ADHDの子がぶつかる“9歳の壁”とは?小学生の成長を支えるママの具体的な支援方法まとめ

目次

ADHDの子にとって「9歳の壁」とは?発達段階の変化を徹底解説

小学校3〜4年生ごろになると、子どもの成長には大きな変化が訪れます。
それが、いわゆる「9歳の壁」と呼ばれる時期です。

この時期の子どもは、今までよりもグッと成長しようとする一方で、心や行動のバランスが崩れやすくなる時期でもあります。特にADHD(注意欠如・多動症)の子どもにとっては、この“壁”が思っている以上に高く感じられることがあります。

【基礎理解】“9歳の壁”とは?小学生の発達で起こる3つの変化

9歳前後になると、子どもたちの脳の発達や考え方に大きな変化が起きます。
これまで「目の前のことを楽しくやる!」という感覚だったのが、だんだんと“考えて行動する力”が育ってくるんですね。

この時期には、主に次の3つの発達の変化が見られます。

① 抽象的な思考ができるようになる

今までは「見えるもの・わかりやすいこと」だけ理解していたのが、9歳ごろから「考え方」「ルール」「感情」など目に見えないことを理解しようとする力が育っていきます。
たとえば、「どうして勉強しなきゃいけないの?」と考え始めたり、「友達が怒っているのはなぜ?」と気づけるようになるんです。

でも、ADHDの子にとってこの“抽象的な理解”はハードルが高く、言葉で説明されてもピンとこないことが多いのです。

② 自己理解が深まり「自分」を意識し始める

「自分はほかの子とちょっと違うのかも」と気づくのも、この時期です。
友達との比較が増え、できる・できないがハッキリ見えてくることで、自己肯定感が下がりやすくなる傾向があります。

ママとしては「そんなことないよ、大丈夫だよ」と励ましくなると思いますが、本人は「どうして自分だけできないんだろう」と感じてしまうことも。
この“自己意識の芽生え”こそ、9歳の壁を象徴する大きな変化のひとつです。

③ 社会性が育ちはじめ、周りとの関係が複雑になる

グループ活動や友達同士のやり取りが増え、「空気を読む」「相手に合わせる」力が求められるようになります。
でも、ADHDの子はこの「状況の読み取り」が苦手なことが多く、

  • 話を最後まで聞けない
  • 順番を守れない
  • ルールを忘れてしまう
    といったトラブルが起きやすくなります。

その結果、「わざとやってるの?」と誤解されたり、仲間外れにされてしまうことも。
こうした人間関係の難しさが、“9歳の壁”をより高く感じさせる要因になっているんです。

「できない」が目立ちやすくなる心理的な理由

9歳前後の子どもは、発達の差がどんどん広がる時期です。
特にADHDの子は、得意なことと苦手なことの差が目立ちやすくなり、
「努力しても報われない」「怒られてばかり」という経験を重ねがち。

つまり、「成長の壁=自信の壁」でもあるのです。
だからこそ、ママの言葉かけや環境の工夫がとても大切になります。

【専門家が指摘】ADHDの子が9歳の壁で苦戦しやすい原因

ADHDの子どもたちは、生まれつき「注意・衝動・感情のコントロール」が苦手な傾向があります。
9歳を過ぎると周囲の子が自分を落ち着かせたり、課題に集中できるようになっていく中で、ADHDの子はまだそのコントロール力が発達の途中。
結果的に、「なんでできないの?」と叱られることが増えてしまうのです。

注意・衝動・感情コントロールの課題が強まる時期

9歳前後は「自己コントロール力」がぐっと試される時期です。
しかしADHDの子は、

  • 集中してもすぐ気が散る
  • 思いついたら行動してしまう
  • 感情の切り替えがうまくできない
    といった特性を持っています。

これらは“性格”ではなく脳の発達の特性によるものであり、叱って直るものではありません。
むしろ、「叱られる経験の積み重ね」が自己否定につながりやすくなります。

「怠け」「反抗」と誤解されやすい落とし穴

この時期になると、親や先生の期待も高まります。
「もう小学生なんだから」「ちゃんとすればできるでしょ」と言われることが増え、
周囲からは“わざとやらない”“反抗している”ように見られてしまうことも。

