返しが減って、意思表示につながりやすくなります。
音の支援:決まったフレーズや歌を活用
「ねんねの歌」「お片づけの音楽」など、ルーティンに音を取り入れるだけでも、言葉の切り替えがしやすくなるんです。
👉 くり返し使うフレーズや歌は、“意味のあるエコラリア”に育ちやすいので、積極的に使ってみてください。
ことばの工夫:選びやすい質問に変えてみる
「何食べたい?」ではなく「バナナとりんご、どっちにする?」というように、選択肢をしぼった質問にすることで、子どもが答えやすくなります。
👉 「考えるハードル」を下げることで、くり返しが減って“自分の言葉”が出やすくなることも!
子どもがことばをくり返すのは、“困った行動”ではなく、“伝えようとしてるサイン”かもしれません。
だからこそ、大人が「伝えられる」「わかってもらえた」と思えるような関わり方を意識していくことが、子どもの安心や自信につながります。
プロに相談したほうがいい?療育や支援の活用法
「エコラリアが続いているけど…これって自然なこと?」「言葉の発達、ちょっとゆっくりかも?」
そう思ったとき、まず悩むのが、「専門家に相談したほうがいいのかな?」というタイミングの判断ですよね。
ネットで調べるといろんな情報があって、かえって不安になってしまう…という声もよく聞きます。
でも安心してください。相談先は一つじゃありませんし、今は気軽に支援を受けられる選択肢が増えているんです。
この章では、頼れる専門家や療育の現場での工夫、そして「相談すべきタイミング」の見極めポイントまで、客観的な情報と一緒にわかりやすく解説していきます!
どんな専門家に相談すればいいの?
― 頼れる支援職とその役割を知ろう
まずは、「相談したい!」と思ったときに頼れる専門家や機関をいくつか紹介します。
言語聴覚士(ST)
言葉の発達・理解・発音など“コミュニケーション全般”を専門とする国家資格のプロです。
エコラリアに対しても、「どうすれば“伝えられる言葉”につながるか?」を一緒に考えてくれます。
👉 くり返し言葉が多い子に対して、「ことばの使い方」「意味の理解の仕方」などを遊びを通して支援してくれるので、とても頼りになります。
保育士・幼稚園教諭・こども園の先生
日々子どもたちと接している“一番身近な専門家”。
家庭とはまた違う姿を見てくれているので、「家では見られない様子」についてアドバイスをもらえることもあります。
👉 「園でも同じような言葉のくり返しがありますか?」と気軽に聞いてみるだけでもOK!
発達支援センター・児童発達支援事業所
各地域にある発達に関する相談窓口や支援施設です。
療育(発達支援プログラム)を実施している施設では、言葉や行動の特性に合わせた支援を受けることができます。
👉 初回は無料相談からスタートできる施設も多く、「気になるけど、診断があるわけじゃないし…」という段階でも気軽に相談OK!
療育現場のリアルな工夫
― 実際に行われている支援方法とその効果
「療育ってよく聞くけど、何をするところなの?」と疑問に感じている方も多いかもしれません。
実は、療育ってとても幅広くて、遊びの中でことばややりとりの力を育てる“トレーニング”の場でもあるんです。
エコラリアを活かす“ことばの橋渡し”支援
たとえば、子どもが「バナナ食べる?」とオウム返ししたときに、支援者が「うん、バナナ食べたいんだね」と“代弁してくれる関わり”をしてくれます。
これにより、「伝わった!」という経験が増えて、少しずつ“自分の言葉”へと変化していくのです。
絵カード・写真カード・視覚スケジュールの活用
言葉だけで理解するのが難しい子に対しては、視覚的にわかりやすく伝えるツールをたくさん使います。
「やることが見える」「選べる」「安心できる」ことで、エコラリアが減り、自発的な言葉が増えたという事例も多数あります。
一人ひとりに合わせた個別プログラム
療育では「○歳ならこれをやる」という一律対応ではなく、“その子に今必要なこと”を見極めて支援内容を決めていくのが基本。
だから、エコラリアが出ている子には、「なぜその言葉をくり返しているのか?」をていねいに観察し、それに合ったアプローチを試していくんです。
👉 こうした積み重ねにより、数ヶ月〜1年ほどで“くり返し”から“自分の言葉”への変化が見られるケースもあります。
迷ったときの相談タイミング
― 「様子を見る」と「動くべき」の境界線とは?
「まだ小さいから、そのうち話し出すかな」
「周りの子と比べるのはよくないし…」
そう思って“様子見”する親御さんも多いのですが、“ちょっと気になる”と思ったときこそ、相談のタイミングとしてはベストなんです。
タイミングの目安は?
