ADHDは10人に1人!子どもの特性を理解して育児をラクにする方法

目次

ADHDは10人に1人!子どもの特徴と基本をやさしく解説

最近よく耳にするようになった「ADHD(注意欠如・多動症)」という言葉。
実はADHDは10人に1人とも言われるほど、いまやとても身近な特性なんです。

でも、「ADHDってどんな特徴?」「うちの子もそうかもしれないけど、どう違うの?」と思うママも多いはず。
ここでは、子どものADHDを理解するための基本を、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。

「うちの子、ちょっと落ち着きがなくて…」
「忘れ物が多くて、注意しても直らないの…」
そんな子どもの行動の裏には、脳の特性や発達の違いが隠れていることもあります。
決して“しつけの問題”ではなく、生まれつきの脳の働き方の違いによるものなんです。

ADHDとは?子どもの「不注意・多動・衝動性」をわかりやすく紹介

ADHDとは、「注意欠如・多動症(ちゅういけつじょ・たどうしょう)」という発達特性のひとつです。
医学的には「発達障害」の一種とされていますが、決して「できない」わけではなく、脳の使い方にちょっとしたクセがあるイメージです。

ADHDの主な特徴は、大きく分けてこの3つです。

  1. 不注意(集中が続かない)
     → 宿題をやっていても他のことに気が散る、話を聞いている途中でぼんやりしてしまう、忘れ物が多いなど。
  2. 多動性(じっとしていられない)
     → 体がいつも動いていたり、座っているのが苦手だったり。遊びや会話中に突然立ち上がってしまうこともあります。
  3. 衝動性(思いついたらすぐ行動してしまう)
     → 順番を待てなかったり、つい口を出してしまったり。悪気はなくてもトラブルになってしまうことも。

これらはどの子にも少しは見られる行動ですが、ADHDの子どもはその傾向が強く、日常生活に影響が出やすいのが特徴です。

ただし、ADHDの子には「集中できない」一方で、好きなことに関しては驚くほど集中できる(ハイパーフォーカス)という一面もあります。
つまり、「できない子」ではなく、“集中のスイッチ”が独特な子
なんですね。

なぜADHDの子どもが増えているの?10人に1人の背景と現代の環境

「昔はこんなにADHDの子って多くなかったのに…」と思う方も多いでしょう。
でも実は、「ADHDが増えた」というよりも、ADHDが“見えるようになった”というのが正しい言い方です。

昔は「落ち着きがない」「わがまま」とされていた子が、今では発達の特性として正しく理解されるようになったということ。
診断や支援体制の整備が進み、子どもの行動を科学的に見る時代になったのです。

さらに、現代の生活環境も関係しています。

  • スマホやテレビなどの刺激が多く、集中を保ちにくい
  • 集団生活が早く始まり、「じっとする」「待つ」ことを求められる機会が増えた
  • 遊びや自然体験が減り、体を使って発散するチャンスが少ない

こうした要因も、ADHDの特性が目立ちやすくなる背景のひとつです。

つまり、「ADHDの子が増えた」のではなく、子どもをより深く理解できる時代になったとも言えます。
これは、ママにとっても「どう関わればいいか」を見つけやすくなったというポジティブな変化なんです。

ADHDの原因と脳の働きの違いを専門家がやさしく説明

ADHDの原因は、「親の育て方」ではありません。
これは医学的にも明確で、脳の発達や神経伝達のはたらき方の違いが関係しています。

人の脳には「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という部分があり、ここは「注意をコントロールする・感情を抑える・行動を計画する」などを担当しています。
ADHDの子どもはこの部分の発達が少しゆっくりしており、刺激に反応しやすい脳を持っているのです。

さらに、脳の中で情報を伝えるドーパミンやノルアドレナリンという物質のバランスも影響しているといわれています。
これらがうまく働かないと、「やる気を保つ」「集中を続ける」ことが難しくなります。

