ADHDの子どもの「言い訳多い」行動とは?よくある場面と親の悩み
「また言い訳してる…」「ちゃんとやってって言ったのに!」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?
ADHD(注意欠如・多動症)の特性をもつ子どもたちは、日常の中でよく“言い訳しているように見える”ことがあります。でも実はそれ、自分を守るための行動だったりするんです。
ここでは、よく見られるシーンや、親が感じやすいストレスのパターンを一緒に見ていきましょう。
言い訳が多いと感じる典型的なシーン5つ
ADHDの子どもが“言い訳多いな…”と感じる場面には、いくつかの共通点があります。日常生活の中でも「あ〜あるある!」と感じるものばかりかもしれません。
① 宿題をしないとき
「やるつもりだったのに忘れた!」
→ ADHDの子どもは“やる気がない”のではなく、「今やる」という切り替えが苦手なんです。頭の中で“やる予定”だったことが、他の刺激にすぐ上書きされてしまうことも。
② 片付けをしないとき
「ママがあとでって言ったから!」
→ 実際は「あとで」と言っていない場合もあります。でも、本人の中ではそう聞こえていたり、記憶があいまいになっていることもあります。
③ 約束を守れなかったとき
「忘れてたけど、ちゃんとするつもりだった!」
→ ADHD特性のある子は、時間の感覚や順番を覚えるのが苦手なことがあります。悪気があるわけではなく、“今この瞬間”のことに集中してしまうんです。
④ 忘れ物をしたとき
「ママが入れてくれると思ってた!」
→ 「自分で用意する」という段取りが頭の中で整理しきれず、つい“人のせい”のような言い方になってしまうことがあります。これは、焦りや恥ずかしさから出る防衛反応なんですね。
⑤ トラブルが起きたとき
「ぼく悪くない!○○くんが先にやった!」
→ 責められる状況になると、頭の中が真っ白になり、自分を守る言葉だけが先に出てしまうこともあります。落ち着いた後で「本当は自分も悪かった…」と気づくケースも多いんです。
こうした「言い訳のような言葉」は、実は“困ってる”や“焦ってる”のサイン。
大人から見ると“口ごたえ”に見えても、子どもにとっては「助けて」のサインであることが少なくありません。
「また言い訳!」と感じたときの親の心理と悪循環
とはいえ、毎日のように「言い訳」を聞かされると、親だってイライラしますよね。
「なんで素直に謝れないの?」「言い訳ばっかりで疲れる…」と感じるのは当然のことです。
でも実は、そのイライラが子どもの防衛スイッチをさらに押してしまうことがあります。
たとえばこんな流れです。
- 親が「言い訳しないの!」と注意する
- 子どもが責められたと感じて防衛的になる
- さらに言い訳を重ねる
- 親の怒りが強まり、会話がエスカレート
…という負のループ。
どちらも悪気がないのに、どんどん関係がぎくしゃくしてしまいます。
ADHDの子どもは、注意されると脳の「ストップ機能(前頭葉)」が一時的に働きにくくなるといわれています。つまり、叱られた瞬間に思考が止まり、「どう言い訳すれば怒られないか」だけを考えてしまうんです。
この状態では、子どもは反省ではなく“防衛”をしているだけ。
いくら叱っても改善しないのは、心の準備ができていないからなんですね。
つまり、「また言い訳してる!」と感じたときこそ、
「何か困ってるのかも?」と一呼吸おくチャンス。
子どもの“防衛本能”の裏には、「わかってもらいたい」「怒られたくない」という素直な気持ちが隠れています。
そこに気づけると、ママ自身も少しラクになりますし、子どもとのやりとりがぐっと穏やかになりますよ。
ADHDの子が言い訳多い理由|3つの心理と発達特性
「どうしてうちの子は、すぐ言い訳するんだろう?」
そう思ったこと、ありますよね。
でも実は、“言い訳”にはちゃんと理由があります。
ADHDの子どもたちは、脳の特性や過去の経験から「自分を守るための言葉」を自然に出しているんです。
ここでは、その背景を3つの視点から見ていきましょう。
① 失敗から自分を守る“自己防衛の反応”
ADHDの子どもは、日常の中で「失敗体験」がとても多いです。
「また忘れた」「なんでできないの」「約束守れないね」――こうした言葉を何度も言われるうちに、「自分はダメなんだ」という気持ちが積み重なっていきます。
