自閉症の子の飛び跳ね行動をやめさせる5つのやさしい方法

目次

はじめに:ママの気持ちに寄り添って

気づくと、お子さんがぴょんぴょんと飛び跳ねている――。
おうちの中で元気よく跳んでいる分にはまだ微笑ましいですが、スーパーや病院、電車の中など外出先でも続くと、つい周りの視線が気になってしまうこと、ありませんか?

「これって普通なのかな?」「このままで大丈夫?」と心配になる瞬間もあると思います。
特に人が多い場所だと、他の人にぶつかったり、物を倒してしまう可能性もあるので、安全面の不安も出てきますよね。

でも、ここで知っておいてほしいのは――
飛び跳ねる行動そのものは「悪いこと」ではないということです。

自閉症の子どもにとって、飛び跳ねることはただの遊びではなく、「体や心を落ち着けるための大切な手段」なんです。
例えば、大きな音や人混みで緊張したときに、ジャンプすることでバランス感覚や筋肉の感覚が刺激されて、安心感が得られることがあります。
また、嬉しい・楽しいといった感情を体で表す方法
としてジャンプが選ばれることも少なくありません。

ただし、やっぱり日常生活や外出先で頻繁に起こると、

  • 周りからの視線や誤解
  • 他の子とのトラブル
  • ケガや事故のリスク

こうしたことが気になってしまうのも当然です。

そこでこの記事では、「叱らずに飛び跳ね行動をやめさせる5つのやさしい方法」をご紹介します。
ポイントは、ただ止めさせるのではなく、子どもの安心感を守りながら行動を置き換えていくこと。

私自身、福祉の現場で長年たくさんの子どもたちと関わる中で、叱って止めるよりも「どう置き換えるか」のほうがずっと効果的だと感じてきました。
この記事では、専門的な知識と、実際にママたちが試して「効果があった!」という事例をあわせてお伝えします。

今日から少しずつ、おうちや外出先で「飛び跳ねない時間」を増やすヒントとして、ぜひ取り入れてみてくださいね。

なぜ自閉症の子は飛び跳ねるのか?行動の背景を理解しよう

「飛び跳ねる」という行動は、決して意味のないクセや遊びではありません。
むしろ、多くの場合は脳や体が求める刺激を得るため、または感情を表現するための自然な動きです。

この背景を理解すると、ただ「やめさせる」よりも、安心できる形に置き換える方法が見つかります。
そして、ママの「なぜそうなるの?」というモヤモヤも少しずつ晴れていくはずです。

感覚刺激を求めるケース

自閉症の子どもは、前庭感覚(バランス感覚)固有受容感覚(筋肉や関節の位置感覚)を強く求めることがあります。
このふたつは、日常生活で姿勢を保ったり、体の動きをスムーズにしたりするために欠かせない感覚です。

ジャンプの上下運動は、この前庭感覚と固有受容感覚を同時に刺激できる動き。
だからこそ、体や脳が「気持ちいい!」「もっとやりたい!」と感じやすいのです。

特に、

  • 人混みで落ち着かないとき
  • 騒がしい場所で緊張しているとき
  • 待ち時間が長くて体がムズムズしているとき

こういう場面でジャンプが増えることがあります。
つまり、ジャンプは子どもなりの“落ち着くためのセルフケア”になっているのです。

気持ちを表す手段

嬉しいとき、楽しいとき、ワクワクするとき――。
私たちは笑顔になったり声をあげたりしますが、自閉症の子は体全体でその感情を表現することがあります。

ジャンプは、その中でもエネルギーを一気に発散できる動き。
嬉しいときはもちろん、不安や緊張を和らげるためにジャンプする子もいます。

例えば、

  • 大好きなおもちゃを見つけた瞬間に飛び跳ねる
  • 頑張って作った作品を見せる前にぴょんぴょんする
  • 苦手な音が聞こえてきたときにジャンプしながら距離をとる

このように、ジャンプは感情のバロメーターでもあります。
ママが「なぜ今跳んでるの?」と感じたときは、周囲の状況や子どもの表情も観察すると、気持ちのヒントが見えてきます。

習慣化しているケース

最初は感覚刺激や感情表現のために始まったジャンプも、繰り返すうちに無意識の習慣になってしまうことがあります。

習慣化すると、「やめて」と声をかけてもすぐには止まりません。
大人でも、爪を噛むクセや貧乏ゆすりを急に止めるのが難しいのと同じです。

この場合、

  • 「やめさせる」より「他の動きに置き換える」
  • ジャンプ以外でも満足できる刺激を用意する

といった工夫が必要になります。
つまり、「ダメ!」ではなく「こっちならOK!」という提案が効果的なんです。

飛び跳ね行動をやめさせるための考え方

「飛び跳ねをやめさせたい」と思ったとき、つい反射的に「やめなさい!」と言ってしまうこと、ありますよね。
でも、これがかえって逆効果になってしまうこともあります。
なぜなら、飛び跳ねには本人にとって大事な理由があるからです。