でも、この脳の特徴は「悪いこと」ではありません。
実は、ADHDの子どもたちは発想が豊かで、ひらめきや創造力に優れていることも多いんです。

たとえば、じっとしていられない=行動力がある。
気が散りやすい=たくさんのことに気づける。
衝動的=すぐに行動できるスピード感がある。

このように、短所と見える部分も見方を変えれば長所になる
大切なのは、「どうすればこの特性を生かせるか」を見つけていくことなんです。

ADHDのサインを見逃さない!年齢別に見る特徴と行動パターン

ADHDの特徴は、年齢によって少しずつ見え方や現れ方が変わるのがポイントです。
たとえば、幼児期では「落ち着きのなさ」が目立ち、小学生になると「忘れ物」や「集中できない」といった困りごとが増えます。

さらに高学年から思春期にかけては、心の発達とともに“自信のなさ”や“自己否定感”が表れやすくなります。
この変化を知っておくことで、「叱る前に理解できる」「支援のタイミングを逃さない」ことができます。

ここでは、年齢ごとに見られやすいADHDのサインと、家庭での接し方のヒントをやさしく紹介します。

【幼児期】3〜6歳で見られるADHDの初期サインと接し方

3〜6歳ごろは、どの子も元気いっぱいで落ち着きがないもの。
でも、ADHDの子どもの場合、「行動の切り替えが苦手」だったり、「気が散りやすい」傾向がより強く見られます。

たとえば、

  • 絵本を最後まで見られずに途中で他の遊びに移る
  • 順番を待てず、すぐに走り出してしまう
  • 「ダメ」と言っても同じことを何度も繰り返す
  • 興奮すると止まらなくなり、感情のコントロールが難しい

これらは“わがまま”ではなく、脳の発達のバランスの違いが関係しています。
まだ「我慢する力」や「見通しを立てる力」が育ちきっていないため、行動が先に出てしまうのです。

家庭では、「叱る」よりも“先に伝える”が効果的。
「もうすぐ片づけの時間だよ」「あと1回遊んだら終わりね」など、予告をして気持ちを切り替える準備をさせるとスムーズです。

また、短い時間で区切って遊ぶなど、“できた!”を積み重ねる関わりが自信を育てます。
ママが「今できたね」と声をかけてあげるだけでも、子どもは安心し、次の行動への意欲につながります。

【小学校低学年】集中できない・忘れ物が多い子の対応ポイント

小学校に入ると、授業・宿題・持ち物など、「やるべきこと」が一気に増える時期です。
ADHDの子どもは、この変化に対応するのが苦手で、次のような行動が見られることがあります。

  • 授業中に立ち歩いたり、おしゃべりが止まらない
  • 宿題をやろうとしても、気づくと別のことをしている
  • 忘れ物が多く、「また!?」が毎日のように起こる
  • 時間の感覚がつかめず、準備にすごく時間がかかる

これらは、ワーキングメモリ(短期記憶)や注意の切り替えが苦手なために起こります。
決して怠けているわけではありません。

家庭での工夫としておすすめなのが、「見える化」です。

  • 朝の支度や持ち物をチェックリストにして貼っておく
  • 宿題・休憩・遊び時間をタイマーで区切る
  • 「1つできたらシール」など、目で見て達成感を感じられる仕組み

また、叱るよりも「やってみよう」→「できた!」→「ほめられた!」という流れを大切にしましょう。
小さな成功の積み重ねが、「自分にもできるんだ」という
自己肯定感の土台になります。

【小学校高学年】自己否定感が出やすいADHDの子への関わり方

高学年になると、まわりとの違いに気づき始める時期。
「自分だけ怒られる」「なんでできないの?」といった自己否定の気持ちを抱えやすくなります。

この時期は、「心のサポート」が最優先です。
行動を直すよりも、まず「気持ちを受け止める」「共感する」ことが大切。

たとえば、

  • 「忘れちゃったんだね。どうしたら次はうまくいくかな?」
  • 「頑張ってたの知ってるよ。結果より、挑戦できたのがすごいね」

といった言葉かけが効果的です。
ポイントは、「できなかったこと」よりも「頑張れた過程」を認めること。

また、高学年の子どもは「プライド」も育ってくるので、注意は人前ではなく、こっそり伝えるのがベター。
「信頼されている」と感じることで、ママとの関係が安定します。

さらに、勉強や日常生活では、得意を伸ばすことも大事。
絵が得意・体を動かすのが好き・発想がユニークなど、その子の“強み”を伸ばす支援が、自信を取り戻す第一歩になります。