その結果、叱られそうな場面になると、
「でも○○だったから!」
「本当はやろうと思ってたのに!」
と、“正当化する癖”がついてしまうんです。
これを心理学では「自己防衛反応」と呼びます。
つまり、子どもが言い訳をしているのは、「怒られたくて」ではなく、“これ以上自信を傷つけたくない”というサインなんです。
たとえば大人でも、職場で何度も注意されたら、「でも自分なりに頑張ってるのに…」って思わず反論したくなりますよね。
子どもも同じで、自分を守るために“言い訳”という形で気持ちを整理しようとしているのです。
そして、否定される回数が増えるほど、自己肯定感は下がり、結果として「言い訳」が増えるという悪循環に。
だからこそ、「また言い訳してる!」と決めつけるよりも、「この子、今ちょっと自分を守ろうとしてるんだな」と受け止めてあげることが第一歩になります。
② ADHD特性による“注意・記憶・感情のコントロールの難しさ”
ADHDの子どもは、脳の中で「注意」「記憶」「感情」を調整する力が少し苦手です。
そのため、“やるつもりだった”という記憶と“やっていない”という現実の区別があいまいになることがあります。
たとえば、宿題をやり始めようと思った瞬間に、テレビの音やおもちゃに気を取られてしまう。
でも頭の中では「やるつもりだった」という意識が残っているから、注意されたときに「ちゃんとやろうと思ってたもん!」という言葉が出る。
これがまさに、“言い訳”に聞こえるけど、実は脳の働きによる誤差なんですね。
また、ADHDの子は感情のブレーキをかけるのが苦手なことも多く、焦りや怒りが先に出てしまうこともあります。
親に注意されたときに「うるさい!」と言ってしまったり、泣きながら「ぼく悪くない!」と叫んでしまったり。
これは「冷静に話せない=悪い子」ではなく、感情を整理する前に口が先に動いてしまう特性によるものです。
一度感情が爆発すると、脳がフリーズしてしまうため、「どう説明すればいいか」もわからなくなるんです。
だから、子どもが言い訳しているように見えても、実は“言葉よりも脳の処理が追いついていない状態”なんですね。
③ “怒られる恐怖”と“誤解される不安”
ADHDの子は、小さい頃から注意されたり、誤解されたりする経験が多いです。
その積み重ねで、「どうせ怒られる」「またわかってもらえない」と感じるようになり、“先に防御する”習慣が身についてしまうことがあります。
たとえば、まだ何も聞かれていないのに
「違うもん!ぼく悪くない!」
と言うとき。
それは、すでに心の中で「怒られる予感」がしているから。
実際、ADHDの子は叱られた経験を“強く記憶”する傾向があります。
そのため、似たような状況になると、体が反射的に“防衛モード”に入ってしまうんです。
そしてもうひとつの理由が、“誤解される不安”。
自分の気持ちや行動をうまく言葉で説明できないため、
「どうせ言っても伝わらない」
「ママに怒られるだけ」
と感じて、会話そのものを避けてしまうこともあります。
結果として、親子の対話がどんどん減り、子どもはますます“言い訳”を盾にして自分を守るようになります。
でも裏を返せば、それは「本当はわかってほしい」「信じてほしい」という気持ちの表れでもあります。
「怒られたくない」よりも、「理解されたい」という想いのほうがずっと大きいのです。
叱る前に見直したい!ADHDの子とのコミュニケーションの基本
ADHDの子どもは、叱られることにとても敏感です。
「注意してもすぐに反発される」「素直に聞けない」と感じる場面、よくありますよね。
でも実は、親の“伝え方”や“聴き方”を少し変えるだけで、子どもの反応は驚くほど変わるんです。
ここでは、怒る前に思い出してほしい3つのコミュニケーションの基本を紹介します。
① 「なんでやらないの?」より「どうしたかったの?」
つい口から出てしまう言葉、ありますよね。
「なんでやらないの?」「どうして約束守れないの?」――でもこの“なんで”という質問、ADHDの子にとってはプレッシャーの言葉になりやすいんです。
「なんで?」と聞かれると、子どもは“原因を説明しなきゃ”と思ってしまいます。
でも、ADHDの子どもは「自分でも理由がよくわからない」ことが多いんです。
その結果、焦って「だって…」「違うもん!」と“言い訳モード”に入ってしまう。