でも実際には、できないのではなく「どうやってやればいいかわからない」のです。
つまり、ADHDの子どもに必要なのは“叱責”ではなく“具体的なサポート”なんですね。

【チェックリスト付き】家庭や学校で見られる“9歳の壁サイン”

では実際に、ADHDの子が“9歳の壁”にぶつかっているとき、どんなサインが見られるのでしょうか?
家庭や学校でよく見られる変化を、以下にまとめてみました。

授業中に集中が続かない

今まではなんとか座っていられたのに、途中で立ち歩いたり、話しかけたりすることが増える。
集中力の維持が難しくなるのは、脳の疲労がたまりやすいからです。
「長時間やる」よりも「短時間を区切る」支援が効果的です。

感情が爆発しやすい

「わかんない!」「やりたくない!」と大きな声を出したり、泣き出したりすることがあります。
これは、感情をうまく言葉で表現できない“心のサイン”です。
ママが「イヤな気持ちだったんだね」と言葉にしてあげることで、気持ちを整理しやすくなります。

忘れ物・提出物が増える

プリントを出し忘れる、宿題を持っていかないなど、ミスが多くなる時期。
でもこれは“やる気がない”のではなく、ワーキングメモリー(作業記憶)の弱さによるものです。
「目で見て確認できるチェックリスト」を作ると効果的です。

「やってもムダ」と投げ出す言動

失敗体験が増えると、「どうせ自分なんて」と諦めモードになりやすくなります。
このときに必要なのは「励まし」ではなく、“小さな成功”を一緒に見つけることです。
「昨日より早く始められたね」「10分集中できたね」など、行動の変化を具体的に褒めることがポイント。

こうしたサインは、どの子にも少なからず見られるものです。
けれども、ADHDの子はそれが“日常的に強く出やすい”傾向があります。
つまり、「困っている」のではなく、“助けがあればできる子”なんです。

もしママが「最近ちょっと変わったな」と感じたら、それは“壁にぶつかっているサイン”かもしれません。
焦らず、「どう支えようか?」と一歩立ち止まって考えることから始めてみましょう。

ADHDの子が9歳でつまずきやすい“3つの壁”と親の関わり方

9歳ごろになると、ADHDの子どもたちは「急にできなくなった」「最近イライラが増えた」など、これまでと違う変化が見られるようになります。
それは決して“成長が止まった”わけではなく、心や脳の発達が次のステージに入ったサイン
でもその過程で、いくつかの“つまずきやすい壁”が立ちはだかるのです。

ここでは、ADHDの子がぶつかりやすい3つの壁と、ママが家庭でできる支え方をやさしく解説していきます。

①【勉強の壁】抽象的な問題でつまずく!学習支援のコツ

文章問題・読解力で苦戦する理由

9歳になると、勉強の内容がぐっと難しくなります。
「足し算」「引き算」といった具体的な計算問題から、
「~だから~になる」といった“考える力”を問う問題が増えるんですね。

たとえば、算数の文章題や国語の読解問題。
ADHDの子にとって、これらは「何を聞かれているのか」がわかりにくく、
問題の意図を読み取るのに時間がかかります。

さらに、途中で集中が切れたり、思考が飛んでしまったりして、
「もうわかんない!」と投げ出してしまうこともあります。

これは努力不足ではなく、脳の特性による情報処理の苦手さが関係しています。
ママとしては「何度も教えたのに…」とつい焦ってしまうかもしれませんが、
焦らずに“わかりやすい伝え方”に変えてあげるだけで、子どもは驚くほど理解しやすくなります。

ADHDの子に効果的な家庭学習法

1️⃣ 図解・色分けで“見える化”する
文字だけで説明されると理解が追いつかない子も多いので、
図やイラスト、色ペンを使って「どこが大事か」を視覚的に示してあげましょう。
たとえば国語なら登場人物ごとに色を変える、算数なら数の流れを矢印で書くなど。

2️⃣ タイマーで集中時間を区切る
長時間机に向かうのは難しいので、5分~10分の短時間集中+休憩を繰り返すのがコツ。
「この時間だけやってみよう!」と区切ることで、達成感も得やすくなります。

3️⃣ 「できたリスト」で達成感を見える化
「これ、できたね!」をその場限りで終わらせず、
カレンダーやボードにシールを貼るなどして“できたこと”を目に見える形に残します。
子ども自身が「やればできる」と感じられるようになり、学習意欲の回復につながります。