【思春期】不登校や反抗期に見える“二次障害”のサインと支援法

思春期(中学生〜高校生)になると、ADHDの特性が「心の問題」として現れやすくなる時期です。
「やる気が出ない」「学校に行きたくない」「親に反抗する」といった行動の裏には、長年の“生きづらさ”やストレスが隠れていることもあります。

ADHDそのものよりも、周囲の理解不足や失敗体験の積み重ねによって、
不登校・うつ・強い自己否定感などの“二次障害”につながることがあるのです。

そんなとき、ママが意識したいのは「行動」よりも「心」を見ること。
「サボってる」「反抗してる」ではなく、
「しんどい気持ちをうまく言葉にできない」だけかもしれません。

家庭でできる支援としては、

  • 「無理に学校へ行かせる」より、「安心して話せる場を作る」
  • 「できないこと」より、「今できていること」に注目する
  • 必要に応じて、カウンセラー・発達支援センターなど専門家のサポートを活用する

また、思春期の子は「自分で選びたい」気持ちが強くなるため、
親がすべて決めるより、“一緒に考える姿勢”が効果的です。

ADHDの特性を理解しながら、「あなたの存在そのものが大切だよ」と伝えること。
それが、子どもが再び自信を取り戻すための何よりの支えになります。

ADHDの子どもに多い困った行動3選|原因を知ればイライラが減る!

「何度言っても聞かない」「じっとできない」「わざとやってるの?」
――ADHDの子どもと関わっていると、ママがつい口にしてしまうこの言葉たち。

でも実は、これらの“困った行動”には、ちゃんと理由があります。
しかもその多くは、子ども自身が「どうしてそうなるのか」を理解できていないんです。

つまり、ママが“行動の背景”を理解するだけで、関わり方はグッとラクになるんです。
ここでは、ADHDの子どもによく見られる行動を3つ取り上げ、脳の特性や心理的な背景からわかりやすく解説していきます。

「何度言っても聞かない」は脳の特性!ワーキングメモリの影響

「さっき言ったでしょ?」「何回言えばわかるの!?」
つい言ってしまうこの言葉。実は、ADHDの子どもには「覚えておく力(ワーキングメモリ)」が弱い傾向があるんです。

ワーキングメモリとは、短い時間に情報を一時的に覚えておく力のこと。
たとえば、
「ランドセルを片づけて手を洗ってご飯食べよう」
――大人ならスムーズにこなせるこの流れも、ADHDの子にとっては難しいことがあります。

脳の中で「今やっていること」と「次にやること」を同時に処理するのが苦手なので、途中で情報が抜けてしまうんですね。

だから、「忘れた」ではなく「保持できなかった」というのが本当のところ。

ママができる工夫としては、

  • 1つずつ短く伝える(同時に複数指示しない)
  • 「終わったら次ね」と順番を区切る
  • 見える形にしておく(メモやイラストボード)

などが効果的です。

たとえば、「片づけてね」ではなく、
「ランドセルを棚に置いてね」→終わったら→「次は手を洗おうね」
というように、ステップごとに伝えるだけで成功率が上がります。

叱るより、「どうしたら思い出しやすいか?」を一緒に考える姿勢が、子どもの安心感につながります。

「落ち着きがない」は悪気じゃない!身体が刺激を求めているだけ

「じっとしていなさい!」
「静かにしてって言ったでしょ!」

これも、ADHDの子を育てているママがつい言ってしまう言葉のひとつですよね。

でも実は、「落ち着きがない」「常に動いている」という行動にも、ちゃんとした理由があります。
ADHDの子どもは、脳の覚醒レベル(興奮と集中のバランス)を自分で調整するのが苦手なんです。

つまり、脳が“ぼんやりモード”にならないように、身体を動かして刺激を入れているともいえます。
これは無意識の行動で、決して「ふざけている」わけではありません。

たとえば、授業中に鉛筆を回したり、イスを揺らしたりするのも、集中を保つための“自己調整”行動だったりします。

家庭でできる工夫としては、

  • 勉強前に軽く体を動かす(ストレッチやジャンプなど)
  • 椅子の下に足を動かせるクッションやバランスボールを置く
  • 集中が切れてきたら「少し動こうか」とリセットの時間をとる