そこでオススメなのが、「どうしたかったの?」という質問。
たとえば――
- ✕「なんで宿題やらなかったの?」
- ◎「どうしたかった?疲れてたのかな?」
こう言い換えるだけで、子どもは“責められてない”と感じて心を開きやすくなります。
質問の仕方ひとつで、反応が180度変わるんです。
この「どうしたかった?」には、“あなたの気持ちを聞かせてね”というメッセージが含まれています。
それが、子どもの心に「ママは怒りたいんじゃなくて、わかってくれようとしてる」と伝わり、信頼関係を取り戻す第一歩になります。
② 行動の“理由”を探るのではなく“背景”を理解する
「なぜそんなことをしたの?」と“理由”を追及すると、子どもはますます口を閉ざしてしまいます。
それよりも大切なのは、行動の“背景”を理解すること。
たとえば、宿題をやらなかった理由を「怠け」と決めつけてしまうと、叱るしかなくなりますよね。
でも、ADHDの子どもの場合、
- 注意が散りやすくて途中で忘れた
- 頭の中で順番を組み立てるのが苦手
- “やらなきゃ”と思っても体が動かない
といった“脳の特性”が関係していることが多いんです。
つまり、「やりたくない」ではなく、「うまくできない」だけなんです。
だから親としては、
「怠けてる」のではなく「困っている」だけかもしれない
という視点で見てあげることがとても大事。
たとえば、
「やる気がないんじゃなくて、やり方がわからないのかも」
「集中する時間が短いから、少しずつ区切ってやった方がいいのかも」
といった“仮説”を立てて考えるだけで、叱るより支えられる関係になります。
ADHDの子どもにとって、親が“責める人”から“理解してくれる人”に変わることが、成長の大きな支えになります。
③ 感情ではなく“事実”で伝える
親だって人間です。
何度も同じミスをされると、イライラもたまりますよね。
でもここで感情のままに叱ると、子どもは“防衛反応”を強めてしまうんです。
たとえば、
- ✕「また忘れたの!?何回言えばわかるの!」
と言われると、子どもは“責められた”と感じて頭が真っ白に。 - ◎「今日はプリントを持って行けなかったね。次はどうしたら持って行けそう?」
と“事実+次の提案”で伝えると、冷静に考える余地ができます。
ADHDの子どもは、感情的な言葉を受け取ると、すぐに“自分を守るモード”に入ってしまうんです。
でも、事実だけを淡々と伝えると、頭の中で整理がしやすくなり、次の行動を考えられるようになります。
「できなかったこと」よりも、「次にどうするか」を一緒に話す。
それだけで、怒りのやり取りから“成長の会話”に変わります。
ADHDの子が言い訳多い時に効果的な親の声かけ5選【心理+実例つき】
ADHDの子どもが“言い訳ばかり”に見えるとき、ついイライラしてしまうものですよね。
でもその裏には、「怒られたくない」「わかってほしい」という気持ちが隠れています。
そんな時こそ、親の声かけが大きな支えになります。
ここでは、日常の中で今日から使える“言い訳を減らすための声かけ5選”を紹介します。
どれも、心理的な背景を踏まえた「やさしく効果的な言葉」です。
① 「困ってるのかも?」と視点を変える言葉
まず大切なのは、“やる気がない”ではなく“困っている”と考えてみること。
たとえば、宿題をやらない子に対して、
「なんでやらないの!」と言いたくなるところを、
「やりたくなかったの?それとも難しかった?」
と聞いてみるだけで、子どもの反応はがらっと変わります。
この言葉には、「あなたを責めていないよ」「話を聞きたいよ」というメッセージが込められています。
すると、子どもも少しずつ心を開いて、
「だって漢字がむずかしかったんだもん…」
「やろうと思ったけど、どうすればいいかわかんなくて」
と本音を話してくれることがあります。
共感の第一歩は、“否定ではなく気づきを促すこと”。
「できない=悪いこと」ではなく、「困ってるのかもしれない」と受け止めてあげると、子どもは安心して次の行動を考えられるようになります。
② 「次はどうしたい?」と選ばせる言葉
ADHDの子どもは、“今やる”への切り替えが苦手です。
「宿題やりなさい!」と命令されると、拒否反応が出てしまうこともあります。
そこでオススメなのが、
「今やる?それとも5分後にやる?」