②【友達関係の壁】人との距離感が難しくなる小学生時期

グループ行動が増える9歳の人間関係の難しさ

小学校3〜4年生になると、子ども同士の世界がぐっと広がります。
“仲良しグループ”ができたり、“暗黙のルール”が増えたり。

でもADHDの子は、

  • 話すタイミングをつかむのが苦手
  • 相手の気持ちを想像するのが難しい
  • 冗談やからかいを本気に受け取ってしまう

といった特性があるため、トラブルが起こりやすくなります。

「友達が冷たくなった」「最近一人でいることが多い」などの変化が見えたら、
“人との距離の取り方”に悩んでいるサインかもしれません。

家庭でできる「コミュニケーション練習」

1️⃣ ターンテイキング(順番のやり取り)の練習
これは、会話や遊びの「順番」を意識する練習です。
ボードゲームやしりとりなど、“交代でやる遊び”がとても効果的。
親子で笑いながら練習できるのがポイントです。

2️⃣ 感情理解カードやロールプレイの活用
表情カードを使って「この顔、どんな気持ちかな?」と話したり、
ロールプレイで「友達が貸してくれなかったとき、どうする?」と練習するのもおすすめ。
実際の場面をシミュレーションすることで、トラブル前に“ことばの引き出し”を増やせます。

ママへのアドバイス

友達トラブルが起きたとき、「何が悪かったの?」と叱るよりも、
「そのときどう感じた?」「どうしたかった?」と気持ちの整理から始めることが大切です。
正解を教えるよりも、子ども自身が考えられるよう“対話の時間”を増やしてあげましょう。

③【感情の壁】癇癪・落ち込み・自己否定が増える理由

「自分だけできない」と感じる自己肯定感の低下

9歳ごろになると、子どもは“自分と他人を比べる力”が発達します。
そのため、
「友達はできるのに自分はできない」
「また失敗しちゃった…」
といった自己否定の気持ちが強くなる時期でもあります。

ADHDの子は、周囲から注意を受けることが多く、
無意識のうちに「自分はダメなんだ」と思い込んでしまうことも。
これは決してわがままではなく、がんばっても報われにくい経験が積み重なった結果なんです。

ADHDの子に効く“共感+具体的な声かけ”例

ママの声かけひとつで、子どもの心の回復力は大きく変わります。
ポイントは、“共感してから提案する”こと。

たとえば:

  • ❌「また怒ってるの?そんなことじゃダメでしょ」
  • ⭕「イヤな気持ちだったんだね。どうしたら気持ちがラクになるかな?」

「~してはダメ」よりも、「~したかったんだね」と気持ちを認めてあげると、
子どもは安心して話せるようになります。

感情を言葉にする力を育てる遊び・会話アイデア

  • 「気持ちカード」や絵日記で“今の気持ち”を選ぶ練習
  • 「今日のうれしかったこと・イヤだったこと」を寝る前に話す習慣
  • ぬいぐるみや人形を使って、感情を“第三者の視点”で表現する

これらはどれも、感情を整理しやすくする大切なトレーニングです。
ママも「話を聞くだけでOK」。アドバイスはいりません。
「そう感じたんだね」と受け止めるだけで、子どもの心は軽くなります。

9歳という時期は、ADHDの子どもにとって“できないことが増える時期”ではなく、
「自分と向き合う力」を育てる大切なチャンスです。
ママのほんの一言や小さな工夫が、子どもにとっての大きな支えになります。

ADHD小学生が“9歳の壁”を乗り越えるための家庭支援5ステップ

「最近なんだかうまくいかない…」と感じるのは、ママだけではありません。
ADHDの子にとって、9歳の壁は“成長の大きな分かれ道”。
でも実は、ちょっとした工夫や関わり方のコツでグンと過ごしやすくなる時期でもあります。

ここでは、家庭でできる5つの支援ステップを紹介します。
どれも特別なものではなく、「できる範囲で無理なく」がポイントです。

ステップ①:1日の見通しを“見える化”する

ADHDの子は「時間の見通し」が苦手

ADHDの子どもは、「あと5分」「もうすぐ終わりだよ」といった時間の感覚をつかむのが苦手です。
だからこそ、見通しを“目で見てわかる形”にしてあげることが大切なんです。