など、「止める」より「動いてもいい環境」をつくる方がうまくいくことが多いです。

子どもが動いている時、ママはつい「また動いてる…」と思いがちですが、
実はその行動こそ、子どもなりに集中しようとしているサインなんです。

「わざとやってるの?」と誤解されやすい行動の裏にある心理

「何度言っても同じことをする」
「人の話をさえぎる」「すぐカッとなる」
そんな時、「わざとだ」「反抗してる」と感じるママも少なくないと思います。

でも、ADHDの子どもの多くは、自分の行動をうまくコントロールできないだけなんです。
頭では「やっちゃダメ」とわかっていても、感情や衝動が先に動いてしまう。

これには、感情をコントロールする脳の部分(前頭前野)が発達の途中であることが関係しています。
つまり、「我慢できない」のではなく、「まだ我慢する力が育っていない」ということ。

また、ADHDの子どもは周囲から注意されることが多く、
「自分はダメだ」と感じやすい傾向があります。
この自己否定感が強くなると、わざとふざけたり、怒ったりして“自分を守る”行動につながることもあります。

ママが意識したいのは、「行動」ではなく「気持ち」に目を向けること。
たとえば、

  • 「またふざけて!」ではなく「今、嫌な気持ちだったのかな?」
  • 「やめなさい!」ではなく「どうしたら落ち着けるかな?」

と、子どもの気持ちを代弁するような声かけを意識してみてください。

すると、子どもは「わかってもらえた」と感じ、少しずつ心を開いていきます。

もちろん、ママがいつも完璧に対応するのは難しいですよね。
イライラした時は、「あの子は今、脳がパンクしてるんだな」と一歩引いて考えるだけでも、心が軽くなります。

ADHDの子どもを育てる親が知っておきたい!家庭でできる支援と関わり方

ADHDの子どもを育てていると、毎日のように小さな「困った」に出会いますよね。
忘れ物、集中できない、片づけない、思いついたらすぐ行動…
どれも「しつけで何とかしたい!」と思っても、うまくいかないことが多いものです。

でも実は、ADHDの子どもにとって大事なのは、「できないことを叱る」よりも「できたことを増やす」こと。
そしてそのためには、ママの「伝え方」や「環境の工夫」がとても大きな支えになります。

ここでは、家庭でできる具体的な支援のコツ4つをご紹介します。
どれも特別な道具や知識がなくても、今日からできることばかりです。

スモールステップで「できた!」を積み重ねる褒め方のコツ

ADHDの子どもは、何かを「続ける」「順序立ててやる」ことが苦手です。
そのため、「できた!」という達成感を感じる機会が少なく、自己肯定感が下がりやすい傾向があります。

だからこそ、家庭では「小さな成功体験」をたくさん作ってあげることがとても大切。

たとえば、

  • 「宿題を全部終えた」じゃなく、「宿題に取りかかっただけでもOK!」
  • 「全部片づけた」じゃなく、「ランドセルを定位置に置けたね!」
    といったように、行動の“最初の一歩”を褒めることから始めましょう。

ポイントは、“結果”ではなく“プロセス”をほめること。
「早くできたね」よりも、「ちゃんとやろうとしたね」「昨日より落ち着いてたね」と伝えることで、子どもは「努力を見てくれてる」と感じます。

また、「褒める=テンション高く言うこと」ではありません。
ときには穏やかに「気づいたよ」「見てたよ」と声をかけるだけでも、子どもの心はしっかり満たされます。

スモールステップで少しずつ「できた!」を積み上げること。
それが、ADHDの子どもにとっての“生きづらさ”を減らす最初の支援になります。

スケジュールボード&タイマー活用!視覚支援でわかりやすく

ADHDの子どもは、「時間の感覚」や「見通しを立てる力」が苦手なことが多いです。
口で「早くして」「あと10分!」と言われても、ピンとこないんですね。

そこでおすすめなのが、スケジュールボードタイマーを使った「視覚支援」です。

たとえば、

  • 朝の支度を「着替える→歯みがき→ごはん→出発」とカードで順番に並べる
  • タイマーを使って「今この時間」「あとどのくらい」を見える化する
  • 終わったらカードを“できたボード”に移動して達成感を味わう