という“選ばせる声かけ”。
このように選択肢を与えると、子どもは「自分で決められた」と感じて行動しやすくなります。
人は誰でも、強制されるより自分で選んだほうがやる気が出るもの。
ADHDの子どもも同じです。
また、「5分後」と言われると、心の準備を整える時間にもなります。
「やらなきゃ…」ではなく、「そろそろやろうかな」と思えるようになるんですね。
“選べる環境”が安心と自信を育てる。
ちょっとした声かけの工夫で、言い訳が減り、「自分から動けた!」という成功体験につながります。
③ 「ここまではできたね!」と具体的に褒める言葉
ADHDの子は、失敗体験が多い分、“できたこと”を意識するのが苦手です。
そのため、親が「途中までできたね」「片付け始めたのえらいね」と小さな成功を見つけて言葉にすることがとても大切です。
たとえば、
- 「全部は終わらなかったけど、1ページできたね」
- 「ランドセル開けたの、すごい進歩だね!」
こうした具体的な褒め方は、「自分はできる!」という感覚(自己効力感)を育てます。
「まだできてない」より「ここまではできた」に注目することで、子どもは“自分にもできる部分がある”と気づき、言い訳をしなくても自信を保てるようになります。
成功体験を“可視化”することが、言い訳を減らし、前向きな行動を増やす鍵なんです。
④ 「一緒に考えよう」と寄り添う言葉
ADHDの子どもは、問題が起きたときに「どうすればいいか考える力(問題解決力)」を育てにくい傾向があります。
そんなときこそ、
「次どうしたらうまくいくかな?一緒に考えよう」
という言葉がけがとても効果的です。
この声かけには、
「失敗してもいいよ」「一緒に乗り越えよう」
という安心感が含まれています。
親が“叱る人”から“伴走する人”に変わることで、子どもは学ぶ姿勢を取り戻します。
失敗しても「次どうしたらいいか」を一緒に考える経験が増えるほど、
子どもは「失敗=終わり」ではなく「改善できるチャンス」だと学びます。
つまり、「怒られないように言い訳する子」から、「次にどうすればいいか考えられる子」へと変わっていくんです。
この変化を支えるのが、“寄り添う姿勢”なんですね。
⑤ 「もう一度チャンスをあげる」と再挑戦を促す言葉
ADHDの子どもは、失敗を強く記憶しやすく、「どうせまた怒られる」「もう無理」と落ち込みやすい傾向があります。
だからこそ、“やり直しOK”の経験を積ませてあげることがとても大事。
たとえば、
「今度はこうしてみようか?」
「じゃあ、もう一回チャンスあげるね」
と声をかけてみてください。
この一言で、子どもの心に「失敗しても大丈夫」「もう一回やってみよう」という気持ちが芽生えます。
再挑戦を許される経験は、“諦めない力”を育てる栄養です。
逆に、毎回きつく叱られてしまうと、「どうせやってもダメ」と学習してしまいます。
「次はできるかも」「やり直してみよう」――
そんな“前向きな気持ち”を引き出す声かけこそが、言い訳を減らす一番の近道です。
ADHDの子どもが言い訳をしてしまうとき、親の声かけ次第でその後の行動は大きく変わります。
| 声かけの目的 | 効果 |
|---|---|
| 「困ってるのかも?」と共感する | 否定から理解へ。安心して本音が出せる |
| 「次はどうしたい?」と選ばせる | 主体性が生まれ、切り替えやすくなる |
| 「ここまではできたね!」と褒める | 自信がつき、言い訳が減る |
| 「一緒に考えよう」と寄り添う | 問題解決力が育つ |
| 「もう一度チャンスをあげる」と励ます | 失敗を恐れず挑戦できるようになる |
子どもが変わるのは、“完璧な声かけ”をしたときではなく、「わかってもらえた」と感じたとき。
ママのたった一言が、子どもの自己肯定感をぐっと引き上げるきっかけになります。
ADHDの子に逆効果!避けたいNGな言葉かけ3選
どんなに優しいママでも、毎日のやりとりの中でついイライラして言ってしまう言葉ってありますよね。
でも、ADHDの子どもにとっては、その一言が“防衛反応”を強めたり、自信を失わせたりするきっかけになってしまうことがあります。
ここでは、つい言ってしまいがちなNGワードを3つ紹介します。
もちろん「言っちゃダメ!」という話ではなく、「言い換えのヒント」も一緒にお伝えしますね。