- 2歳半〜3歳を過ぎても意味のある言葉がほとんど出ていない
- 会話にならず、くり返し言葉がずっと続いている
- 保育園や幼稚園でも「少し様子を見ましょう」と言われた
- 子ども自身が、伝わらないことでストレスを感じている様子がある
👉 こういった状況が当てはまる場合は、「とりあえず相談してみる」だけでも大きな一歩です!
相談=すぐ診断や療育ではない
「相談したら“発達障害”って決められちゃうのでは?」と不安に感じる方もいますが、相談はあくまで“今の発達の様子を見てもらう”ための機会。
支援が必要かどうかを専門家と一緒に見ていく、というスタンスでOKです。
👉 早めに動いておくことで、適切なサポートにつながりやすくなり、結果的に親子のストレスもぐんと減ることが多いんです。
「困った」と感じたときは、ひとりで抱えこまず、早めに誰かに相談してみることがとても大切です。
エコラリアやオウム返しが気になっているなら、“ことばの芽を育てる”チャンスだと捉えて、専門的な支援をうまく活用していきましょう!
親御さんの疑問をズバリ解決!Q&A集
「これって普通なの?」「うちの子だけ…?」
エコラリアやオウム返しが見られると、どうしても不安になったり、周りの子と比べて焦ってしまうことってありますよね。
ここでは、保護者の方からよく寄せられるリアルな疑問にQ&A形式でお答えしていきます!
ちょっとした不安が軽くなったり、今すぐできる対応のヒントが見つかるかもしれませんよ。
Q1. オウム返しばかりで会話にならない…どうすれば?
― すぐできる関わりのヒントと見守りポイント
「おやつ食べる?」「おやつ食べる?」
「どこ行く?」「どこ行く?」
こんな風に、問いかけた言葉がそのまま返ってくる…という状況が続くと、「会話にならない!」「どう対応すればいいの?」と戸惑う親御さんは多いはずです。
でもまず知っておいてほしいのは、“くり返すこと=会話ができない”とは限らないということ。
すぐできる!関わり方の工夫
たとえば、お子さんが「どこ行く?」と返してきたとき、
- 「そうだね、公園に行くんだよ!」
- 「“公園に行く”って言ってみて?」
など、言葉を補ってあげたり、ゆっくりモデリングしてみることで、少しずつ“ことばのやりとり”が形になっていくことがあります。
👉ポイントは、正しい答えを求めるのではなく、やりとりを楽しむこと!
焦らず見守る視点も大切
特に発達の初期段階では、言葉をまねること自体が“すごく大切な学び”のひとつ。
今はまだ“インプットの時期”なのかもしれません。
👉 「またオウム返しかぁ…」ではなく、「今はくり返しで学んでるんだな」と思えると、気持ちがぐっとラクになります。
Q2. エコラリアがあると幼稚園や学校で困る?
― 就園・就学時の不安に答えます
「エコラリアがあると、集団生活で困ることってあるのかな?」
「幼稚園で浮いたりしない?」「小学校で授業についていける?」など、就園・就学に関する不安もよく聞かれます。
まず前提として、エコラリアがある=入園・入学できない、ということは一切ありません。
大事なのは“その子に合った配慮”があるかどうか
エコラリアがある子の場合、
- 質問に答えられないことがある
- 一斉指示が通りにくい
- 周囲の子とのやりとりがちょっとズレる
といった場面はあるかもしれませんが、それは配慮や工夫でサポートできる部分なんです。
たとえば、
👉 担任の先生が“個別に確認する時間”を設けてくれたり、
👉 言葉の指示に合わせて“絵カードやジェスチャー”を使ってくれるなど、現場ではさまざまな配慮が行われています。
事前の情報共有で安心につなげよう
園や学校と連携して、「うちの子は、こういう言い方で伝わりやすいです」「くり返しがあるけど、理解はできています」など、具体的に伝えることで、先生も安心して対応してくれます。
👉 入園・入学前の面談や連絡帳などを活用して、“わが子の得意・苦手”を共有しておくのがポイントです。
Q3. 兄弟とも会話が噛み合わないけど大丈夫?