このように、「言葉ではなく、目で理解できる形」にするだけで、子どもはぐっと動きやすくなります。

また、タイマーは「時間を測るため」だけでなく、「気持ちの切り替え」にも役立ちます。
たとえば、「タイマーが鳴ったらおしまいね」と事前に伝えておくことで、子どもは“次の行動への心の準備”ができます。

これは、発達支援の現場でもよく使われている手法で、「先の見通しがあると落ち着ける」という心理的な効果もあります。

家庭では、ホワイトボードやマグネットシート、100均のタイマーでも十分。
ポイントは、「ママが楽しく使うこと」。
「次はどっちかな?」「タイマー勝負する?」など、遊び感覚で導入すると長続きしやすいですよ。

家の環境を整えるだけで集中力アップ!実践したい整理術

ADHDの子どもは、視覚から入る刺激にとても影響を受けやすい特性があります。
つまり、「モノが多い」「カラフルすぎる」「音が多い」環境では、注意があちこちに散りやすいんです。

だからこそ、家庭でできる支援の第一歩は、「環境を整える」こと。
これは“片づけ”というより、“子どもが迷わず動ける仕組み”を作ることです。

たとえば、

  • ランドセルや上着を置く「定位置」を決める
  • 教科書は1教科ずつケースに分けて収納
  • 「毎日使うもの」だけを手に取りやすい位置に置く

このように、「考えなくても動ける配置」を意識すると、忘れ物や準備のトラブルが減ります。

また、色の使い方にもコツがあります。
赤・黄色などの強い色を減らし、青や白など落ち着いた色味を増やすと集中しやすいという研究結果もあります。

そして忘れがちなのが、「音と光」。
テレビやBGMが常に流れていると、ADHDの子は頭の中がフル稼働状態になり、疲れやすくなります。
勉強や作業をする時は、静かな空間+自然光に近い明るさを意識してみてください。

環境を整えることは、ママにとってもストレスが減る“ダブル効果”。
「片づけなさい!」と怒る回数が減り、子どももママも笑顔が増える空間づくりにつながります。

叱るより“予告と選択肢”!子どもの行動を導く魔法の言葉がけ

ADHDの子どもは、突然の指示や変化にとても弱い傾向があります。
だからこそ、叱るよりも効果的なのが、「予告」と「選択肢」をセットにした言葉がけ」。

たとえば、
「片づけなさい!」ではなく、
「あと5分で片づける時間ね。ブロックから片づける?それとも絵本からにする?」

――これだけで、子どもの反応がまったく違ってきます。

「予告」をすることで、子どもは“気持ちの切り替え”の準備ができます。
「選択肢」を与えることで、
“自分で決めた”という主体性と安心感が生まれます。

この2つの組み合わせは、発達支援でもよく使われる「選択的関わり(チョイス支援)」と呼ばれる手法です。
子どもの“自己決定感”を育てるだけでなく、癇癪や反抗の減少にもつながることが分かっています。

もし子どもがイヤイヤした時は、ママも無理に止めようとせず、
「じゃあ、あと3分で切り替えようね」と少し余裕を持たせて伝えるのがコツ。

「叱る」よりも「導く」。
この意識を持つだけで、親子の会話が“対立”から“協力”に変わっていきます。

ADHDタイプ別!子どもの特徴とおすすめの関わり方

ADHDといっても、実は「3つのタイプ」があることをご存じですか?
ひとくちに「ADHD」といっても、子どもによって行動の出方や困りごとはさまざま。

  • ぼんやりしていて集中が続かない「不注意型」
  • 落ち着きがなくて動きが止まらない「多動・衝動型」
  • 両方の特徴を持つ「混合型」

それぞれに行動の背景や得意・不得意が違うので、同じ対応ではうまくいかないこともあります。

ママが「タイプ別の特徴」を理解しておくことで、叱るより“支えられる関わり”ができるようになります。
ここでは、それぞれのタイプに合わせた関わり方のコツをやさしく紹介します。