たとえば、朝の支度。
「歯を磨いて、顔を洗って、着替えて…」という流れを口頭で言っても頭に残りません。
でも、イラスト付きのルーティン表が壁に貼ってあれば、「次はこれだ」と一目でわかります。

効果的なツール:タイマー・ルーティン表・カレンダー

  • タイマー:時間の経過を“音や光”で知らせるタイプが便利です。
    「ピッ」と鳴ったら行動を切り替える習慣をつけましょう。
  • ルーティン表:朝・帰宅後・寝る前など、時間帯ごとにやることを絵やアイコンで整理。
  • カレンダー:予定を共有して、変化に弱いADHDの子が“安心できる見通し”を持てるように。

この「見える化」を続けるだけで、「今なにをする時間か」がわかる安心感が生まれます。

ステップ②:「小さな成功体験」を意図的に積み重ねる

「できた!」を実感させる工夫で自己肯定感アップ

ADHDの子は、失敗体験を積み重ねやすいぶん、「自分なんて…」と落ち込みやすい傾向があります。
だからこそ、ママが意識して“成功体験”をつくってあげることが大切です。

成功といっても、テストで100点を取ることではありません。
「今日は忘れ物をしなかった」「1問だけでも宿題をがんばった」——その小さな一歩こそが“できた!”の種。

結果よりも“取り組んだ姿勢”を褒める習慣づけ

たとえば、

  • 「最後までやりきろうとしたね」
  • 「嫌なのに頑張って始められたの、すごいね!」
    といった“行動の過程”を褒めることが自己肯定感を育てます。

人より時間がかかっても、ママの一言で「自分も頑張れる」と思えるのです。
“結果よりも姿勢を認める”——この考え方が、9歳の壁を超える力になります。

ステップ③:感情を表現するトレーニングを取り入れる

感情カード・絵日記で“気持ちの見える化”

ADHDの子どもは、頭の中でモヤモヤした気持ちを整理するのが難しいです。
そのため、怒りや悲しさを「うまく言葉にできず爆発してしまう」ことがあります。

そんなときに役立つのが、感情カードや絵日記
「今日の気持ちはどんな色?」と聞いて、カードから選ばせるだけでも、
子どもが自分の感情を客観的に見られるようになります。

絵日記も効果的で、言葉が難しい子でも“表情の絵”で表現できるため、
「今日は悲しかった」「友達が笑ってくれてうれしかった」など、少しずつ自己表現の練習になります。

「イライラしてもいいよ」と共感を伝える重要性

子どもが怒っていたり泣いていたりすると、つい「落ち着いて!」と言いたくなりますよね。
でも、まずは「イライラする気持ち、わかるよ」と共感してあげてください。

気持ちを否定されると、子どもは「この感情はダメなんだ」と感じてしまいます。
逆に共感してもらうことで、「自分の気持ちは大切にしていいんだ」と学んでいきます。

この積み重ねが、感情を自分でコントロールする力につながるのです。

ステップ④:集中できる家庭環境をつくる

ADHDの子が落ち着ける空間づくりのポイント

ADHDの子にとって、「環境の刺激」は集中力に大きく影響します。
ちょっとした音や視覚情報でも気が散ってしまうんですね。

ですので、家庭学習や静かに過ごす時間には、“集中できるゾーン”をつくるのがおすすめです。
たとえば、

  • テレビやおもちゃが目に入らない場所に机を置く
  • 作業スペースを1つに決めて、「ここでやる」とルールを明確にする
  • 必要なものだけ机の上に置く(ごちゃごちゃ防止!)

感覚刺激の調整方法

  • :雑音を減らすために、ノイズキャンセリングイヤーマフや静かなBGMを活用
  • :明るすぎる照明を避け、自然光や間接照明を使う
  • 匂い:香りに敏感な子には無臭空間を。落ち着く香りを好む子なら、ハーブ系アロマも◎

こうした調整で、「集中が続く」「落ち着ける」空間を家庭でも再現できます。

ステップ⑤:親自身のメンタルを守る

子どもの支援は「ママの安定」から

子どもを支えるには、まずママ自身が元気でいることが大切です。
でも、毎日続く支援や学校対応、他のきょうだいのケア…本当に大変ですよね。
「がんばらなきゃ」と思うほど、心が疲れてしまうのも当然です。