ここからは、ママが心に留めておくと対応がスムーズになる3つのポイントをご紹介します。

「やめさせる」より「置き換える」

まず大切なのは、無理に止めさせようとしないことです。
子どもにとってジャンプは、感覚を満たしたり気持ちを落ち着けたりするための行動。
それを突然止められると、ストレスや不安が一気に高まり、逆に行動が増えてしまうことがあります。

そこで有効なのが、「やめさせる」より「置き換える」という考え方です。
ジャンプと似た感覚が得られる動きや遊びを提案すれば、子どもは納得しやすくなります。

例えば…

  • ジャンプしたくなったら、トランポリンへ移動する
  • その場ジャンプを、バランスボールに座ってのバウンドに変える
  • 両手でスクイーズボールをぎゅっと握る

こうした「代替え案」を事前に準備しておくと、切り替えがスムーズになりやすいです。

叱らない

「もうやめなさい!」と叱ると、その場では止まるかもしれませんが、「否定された」という感情だけが強く残ることがあります。
この感情が積み重なると、情緒が不安定になったり、親子の信頼関係が少しずつ揺らいだりすることもあります。

代わりに意識したいのは、肯定的な声かけです。
例えば…

  • 「今止まってくれて助かったよ」
  • 「ボールに切り替えてくれてありがとう」

こういうふうに「できたことを褒める」言葉にすると、子どもは「またやろう」と前向きな気持ちになります。
これは行動療法の観点から見ても、望ましい行動を増やすために有効な方法です。

前触れを観察する

飛び跳ねが始まるタイミングには、必ずといっていいほど“前触れ”があります
例えば…

  • 足がそわそわ動き始める
  • 顔がニコニコして興奮している
  • 周りの音や人を気にしている様子

こうしたサインに気づけると、「そろそろ跳びそうだな」という予測が立ちます。
そのタイミングで、

  • 「ボールで遊んでみようか」
  • 「この場所でジャンプしてみよう」

事前に別の行動へ誘導することで、無理なく切り替えられます。

これは子どもの自己コントロールを育てる第一歩にもなります。
「自分でも行動を選べる」という経験は、自信にもつながるんです。

飛び跳ね行動をやめさせる5つのやさしい方法

ここからは、実際におうちや外出先で使える5つのやさしい工夫をご紹介します。
どれも「やめさせる」のではなく、子どもの安心感を守りながら置き換えることを意識しています。

方法① 別の動きに置き換える遊びを取り入れる

飛び跳ねたい気持ちは残したまま、安全でコントロールできる環境に切り替えてあげましょう。

例えば…

  • 室内トランポリン(時間・回数を決めて使う)
  • バランスボードや平均台ごっこ
  • バランスボールに座って上下にバウンド

こういった遊びは、ジャンプと同じように前庭感覚や筋肉への刺激が得られるため、満足感が高くなります。
時間と場所を決めることで、外出先での突然のジャンプも減りやすくなります。

方法② 感覚刺激グッズを活用する

ジャンプがやめられない理由のひとつは、体に刺激を与えたいからです。
そこで役立つのが「感覚刺激グッズ」。

例としては…

  • スクイーズボール(ぎゅっと握ることで筋肉に刺激)
  • センサリーブランケット(重みで安心感を与える)
  • クッションプレス(両手で押して体に圧をかける)