① 「言い訳しないの!」と責める
ADHDの子どもが「だって…」「でも…」と口にすると、親としてはつい「言い訳しないの!」と言いたくなりますよね。
でもこの言葉、実は逆効果なんです。
ADHDの子にとって、“言い訳”は自分を守るための自然な反応。
それを「やめなさい!」と否定されると、“防衛モード”がさらに強化されてしまうんです。
つまり、責めれば責めるほど――
子どもは心を閉ざす
会話が途切れる
「どうせ何言っても怒られる」と感じる
という悪循環に。
脳科学的にも、ADHDの子どもは「怒られる」などの強い刺激で前頭葉(思考を司る部分)の働きが低下しやすいことがわかっています。
つまり、注意された瞬間に思考が止まり、「どうすればいいか」考えられなくなってしまうんですね。
代わりに使えるのは、こんな声かけです。
「そっか、そう思ったんだね。でもどうすればよかったと思う?」
責めるよりも、“気づきを引き出す”声かけが効果的です。
「怒る」より「理解する」ことで、会話のドアがゆっくり開いていきます。
② 「○○ちゃんはできてるよ」と比較する
これも、多くのママがつい言ってしまいがちな一言。
「○○ちゃんはちゃんと宿題してるよ」「弟はできたのに、どうしてあなたは…?」
でも、ADHDの子にとって“比較”は毒のような言葉になってしまいます。
なぜなら、ADHDの子は自分でも「できないのはわかってる」んです。
それなのに他の子と比べられると、
「ぼくはダメな子なんだ」「どうせ頑張っても無理」
と感じて、自己否定が強まってしまうのです。
特にADHDの子どもは、感受性が豊かで、他人の評価を敏感に感じ取る傾向があります。
そのため、ほんの軽い比較でも深く傷つきやすいんですね。
代わりに使えるのは、こんな言葉。
「昨日より早くできたね!」
「前より自分でやろうとしたの、すごいね」
他の誰かではなく、“過去の自分と比較する”ことがポイント。
「○○ちゃんみたいに」ではなく、「昨日の自分より」――それが、子どものモチベーションを育てる魔法の言葉です。
③ 「もう何回言わせるの!」と感情的に叱る
毎日のように同じ注意をしていると、思わず口から出てしまいますよね。
でも、ADHDの子にとってこれは“パニックスイッチ”を押す言葉になることがあります。
ADHDの脳は、感情の刺激にとても敏感。
親の声のトーンが強くなったり、表情が険しくなったりするだけで、子どもは瞬時に「怒られた!」と感じてしまいます。
すると、脳の“危険を察知する部分(扁桃体)”が働き、「逃げる」「黙る」「泣く」「逆ギレする」などの防衛反応が出てしまうんです。
つまり、叱れば叱るほど、子どもの頭の中は混乱していき、話の内容がまったく入らなくなってしまうのです。
感情的に叱る代わりに、冷静に“事実”を伝えることが大切です。
「今日はプリントを出せなかったね。明日はどうしたら出せそう?」
このように、“できなかった事実+次の提案”で伝えると、子どもは考える余裕を持てます。
怒られた恐怖ではなく、「次どうすればいいか」という建設的な思考が生まれるんです。
| NGワード | 子どもへの影響 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 「言い訳しないの!」 | 防衛反応が強まり、会話が止まる | 「そう思ったんだね。次どうする?」 |
| 「○○ちゃんはできてるよ」 | 自己否定・やる気の低下 | 「昨日より上手くできたね!」 |
| 「もう何回言わせるの!」 | 感情刺激で思考停止 | 「今日はできなかったね。次どうする?」 |
どれも、ママが悪いわけではありません。
むしろ、「言っちゃうのも当然」なんです。
毎日子育てを頑張っている証拠だから。
でも、その中で少しずつ「伝え方」を変えていくことが、ADHDの子の成長をぐんと助けます。
叱るよりも、理解する。
比較するより、認める。
感情で言うより、事実で伝える。
それだけで、子どもが「ママに話しても大丈夫」と感じるようになり、“言い訳”の数も自然と減っていきますよ。
家庭でできる“言い訳を減らす”環境づくりと支援の工夫
ADHDの子どもが「言い訳ばかり」に見えるとき、実は家庭環境が“安心して話せる空気”になっているかどうかが大きく関わっています。