【不注意型】集中が続かない・忘れ物が多い子への対応法

「話を聞いていないように見える」「何度も同じミスをする」「忘れ物ばかり」
――そんな子には、不注意型の特性が見られることがあります。

不注意型の子どもは、注意を“向け続ける力”が弱い傾向があります。
つまり、やる気がないのではなく、脳が刺激を受けづらく、集中が続かないんです。

たとえば、

  • 宿題中に鉛筆を持ったまま別のことを始めてしまう
  • 「ハンカチ持っていってね」と言われても出発時には忘れている
  • 周りの音や人の動きにすぐ気を取られてしまう

こうした行動は“怠けている”のではなく、ワーキングメモリ(短期記憶)と注意のコントロールが苦手なために起こります。

対応のポイントは、「整理」と「見える化」です。

  • 机の上には必要なものだけ置く
  • 持ち物リストを玄関に貼る
  • 宿題や支度はタイマーを使って時間を区切る
  • 「〇〇したら△△するね」と短い順番で伝える

そしてもうひとつ大切なのが、「ほめ方のタイミング」。
不注意型の子は、自分でも「また失敗した」と落ち込みやすいため、小さな“できた”をその場で認めてあげることが大事です。

「今日は自分で準備できたね」「最後まで座ってできたね」と声をかけるだけで、子どもの中に“自信の種”が育っていきます。

【多動・衝動型】思いついたらすぐ動く子を落ち着かせる工夫

「じっとしていられない」「話の途中で割り込む」「すぐ怒る・泣く」
――そんな子には、多動・衝動型の特性があるかもしれません。

このタイプの子どもは、思いついたことをすぐに行動に移してしまう傾向があります。
たとえば、授業中に突然立ち上がったり、友だちが話している途中で口を挟んだり。

これは、「我慢できない」わけではなく、脳の“ブレーキ機能”が発達の途中だからなんです。
つまり、「やっちゃダメ」と思っていても、行動が先に出てしまうのです。

このタイプの子には、“動くことを禁止する”より、“動いてもいい場面をつくる”ことが効果的。

  • 家では「勉強の前に体を動かす時間」をつくる
  • イスの下にバランスボールクッションを置いて、少し揺れながら集中できるようにする
  • 感情が高ぶったときは「深呼吸ゲーム」など、落ち着くためのスイッチを一緒に決めておく

また、感情が爆発しやすいときは、「落ち着きなさい!」よりも、
「びっくりしたね」「イヤだったね」と、感情を言葉にして代弁してあげるのがポイントです。

脳科学的にも、感情を言語化することで興奮が落ち着くことが分かっています。
つまり、ママが“気持ちの翻訳者”になってあげることで、子どもが自分で感情を整理する力が育っていくのです。

【混合型】両方の特徴がある子へのバランスの取れた支援法

ADHDの中でいちばん多いのが、この「混合型」タイプです。
「集中できないし、落ち着きもない」と感じる子は、このタイプの可能性が高いでしょう。

混合型の子どもは、その日によって行動パターンが違うことが多く、ママも「どう関わればいいの?」と悩みやすい傾向があります。

たとえば、

  • 昨日は集中できていたのに、今日はまったくダメ
  • 一瞬でやる気スイッチが切れる
  • 興奮したかと思えば、突然泣き出す

こうした波があるのは、脳内のエネルギー消耗が激しいため
頭が疲れやすく、感情のブレーキも効きづらくなるんですね。

対応のコツは、「気分と体調に合わせた柔軟な対応」です。
たとえば、

  • 今日は集中が難しそうなら、短時間で区切る
  • テーブル学習が無理そうなら、立って書いてもOK
  • 課題を減らす代わりに、「終わったら自分の好きなことをする時間」を作る