そんなときは、“ママが休むことも支援のうち”だと思ってください。
疲れたときは好きな飲み物をゆっくり飲む、誰かに話を聞いてもらう——それだけでもいいんです。

完璧を求めず、専門家や支援機関に頼る勇気を持つ

支援センターや発達相談窓口、スクールカウンセラーなど、頼れる場所はたくさんあります。
「家で全部やらなきゃ」と思いすぎず、
「少し助けてもらおうかな」と気軽に声をかけてみてください。

ママが安心して笑顔でいられることが、
結局は子どもにとって一番の支えになります。

9歳の壁は、親子で一緒に“越えていく”ものです。
完璧じゃなくて大丈夫。
ママのペースで、少しずつ実践していくことで、子どもはちゃんと前に進めます。

【体験談】9歳の壁を乗り越えたADHDの子どもたちの実例3選

「どうしたらこの子が前向きになれるんだろう…」
「うちだけがうまくいかない気がする…」

そんなふうに感じているママへ。
実は、少しの工夫と関わり方の見直しで“変化”を実感できたご家庭はたくさんあります。

ここでは、ADHDの子どもが9歳の壁を乗り越えた3つの実例を紹介します。
どれも特別なことではなく、すぐに家庭で試せる内容ばかりです。

ケース①:忘れ物が多かったAくんの変化

「チェックボード習慣」で自立と自信が芽生えた

小学3年生のAくんは、毎日のように忘れ物をしていました。
宿題・筆箱・水筒……どれかひとつは必ず忘れてしまい、
先生から注意されるたびに「また怒られた」「どうせ僕はダメだ」と落ち込む日々。

そんなAくんのママが始めたのが、「チェックボード習慣」です。
ホワイトボードに「持ち物リスト」を書き出し、登校前に自分でチェック。
忘れ物をしても怒らず、「明日はどうすれば思い出せるかな?」と一緒に考える時間を持ちました。

最初はママの声かけが必要でしたが、1か月ほどでAくんは自分から確認するように。
「今日は全部持てた!」と自信を見せる姿に、ママも思わず笑顔になったそうです。

なぜうまくいったのか?

ADHDの子は「記憶の保持」や「注意の切り替え」が苦手です。
そのため、頭の中で覚えておくのではなく、“見える形で記憶を外に出す”工夫が効果的なんです。

さらに、ママが「できた!」をその都度認めてあげたことで、
“自分でできた”という成功体験が積み重なり、自信と自立が芽生えたのです。

ケース②:友達関係が苦手だったBちゃん

感情カード練習で人間関係トラブルが激減

Bちゃんはおしゃべりが大好きな明るい女の子。
でも、友達との距離の取り方が難しく、
「遊びたい!」という気持ちが強すぎて、相手が嫌がっても気づけないことがありました。

その結果、「しつこい」「もう一緒に遊ばない」と言われてしまい、
Bちゃんは「なんで嫌われるの?」と泣いてしまう日が続いたそうです。

そこでママが取り入れたのが、「感情カード練習」。
いろいろな表情カードを並べて、
「この顔、どんな気持ちだと思う?」
「じゃあ、こんな時にどんな言葉をかける?」
と一緒に考える時間を毎晩5分ほど作りました。

すると数週間後、Bちゃんが友達に「今は遊びたくないんだね、またあとでね」と言えたのだとか。
ママはその瞬間、「この子、ちゃんと相手の気持ちがわかるようになったんだ」と涙が出るほどうれしかったそうです。

なぜうまくいったのか?

ADHDの子どもは「相手の感情を読む力(心の理論)」がゆっくり育ちます。
だから、実際に目で見て、言葉で整理する“感情トレーニング”がとても有効です。

感情カードは「考える練習」ではなく、「気持ちを理解してみる遊び」。
遊び感覚で続けることで、Bちゃんは自然と“人との距離感”を感じ取る力を身につけていきました。

ケース③:勉強嫌いだったCくん

タイマー勉強法+“できたノート”でやる気アップ

Cくんは、机に向かうのがとにかく苦手。
宿題を始めてもすぐに気が散って、
「もうイヤだ!」「なんで勉強しなきゃいけないの?」と怒ってしまうタイプでした。

ママもつい「早くやって!」と叱ってしまい、
お互いにストレスがたまる悪循環に…。

そんなときに取り入れたのが、「タイマー勉強法」+“できたノート”でした。
まず、タイマーを5分にセット。
「5分だけ集中しよう!」と声をかけて、終わったらすぐにシールを1枚貼る。
そのシールを貼ったノートを“できたノート”として残していったのです。

最初は「たった5分?」と思っていたCくんも、
毎日少しずつノートが埋まっていくのを見て、「自分、けっこう頑張ってる!」と笑顔に。
気づけば、タイマーを使わなくても集中できる時間が伸びていきました。

なぜうまくいったのか?