叱るよりも「どうしたらうまくいくかな?」を一緒に考えられる環境が整うと、子どもは“言い訳”をしなくても自分の気持ちを話せるようになるんです。
ここでは、家庭で簡単に取り入れられる「環境づくり」と「親の支援の工夫」を3つ紹介します。
① 「失敗しても大丈夫」と言える安心な雰囲気を
ADHDの子どもにとって、家庭は「安心できる避難場所」であることがとても大切です。
なぜなら、学校や園など外の世界では、失敗体験が多くなりがちだから。
家でまで責められてしまうと、子どもはどんどん「防衛的」になってしまいます。
つまり、安心できる家庭=挑戦できる環境なんです。
たとえば、
- 「失敗しても大丈夫だよ」
- 「次にどうすればうまくいくか考えようね」
- 「うまくいかなくても、がんばったのは知ってるよ」
こんな声かけがあるだけで、子どもは安心して新しいことに挑戦できるようになります。
また、“叱らない時間”を意識的に増やすことも大事です。
「今週は“怒らない日”を1日つくってみよう」など、小さな目標から始めてみるのもおすすめ。
叱られる時間が減ると、子どもの自己表現がどんどん増えていきます。
「言い訳が減る」のは、実は「安心して話せるようになった証拠」。
“失敗しても受け止めてもらえる”という安心感が、子どもの言葉を変えていくのです。
② 「見える化」で“忘れた”を減らす工夫
ADHDの子どもが言い訳をしてしまう背景には、「やることを忘れた」「順番を覚えられなかった」といった“記憶の弱さ”が関係していることがあります。
そこでおすすめなのが、「見える化」です。
たとえば、こんな工夫が効果的です↓
- タスクカード:やることを1枚ずつカードにして、終わったら裏返す
- タイマー:時間の流れを「見える化」して、切り替えをサポート
- スケジュールボード:朝の準備や帰宅後の流れを絵や写真で貼っておく
これらの“見える仕組み”を使うことで、子どもは「やらなきゃ」と頭で覚えるよりも、目で確認して行動できるようになります。
たとえば、「宿題やった?」「まだやってないの?」と声をかける代わりに、
「カードまだ裏返ってないね」などと視覚的な合図で伝えると、子どももプレッシャーを感じにくくなります。
また、「忘れた!」という失敗を減らすことで、“言い訳をする必要がなくなる”という効果もあります。
ADHDの子にとっては、安心して動ける“仕組み”が心の安定にもつながるんです。
ポイントは、「注意する仕組み」ではなく、「支える仕組み」をつくること。
ママが“見張る人”ではなく、“助ける人”になれる環境を整えていきましょう。
③ 親自身の“イライラ対策”も大切
ADHDの子育てで一番疲れるのは、「わかってるのに、また同じことをしてしまう」とき。
頭では理解していても、つい感情的になってしまう…そんな瞬間、ありますよね。
でも、親が落ち着いていられることが、子どもの安定にも直結します。
そこでおすすめなのが、心理学でも有名な「6秒ルール」。
怒りのピークは6秒間と言われており、その間に深呼吸を3回するだけで感情の波が和らぐんです。
「6秒、深呼吸してから話す」――たったこれだけでも、子どもへの伝え方がずいぶん変わります。
また、どうしてもイライラが収まらない時は、
「今は落ち着いてから話そう」とその場を離れるのもOK。
大人が感情をコントロールする姿を見せること自体が、子どもにとって最高の手本になります。
ADHDの子どもは、親の感情の変化にもとても敏感です。
だからこそ、ママが落ち着いているだけで、子どもも「大丈夫なんだ」と安心できるんです。
「完璧な親」よりも、「感情をうまくリセットできる親」でいましょう。
それが、子どもの“言い訳”を減らす一番の近道です。
| 環境の工夫 | ねらい |
|---|---|
| 「失敗しても大丈夫」と言える家庭 | 安心感が“挑戦する力”を育てる |
| 「見える化」で行動を支援 | 忘れやミスを減らして言い訳が不要に |
| 親の“イライラ対策”を意識 | 感情の安定が子どもの安心につながる |
家庭での関わりは、叱るよりも「支える」「整える」「待つ」がキーワード。
“完璧を目指さない子育て”が、子どもにとって一番の安心になります。
家庭だけじゃない!学校や支援機関と連携するポイント
ADHDの子どもを育てていると、「家庭での関わり方を工夫しても、学校ではうまくいかない…」と感じること、ありませんか?