つまり、その日の“ベストを目指す”より、“その子のペースを大切にする”こと。

また、混合型の子は自己評価が下がりやすい傾向があるため、
「昨日よりも今日は少しできたね」と、比較は“他人”ではなく“過去の自分”とするのが効果的です。

「今日は○○ができたね」「ちょっと落ち着いて話せたね」――そんな小さな言葉が、
子どもの中に“成長してるんだ”という実感を育て、自信につながります。

ADHDの子育てで疲れたママへ|心を軽くする考え方とセルフケア

ADHDの子育ては、まるで毎日がジェットコースターのよう。
朝の支度だけでぐったり、夕方には怒って反省して、夜は「また言いすぎたかな…」と自分を責める――。

そんな日々を送っているママ、本当によく頑張っています。

ADHDの子どもは、感情の起伏が大きく、思いがけない行動をすることもしばしば。
それを支えるママの心も、“常に全力”で走り続けている状態なんです。

でも、子どもを支えるには、まずママ自身が元気でいることがいちばん大事。
ここでは、ママの心を軽くするための考え方と、今日からできるセルフケアのコツを紹介します。

「うまくいかない日」があっても大丈夫!完璧を求めない子育て

ADHDの子育てでは、計画通りに進む日なんてほとんどありません。
「また忘れ物…」「また怒っちゃった…」
そんな繰り返しの中で、「私の育て方が悪いのかも」と落ち込むママは本当に多いです。

でも、どうか覚えておいてください。
ADHDの子どもは、“失敗を通して学ぶタイプ”の子が多いんです。
何度も同じことを繰り返すのは、ママのせいでも、子どものせいでもありません。

そして、ママも「うまくいかない日」があって当然。
感情的になってしまう日があっても、それは“一生懸命関わっている証拠”です。

発達支援の現場でもよく言われるのが、
「100点の支援より、60点でも続けられる関わりを」。

つまり、“完璧じゃなくていい、続けられることが大事”なんです。

たとえば、

  • 「今日怒らなかった!」より、「怒っても最後にハグできた!」
  • 「全部できた」より、「昨日より1つできた!」
    そう思えたら、もうそれで十分◎。

子育ての中でいちばん大切なのは、ママが笑顔でいられる時間を少しでも増やすこと。
ママの笑顔は、どんな支援よりも子どもを安心させる“特効薬”なんです。

同じ悩みを持つママとつながるだけで気持ちが軽くなる理由

ADHDの子どもを育てていると、つい周りと比べて落ち込んでしまうこと、ありますよね。
「どうしてうちの子だけ…」「他のママみたいにできない」――そんな気持ちになるのは自然なことです。

でも、そんな時こそ思い出してほしいのが、「ひとりじゃない」ということ。

発達障害のある子を育てているママたちは、同じような悩みを抱えています。
たとえば、

  • 怒りたくないのに怒ってしまう
  • 学校とのやり取りに疲れてしまう
  • 兄弟へのフォローが難しい
    ――みんな、どこかで同じように悩んでいるんです。

だから、SNSや地域の支援グループ、オンラインコミュニティなどで、
同じ立場のママとつながるだけで気持ちがスッと軽くなることがあります。

人は、「共感」されるだけでストレスホルモンが減り、心が落ち着くという研究もあるほど。
つまり、「大丈夫、私もそうだよ」と言ってくれる仲間の存在は、何よりのメンタルサポートなんです。

そして、同じ経験をしているママ同士だからこそ、
「わかる!」「それやってみる!」と、具体的なアイデアやヒントももらえます。

孤独を感じた時は、勇気を出して“誰かに話す”ことから始めてみましょう。
それだけで、ママの心に少しだけ光が差し込むはずです。

専門家に相談するのは“弱さ”じゃない!早めの支援が未来を変える

「相談したら“親のせい”にされるかも」
「うちの子はまだ大丈夫」――そう思って、ひとりで抱え込んでいませんか?

でも、専門家への相談は“弱さ”ではなく、ママと子どもを守るための“強さ”です。

ADHDの子どもは、早くから支援につながることで、

  • 学校生活がスムーズになる
  • 自分の特性を理解して行動できる
  • 自信を持って人と関われるようになる
    など、将来の生きやすさが大きく変わります。

そして、ママ自身も「この対応でいいんだ」と安心できるようになります。

たとえば、相談先としては…

  • 発達支援センターや児童発達支援事業所
  • スクールカウンセラーや発達相談窓口
  • 小児科や発達外来、心理士などの専門家

いずれも、ママが「ちょっと気になる」と思った段階で相談してOKです。
診断を受けるかどうかよりも、“早めに環境を整えること”が大切。

支援につながることで、ママの負担も減り、子どもとの関係も良い方向に変わっていきます。

そして何より、相談することは「もう一人で抱えなくていいよ」というサイン。
その一歩が、ママと子どもの未来を穏やかに変えていきます。

まとめ|ADHDは10人に1人。特性を理解すれば子育てはもっとラクになる

ADHD(注意欠如・多動症)は、今では10人に1人が持つと言われるほど、決して珍しいものではありません。
つまり、「特別なこと」ではなく、「よくある個性のひとつ」なんです。