ADHDの子は「長時間の集中」よりも、「短時間×成功体験の積み重ね」が得意です。
タイマーで区切ることで、“今だけ”に意識を集中できるようになり、
“できたノート”という“目に見える成果”がモチベーション維持に直結します。

また、ママが「今日も頑張れたね!」と笑顔で言葉をかけることで、
勉強=怒られる時間 → “ほめられる時間”に変わったのです。

まとめ:どの子にも“その子なりの成長のペース”がある

Aくん・Bちゃん・Cくんのように、どの子も少しずつ“自分なりの成長”を見せてくれます。
大切なのは、「今はまだ途中なんだ」と信じて見守ること。

9歳の壁は、子どもの可能性を閉ざすものではなく、
むしろ次のステップへ進むための通過点です。

焦らず、ママと子どもが一緒に“できた!”を積み重ねていけば、
必ず乗り越えられる日がやってきます。

ADHDの子が「9歳の壁」を超えるために親が意識したい3つの心構え

9歳ごろのADHDの子は、心も体もグッと成長する一方で、
「前はできていたのに、最近うまくいかない…」と感じることが増えます。

この時期を乗り越えるためにいちばん大切なのは、
ママやパパの“関わり方”よりも、“心の持ち方”です。

親がどんな気持ちで子どもと向き合うかによって、
子どもの自信の育ち方がまったく変わります。

ここでは、ADHDの子が9歳の壁を超えるために、親が意識しておきたい3つの心構えを紹介します。

① 失敗を“成長のチャンス”ととらえる

「できない」ではなく「練習中」と伝える習慣

ADHDの子は、どうしても「失敗体験」が多くなりがちです。
忘れ物、集中できない、指示を聞き逃す——どれも“わざと”ではなく、脳の特性によるもの。

でも、何度も注意され続けるうちに、
「自分はダメなんだ」「どうせまた怒られる」と思い込んでしまうことがあります。

そんなときに、親がかける言葉を変えてみましょう。

たとえば、

  • ❌「なんでまた忘れたの!」
  • ⭕「まだ練習中だもんね。明日はどうやったら思い出せるかな?」

たったそれだけで、子どもは「自分はできるようになる途中なんだ」と思えるようになります。

ポイントは“失敗を評価しない”こと

失敗を責めると、子どもは「次はバレないように隠そう」としてしまいます。
でも、「うまくいかなかったね、次どうする?」と穏やかに聞かれると、
自然と自分で考え、成長につながる行動が出てきます。

つまり、失敗=マイナスではなく、“成長のチャンス”なんです。

子どもが落ち込んでいるときこそ、「今、成長中だね」と伝えてあげましょう。

② 比較せず、子どものペースを尊重する

他の子との違いを前向きにとらえる視点づくり

小学校中学年になると、どうしても周りと比べる場面が増えます。
「友達はテストで90点なのに」「あの子は一人で支度できるのに」——
そんなふうに感じて、つい焦ってしまうこともありますよね。

でも、ADHDの子どもは“スピード”よりも“積み重ね”で力をつけていくタイプです。
同じように見えても、成長の曲線がちょっと違うだけなんです。

ママの声かけが「自己肯定感」を育てる

比べるかわりに、こう声をかけてみてください。

  • 「昨日より少しできたね!」
  • 「あなたの考え方、面白いね!」
  • 「時間かかったけど、最後までやり切ったね!」

こうした言葉は、子どもが自分のペースを大事にできる“安心感”を生みます。

ADHDの子は、焦らせるよりも「待ってもらえる」ことで伸びるタイプ。
親がゆったり構えることで、子どもも「自分のままでいいんだ」と思えるようになります。

専門家の視点から見ても…

心理学的にも、“比較される経験”は自己肯定感を下げやすいことが知られています。
逆に、「あなたはあなたのままでいい」と認められる体験は、
社会性や自己調整力を育てる土台になるんです。