それもそのはず。子どもは、家庭と学校でまったく違う環境・刺激・ルールの中で生活しているからです。
だからこそ大切なのが、「家庭だけで抱え込まないこと」。
学校や支援機関とつながって、みんなで一貫したサポートをしていくことが、子どもの安心と成長を支えるカギになります。
先生・支援者との共有で子どもを一貫サポート
「先生にうまく伝えられない」「どこまで話していいのかわからない」――そんなママの声をよく聞きます。
でも、先生や支援者は、“家庭の情報”があってこそ、より適切な支援ができるんです。
たとえば、
- 家では集中できるけど、学校では注意がそれる
- 指示は一度では入らないけど、絵や文字にすると理解できる
- 感情的になると手が止まるけど、落ち着く時間を取ると再開できる
こうした情報は、家庭と学校で“対応方針を統一”するうえでとても大切です。
学校で「叱る」対応になってしまうと、せっかく家庭で築いた安心感が崩れてしまうこともあります。
反対に、家庭と学校が同じ方向を向いて支援できれば、子どもは「どこでも理解してもらえる」と感じて、落ち着いて行動できるようになります。
つまり、一貫した対応=子どもの安心につながる支援なんです。
先生に伝えるときは、できるだけ「困っている点」と「うまくいっている工夫」の両方を伝えるのがおすすめです。
例:「家では“タイマーを使うと”集中できています」
例:「叱られると黙ってしまうことがありますが、声をかけずに少し待つとうまく再開できます」
また、支援機関(児童発達支援・放課後等デイサービスなど)にも、
「家庭での様子」や「学校での困りごと」を共有しておくと、支援計画に反映してもらいやすくなります。
そして忘れてはいけないのが、“子どもの強み”も一緒に伝えること。
たとえば、
- 興味があることにはとことん集中できる
- 想像力が豊かで発想がユニーク
- 人懐っこくて優しい
など、「その子らしさ」こそ支援の出発点になります。
苦手だけでなく「得意」も共有することで、先生や支援者もより前向きな関わりができるようになります。
頼れる相談先まとめ
ADHDの子を育てるうえで、家庭や学校だけでは限界を感じる場面もあります。
そんなときに頼れる相談先をいくつか知っておくと、ママの気持ちもずっとラクになります。
■ 発達支援センター
市区町村にある「発達支援センター」では、子どもの発達相談や支援方法のアドバイスが無料で受けられます。
専門の心理士さんや言語聴覚士さんがいて、「家庭・学校・支援機関をつなぐハブ的存在」になってくれることも。
初めて相談する場所として、もっとも利用しやすい窓口です。
■ 放課後等デイサービス
小学生以上の子どもを対象に、放課後や休日に生活・学習支援をしてくれる福祉サービスです。
ADHDの子どもに特化した教室も多く、「自己肯定感を育てる」「感情のコントロールを学ぶ」など、専門的な療育を受けられます。
家庭と学校の中間のような環境で、社会性を育てる場としてもおすすめです。
■ スクールカウンセラー・心理士
学校に配置されているスクールカウンセラーや心理士は、子どもの心理面のサポートをしてくれる専門家です。
「担任の先生には言いづらいこと」も、安心して相談できます。
また、カウンセラーを通して先生に伝えてもらうことで、家庭の思いを上手に届ける橋渡しをしてくれることもあります。
| 相談先 | 主な役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| 発達支援センター | 発達相談・支援計画の助言 | 専門家による無料相談が可能 |
| 放課後等デイサービス | 学習・生活・感情面の療育 | 自己肯定感や社会性の向上に◎ |
| スクールカウンセラー・心理士 | 心理的支援・学校との橋渡し | 家庭と学校の間を調整してくれる |