これらは体に心地よい圧を加える刺激を与えられるため、ジャンプの代わりになりやすいです。
特に外出時には、持ち運びしやすい小さなグッズが便利です。

方法③ 安心できる環境づくり

子どもが飛び跳ねる背景には、環境から受ける刺激の多さも関係していることがあります。

例えば…

  • 照明がまぶしすぎる
  • 音が大きくて落ち着かない
  • 人の動きが多くて気が散る

こういった外部刺激を減らすことで、「ジャンプして落ち着く必要」が減ることがあります。

おうちでは…

  • 照明を少し落とす
  • 静かなコーナーをつくる
  • 好きなぬいぐるみやタオルを置く

外出先でも、できるだけ落ち着ける場所を事前に探しておくと安心です。

方法④ 行動の前触れを察知して声かけ

ジャンプが始まる前には、必ず何かしらのサインがあります。

  • 足がそわそわ動き出す
  • 顔がにこにこして興奮している
  • 体を揺らしている

この瞬間に声をかけられると、ジャンプ以外の行動に切り替えやすくなります

例えば…

  • 「ジャンプしたくなったらボール握ろうね」
  • 「○○まで歩いたらトランポリンしよう」

予告+代替案をセットにすると、子どもも納得して切り替えやすいです。

方法⑤ 肯定的な声かけと褒め方

行動改善には、叱るより褒める方がずっと効果的です。
否定の言葉よりも、できたことを評価する言葉を増やすようにしましょう。

例えば…

  • 「止まってくれてありがとう」
  • 「○○できてすごいね!」

こうした肯定的な声かけは、行動療法の観点からも効果が証明されています。
子どもは「またやろう」と思いやすくなり、望ましい行動が少しずつ増えていきます。

実際の家庭でのサポート事例

ここでは、実際にママたちが取り入れて「飛び跳ねが減った!」と感じた3つの工夫をご紹介します。
どれも特別な道具や環境がなくても始めやすい方法なので、まずは真似してみることから始めてみてください。

事例① 室内トランポリンで外出先ジャンプが減少

あるご家庭では、お子さんが外出先で急に飛び跳ねてしまうことが多く、周囲の人とぶつかるのが心配でした。
そこで導入したのが室内用トランポリン

ポイントは、「いつでも好きなだけ」ではなく「1日5分×3回まで」というルールを設定したことです。
このルールを守ることで、

  • 家の中でしっかりジャンプの欲求を満たす
  • 外出時はジャンプを我慢しやすくなる

という効果が出てきました。結果、外出時のジャンプ頻度が半分に減ったそうです。

客観的に見ると、これは「事前に感覚欲求を満たしておく」ことで行動を予防する成功例といえます。

事例② スクイーズボールを常時携帯

別のご家庭では、ジャンプが始まる直前に見られる「うずうずした動き」がありました。
そこで、ママがスクイーズボールをカバンに入れて常に持ち歩くことに。

ジャンプしそうなタイミングで「これ握ってみよう」と渡すと、
その場で落ち着くことが増えたそうです。

専門的に見れば、これは「置き換え行動」の成功例です。
ジャンプによる筋肉刺激を、手で握る感覚刺激に変えることで、同じような安心感が得られたと考えられます。

事例③ 朝のルーティンに感覚あそびを組み込み

朝の支度中に飛び跳ねが増えるというご家庭では、登園前にクッションプレスを取り入れました。
これは、厚みのあるクッションを両腕でぎゅっと押し合う遊びです。

この動きで筋肉と関節に心地よい圧がかかり、体が落ち着いた状態で園に向かえるようになったとのこと。
結果的に、登園中や教室での飛び跳ねも減ったそうです。

これは「朝のうちに感覚刺激を与えておく」ことで、1日の安定したスタートを切ることができた事例です。

こうして見てみると、「やめさせる」よりも「満たしてから減らす」という考え方が、飛び跳ね行動の改善にとても有効だとわかります。
どの事例も、子どもが安心して切り替えられる環境や道具を用意することがポイントになっています。

まとめとママへのメッセージ

飛び跳ねる行動は、ただのクセや気まぐれではなく、お子さんの体や心が必要としている大切なサインです。
多くの場合、そこには「安心したい」「感覚を満たしたい」という理由があります。
だからこそ、無理に止めるのではなく、子どもが安心してできる形に置き換えてあげることが大切です。

置き換える工夫を続けていくと、次第に飛び跳ねの回数やタイミングは減っていきます。
これは専門的にも、感覚統合や行動療法のアプローチとして有効とされています。

そして、何より大切なのは焦らないこと
行動の変化はすぐに出る子もいれば、時間をかけて少しずつ変わっていく子もいます。
一歩進んで半歩下がるような日もありますが、それも自然な成長のプロセスです。

ママが「なんでやめられないの?」と感じたとき、
「これはこの子なりのサインなんだ」と受け止めるだけで、心が少し軽くなることもあります。

子どもの安心と、ママの笑顔はつながっています。
お子さんが安心して過ごせる工夫を続けながら、ママ自身の休憩や気分転換も忘れないでくださいね。

最後にもう一度――。
焦らず、少しずつ。
「やめさせる」ではなく「安心して置き換える」を意識して、親子で笑顔になれる時間を増やしていきましょう。

以上【自閉症の子の飛び跳ね行動をやめさせる5つのやさしい方法】でした

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この記事を書いた人

約30年の間に培った障害福祉分野での知識や経験を、このブログで余すことなくお伝えしていきます。
所持資格:社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員等

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