③ ADHD特性を“強み”として活かす

行動力・発想力・好奇心の高さを伸ばす環境づくり

ADHDの子は、確かに集中が続かなかったり、衝動的に動いてしまうこともあります。
でも、その裏には、「ひらめき」や「柔軟な発想」「行動の早さ」といった強みが隠れています。

たとえば、

  • アイデアを次々と思いつく
  • 興味のあることに驚くほど集中する
  • 思い立ったらすぐ動ける

これらは、社会に出ても大きな武器になる力です。

家庭でできる“強みを伸ばす”関わり方

1️⃣ 興味を尊重する
子どもが「やってみたい」と言ったことは、できるだけチャレンジさせてみましょう。
たとえ途中でやめてもOK。「やってみた」こと自体が学びになります。

2️⃣ 失敗を恐れない環境をつくる
「うまくいかなくても大丈夫だよ」と言える家庭の空気が、挑戦する勇気を育てます。

3️⃣ 成功体験を記録する
できたことをノートや写真で残すと、子ども自身が「自分の得意」を実感できます。

ママへのメッセージ

ADHDの特性は、“困りごと”として見える部分だけではありません。
見方を変えれば、「個性の輝き」や「社会を変える力」でもあるんです。

ママが子どもの特性を肯定的に受け止めることで、
子どもは「自分はダメじゃない」「自分にもいいところがある」と感じられるようになります。

その積み重ねが、9歳の壁を超える“自己肯定感の土台”になります。

まとめ:ママの心が、子どもの安心のベースになる

9歳の壁を乗り越えるために必要なのは、
完璧な支援や特別な療育よりも、「ママのあたたかいまなざし」です。

失敗しても、比べなくてもいい。
子どもの特性を“その子らしさ”として受け止めることが、
最終的には子どもの生きる力を育てていきます。

よくある質問Q&A:ママたちの悩みに専門家が答える!

「うちの子、これで大丈夫なのかな?」
「この時期、どう乗り越えたらいいんだろう?」

そんなママたちのリアルな悩みに、発達支援の専門家の視点からお答えします。
どの質問も、同じように悩んでいる方がたくさんいます。焦らず、ひとつずつ見ていきましょう。

Q1. 「9歳の壁」はいつまで続くの?

一般的に「9歳の壁」は、小学3年〜5年ごろにかけてゆるやかに現れます。
ただし、“終わり”があるわけではなく、“変化の時期”が続くと考えるとわかりやすいです。

ADHDの子どもは、脳の発達スピードがゆっくりな場合があるため、
他の子より少し長く“壁”が続くこともあります。
でもそれは「遅れている」ではなく、「じっくり育っている」だけです。

そして、親が焦らずにサポートを続けることで、
中学年〜高学年にかけて、少しずつ自分のペースをつかめるようになります。

🌱ポイント:
「壁を乗り越える」ではなく、「一緒にゆっくり階段を上がっていく」イメージでOK!

Q2. 感情爆発や反抗期がひどい時の対応法は?

ADHDの子は感情のコントロールが難しく、
「思いどおりにいかない」ときに爆発的に怒ったり泣いたりすることがあります。

そんなときに一番大切なのは、“まず落ち着かせること”よりも“共感すること”です。

たとえば、

  • ❌「もう怒らないの!」
  • ⭕「悔しかったんだね」「イヤな気持ちだったんだね」

と、気持ちを受け止めてあげましょう。
感情が整理できると、自然に落ち着いてきます。

落ち着いたあとで、「どうすればよかったと思う?」と話すことで、
自己調整力(気持ちを切り替える力)が少しずつ育ちます。

専門家の視点:
感情を“爆発”ではなく“表現”に変える練習が、思春期以降の自己理解にもつながります。

Q3. 学校で孤立している時、親はどう関わればいい?