子育ては、ひとりで抱え込むとどんどん視野が狭くなってしまいます。
でも、先生・支援者・専門機関とつながることで、子どもを中心に“チーム”で支えることができるようになります。
ママが「助けて」と言えることも、立派な支援の一歩。
家庭・学校・支援機関の連携こそ、ADHDの子どもの可能性を広げる大きな力になりますよ。
まとめ|「言い訳」は悪いことじゃない。ADHDの子が安心して話せる関係づくりを
「言い訳ばかりして…」
そんなふうに感じるとき、ママは少し肩の力を抜いて、“言い訳=悪いこと”と決めつけないで見てみてください。
実は、ADHDの子どもの「言い訳」には、不安・混乱・自分を守ろうとする気持ちが隠れていることが多いんです。
怒られたくない、わかってほしい、どう言えばいいかわからない――そんな心のSOSが「だって」「でも」として出てくるんですね。
つまり、“言い訳”は、まだうまく気持ちを言葉にできないサイン。
悪いことではなく、成長の途中にある自然な反応なんです。
「怒る」から「理解する」に変えるだけで、信頼関係は深まる
子どもが何かうまくいかなかったとき、つい「なんでできないの?」「言い訳しないの!」と言いたくなりますよね。
でも、ここで大切なのは、“怒る”よりも“理解する”視点に変えること。
たとえば、
「なんでやらなかったの?」→「どうしたかったの?」
「また忘れたの?」→「どんなふうにすれば覚えやすいかな?」
たった一言の変化で、子どもの反応は180度変わります。
親が受け止めてくれると感じると、子どもは防衛ではなく“本音”を話せるようになるんです。
今日から使える5つの声かけを再確認!
ここで、これまで紹介してきた“言い訳を減らす”ための5つの声かけをおさらいしておきましょう
1️⃣ 「困ってるのかも?」と視点を変える言葉
→ 子どもの“できない”の裏にある困りごとを見つけるきっかけに。
2️⃣ 「次はどうしたい?」と選ばせる言葉
→ 行動の主導権を子どもに返してあげることで、自信と安心が生まれます。
3️⃣ 「ここまではできたね!」と具体的に褒める言葉
→ 小さな成功を“見える形”で積み上げると、自己肯定感がアップ。
4️⃣ 「一緒に考えよう」と寄り添う言葉
→ 問題解決を“共に考える経験”が、社会性や思考力を育てます。
5️⃣ 「もう一度チャンスをあげる」と再挑戦を促す言葉
→ “やり直しても大丈夫”という安心感が、前向きな気持ちを育てます。
この5つの声かけは、どれも特別な言葉ではありません。
でも、「責める」から「支える」に変わる魔法のスイッチです。
“言い訳”は成長のはじまり
子どもが「だって…」と口にしたとき、それはまだ整理できていない感情のかけらです。
そのかけらを受け止め、言葉にしていく過程こそが、自己理解の第一歩なんです。
だから、ママができるいちばんの支援は――
*「言い訳してもいいよ」「失敗しても大丈夫」と伝えてあげること。
子どもにとって、理解してくれる親の存在は、どんな支援よりも大きな安心になります。
そしてその安心が、やがて「自分の気持ちを言葉にできる力」「素直に話せる力」へとつながっていくのです。
子育ては、正解がないからこそ難しい。
でも、完璧な親よりも、「寄り添おう」と努力している親の姿が、子どもにとっての一番の安心です。
“言い訳”は、成長の途中にある「助けて」のサイン。
そのサインを見逃さず、優しく受け止めてあげることで、子どもはきっと少しずつ変わっていきます。
今日からは、「言い訳してもいいよ。話してくれてありがとう。」
そんな気持ちで、子どもとの会話を始めてみませんか?
以上【ADHDの子が言い訳多いのはなぜ?叱る前に試したい効果的な親の声かけ5選】でした


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