― 家庭内での声かけを見直すポイント
「上の子と下の子が全然会話にならない…」
「兄弟なのに一緒に遊べない…」と感じると、家庭内でもどう関わればいいのか悩んでしまいますよね。
特にエコラリアのあるお子さんは、兄弟との自然な“やりとり”がまだ難しいことも多いです。
でも安心してください。これは“関係性が悪い”わけでも、“兄弟仲が悪い”わけでもありません。
ことばの発達段階が違うだけ
たとえば、年上の子が「ねえ、○○で遊ぼうよ!」と言っても、
下の子はそれをただくり返すだけで反応が返ってこない…。
そんなとき、上の子は「無視された」と感じてしまうことも。
でも、これは“ことばの理解・表現の発達段階が違う”だけなんです。
👉 お互いに歩み寄るには、親が“通訳役”になってサポートしてあげることが大切。
「今、○○ちゃんは“一緒にやってもいい?”って聞いてるんだよ」
「こう言えば○○くんもわかりやすいかもね」
など、間に入ってやりとりをつなげてあげることで、兄弟同士の距離も縮まりやすくなります。
兄弟の不安にもフォローを
もうひとつ大切なのは、兄弟にも「なんで同じ言葉をくり返すの?」という疑問に対して説明してあげること。
たとえば、
- 「○○くんは、今ことばの練習中なんだよ」
- 「くり返すことで考えてるときがあるんだって」
といったやさしい言葉で伝えるだけでも、兄弟の理解や思いやりがぐんと深まります。
まとめると…
- オウム返しに困っても、焦らず“ことばの育ち”を信じて見守ることが大切
- エコラリアがあっても、園・学校では“支援や配慮で十分カバーできる”
- 兄弟との関係も、親がつなぎ役になることで少しずつ築かれていく
“ただのオウム返し”じゃない、子どものSOSかもしれない
ここまで、「エコラリア」と「オウム返し」の違いや、接し方のポイント、療育や支援の活用法などをじっくり見てきました。
きっと、「ただくり返しているように見える言葉にも、いろんな意味や背景があるんだな…」と感じてもらえたのではないでしょうか。
私たち大人が“ただのオウム返し”と思っていた行動も、子どもにとっては「伝えたい」「安心したい」「気づいてほしい」というサインだったりします。
最後にもう一度、その行動の奥にある子どもの気持ちや、大人の関わり方で変わる反応について、いっしょに振り返ってみましょう。
行動の奥にある「伝えたい気持ち」に気づこう
― 言葉のくり返しには、ちゃんと理由がある
「おやつ食べる?」→「おやつ食べる?」
「どこ行く?」→「どこ行く?」
こんなやりとりに直面すると、「ちゃんと聞いてる?」「また同じこと言ってる…」と不安になってしまいますよね。
でも、ここで大事にしてほしいのが、“言葉をくり返す=気持ちがこもっていない”とは限らないということ。
むしろ、子どもにとっては、
- どう言えばいいかわからないから、相手の言葉をそのまま使っている
- その言葉をくり返すことで、状況を理解しようとしている
- 緊張や不安を落ち着かせるために、安心できるフレーズをくり返している
というケースもとても多いんです。
つまり、くり返しの言葉の裏には、“伝えたい気持ち”がちゃんと存在している。
それに気づけると、親としての関わり方も少しずつ変わってきます。
👉 「なんでそう言うの?」ではなく、「何を伝えたかったのかな?」と考える視点がとても大切なんです。
親の接し方が変わると、子どもの反応も変わる!
― 「ことばにならない声」に寄り添うことの大切さ
どんなにくり返しが多くても、どんなに会話がちぐはぐでも、子どもは「伝えたい」という気持ちを持っています。
その思いに気づいてあげられたとき、そして「伝えていいんだよ」「ちゃんと受け止めてるよ」と伝えられたとき、子どもの反応も少しずつ変わっていくんです。
たとえば…
- くり返しの言葉に「それって○○ってことかな?」と返してみる
- 答えられなかったときも「ゆっくりでいいよ」と安心させる
- 同じセリフでも、「また言ってる」ではなく、「好きな言葉なんだね」と共感する
そんな小さな積み重ねが、子どもにとっては“自分を受け入れてもらえた”という大きな安心になります。
👉 そしてその安心が、「自分のことば」で話してみようかな、という一歩につながっていくのです。
エコラリアも、オウム返しも、「伝える」ための“はじまりのサイン”かもしれません。
完璧な返答じゃなくてもOK。
会話がうまく続かなくても大丈夫。
親が「その気持ち、ちゃんと受け取ったよ」と伝えるだけで、子どもはぐっと安心して、自分らしい表現を少しずつ育てていけます。
これからも、くり返しの言葉に出会ったときは、“困ったクセ”ではなく“心のメッセージ”として受け取る視点を持ってみてくださいね。
以上【エコラリアとオウム返しの違いとは?言葉の裏にある本当の気持ちをやさしく解説】でした。
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