「一人でいることが多い」「友達とトラブルが多い」——
そんなとき、ママがしてあげられることは3つあります。

1️⃣ 家庭で安心を回復させる
学校で疲れている子は、家で安心できる時間が何より大事。
「今日はがんばったね」と笑顔で迎えてあげるだけでも十分です。

2️⃣ 先生と連携する
担任の先生や支援員さんに「どんな場面で困っているか」を共有してもらいましょう。
一人で抱えず、“家庭と学校のチーム支援”を意識してみてください。

3️⃣ 無理に“友達をつくろう”としない
「早く仲良くしなさい」はプレッシャーになります。
まずは一人で過ごす時間を否定せず、“本人の心の準備”を待つ姿勢が大切です。

専門家メモ:
「孤立」は悪いことではなく、“自分のペースを守るための時間”でもあります。

Q4. 勉強のやる気を引き出すにはどうすればいい?

ADHDの子に「やりなさい!」と言っても、なかなか動けないのは当然のこと。
やる気がないわけではなく、「どう始めればいいかわからない」だけなんです。

そんなときは、以下の工夫を試してみてください。

  • タイマー学習法:「5分だけやろう!」と区切ると取り組みやすい
  • できたノート:できたページにシールを貼って“目に見える達成感”を育てる
  • 選択肢を与える:「漢字と計算、どっちからやる?」など、選ばせると主体性が生まれる

勉強の目的は「点数を上げること」ではなく、
「やればできる」という自己効力感を育てることです。

💬ママの一言で変わる!
「やりなさい」よりも「一緒にやろうか」のほうが、子どもは動きやすくなります。

Q5. ADHDの子は思春期以降どう成長するの?

思春期になると、ADHDの特性がよりはっきり出る子もいれば、
上手にコントロールできるようになる子もいます。

どちらにしても、「本人が自分の特性を理解できるようになること」が大きな成長の鍵になります。

たとえば、

  • 「集中が続かないから、タイマーを使うといい」
  • 「考えが広がりやすいから、アイデアをノートにまとめておこう」

と、自分の“特性との付き合い方”を覚えることが大切です。

また、ADHDの特性である行動力・創造力・発想の柔軟さは、
社会に出たときに大きな強みになります。

まとめ:
思春期以降は、「困りごとを減らす」よりも「特性を活かす」にシフトする時期です。
ママが「あなたの個性はいいところだよ」と伝え続けることで、
子どもは自分を信じられるようになります。

ママが一番にできることは、“完璧に支えること”ではなく、
「信じて待つ」ことと「安心できる場所をつくる」こと。

9歳の壁を超える力は、ママと子どもが一緒に育てていけます。

まとめ:9歳の壁は“成長のチャンス”!ママの支えが未来を変える

「9歳の壁」という言葉を聞くと、少しドキッとするママも多いですよね。
でも実はこの時期こそ、ADHDの子が“自分らしさ”を見つけはじめる大切な成長期なんです。

子どもは、できないことや苦手なことを通して、
少しずつ「どうすればうまくいくか」を学んでいきます。
それは時間がかかるかもしれませんが、“壁”は成長のサインでもあります。

家庭での工夫と安心感が、子どもの力を引き出す

ADHDの子どもにとって、家庭は「安心の基地」です。
学校で頑張って疲れたとき、家に帰ってホッとできる場所があることは何よりの支えになります。

たとえば、

  • タイマーやカレンダーで“見通し”を持たせる
  • 「できた!」を言葉やリストで見える化する
  • 感情をことばにする練習を遊びの中で取り入れる

こうした小さな工夫が積み重なって、子ども自身の自信や自己理解につながります。

そして何より大切なのは、ママが「大丈夫」と信じる気持ち。
子どもはその安心感を敏感に受け取っています。

💬「失敗してもいい」「あなたのペースでいい」
その一言が、子どもの心に“安心の根っこ”を育てます。

「うちの子は大丈夫」と信じて、親子で一歩ずつ進もう

ADHDの子がぶつかる“9歳の壁”は、決して終わりではありません。
それは、「これから自分を知り、成長していくスタートライン」です。

ママが焦らず、子どものペースに寄り添いながら、
「一緒に考えよう」「できたね!」と支えていくことで、
子どもは少しずつ自分の力で前に進めるようになります。

どんなにゆっくりでも、確実に成長しています。
そして、その成長の背景には、いつもママの存在があります。

以上【ADHDの子がぶつかる“9歳の壁”とは?小学生の成長を支えるママの具体的な支援方法まとめ】でした

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この記事を書いた人

約30年の間に培った障害福祉分野での知識や経験を、このブログで余すことなくお伝えしていきます。
所持資格:社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員等

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