ママが子どもの行動の“背景”を理解することで、これまで「困った」と思っていたことが、
「なるほど、こういう理由だったのね」と少しずつ変わっていきます。

ADHDの子育ては、たしかに大変なことも多いけれど、理解と工夫で驚くほどラクになることもたくさんあります。
この章では、これまでのポイントを整理しながら、ママの心を軽くする3つの考え方をお伝えします。

ADHDは「特別」ではなく「多様性のひとつ」

まず伝えたいのは、ADHDの子どもは“問題のある子”ではないということ。
彼らは、ただ「脳の働き方がちょっと違う」だけなんです。

たとえば――
・まわりの子がすぐにできることに時間がかかる
・じっと座っていられない
・思いついたらすぐ行動してしまう

これらはすべて、「努力が足りない」のではなく、脳の刺激の受け方や集中の仕組みが違うために起きる行動です。

つまり、ADHDは“病気”ではなく“脳の個性”
最近では「ニューロダイバーシティ(神経の多様性)」という考え方が広がっていて、
「みんな同じでなくていい」「違いがあるからこそ面白い」という視点が世界的にも注目されています。

ママが「うちの子はダメなんじゃなくて、こういうタイプなんだ」と理解できるだけで、
子どもの見え方がガラッと変わります。
それは、子どもにとっても「受け入れられている」という安心感につながり、自己肯定感を育てる大きな一歩になります。

子どもを変えるより、環境と関わり方を変えることが大切

ADHDの子どもに対して、「どうしたら落ち着いてくれるんだろう」「何回言っても聞かない…」と悩むママは多いですよね。
でも、実は“子どもを変える”より、“環境と関わり方を変える”ことのほうがずっと効果的なんです。

たとえば、

  • 忘れ物が多いなら、「忘れないように」と叱るより、“忘れない仕組み”を一緒に作る
     →玄関に持ち物ボードを貼る、リュックに色で目印をつけるなど。
  • 落ち着きがないなら、「じっとしなさい」と言うより、“動いても集中できる環境”を作る
     →バランスボールクッションや短時間学習などで工夫する。
  • 感情的になりやすいなら、「怒っちゃダメ!」ではなく、“落ち着くための合図”を親子で共有する

つまり、子ども自身を責めるのではなく、行動を起こしやすい環境に整えることで、
自然と「できること」が増えていくんです。

そして、もうひとつ大事なのが、ママ自身の視点の切り替え。
「どうしてできないの?」から、「どうしたらできるかな?」に変えるだけで、
ママのイライラがぐっと減り、子どもの笑顔も増えます。

ママが一人で抱え込まず、支援を活用することで毎日が変わる

ADHDの子育てをしていると、
「私が頑張らなきゃ」「人に頼ったら負け」
そんなふうに思ってしまうママも少なくありません。

でも本当は、支援を頼ることは“弱さ”ではなく“愛情のかたち”です。

たとえば、

  • 発達支援センターで相談する
  • 児童発達支援・放課後等デイサービスを利用する
  • スクールカウンセラー特別支援コーディネーターに相談する

これらは、ママが“楽をするため”ではなく、子どもが安心して成長できる環境を整えるための一歩です。

支援を活用すると、専門家から「家庭でできる工夫」や「子どもに合った接し方」を具体的に教えてもらえます。
結果的に、ママのストレスが減り、子どもの自己肯定感が上がるという良い循環が生まれます。

また、専門家とのつながりは、「何かあったら相談できる場所がある」という安心感にもなります。
それがママの“心の支え”となり、日々の子育てに余裕が生まれるのです。

だからこそ、一人で抱え込まないでください。
“誰かに頼る”という選択は、子どもと自分を守るための大切な力です。

以上【ADHDは10人に1人!子どもの特性を理解して育児をラクにする方法】でした

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約30年の間に培った障害福祉分野での知識や経験を、このブログで余すことなくお伝えしていきます。
所持資格:社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員等

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