「手を何度も洗う」「確認が止まらない」ADHD+強迫性障害の子への接し方

目次

はじめに:ADHDと強迫性障害の“ダブル特性”で悩むママへ

何度も確認しないと気がすまない」「手を何度も洗う」——。
そんな行動を見て、「どうしてこんなにこだわるの?」「心配しすぎじゃない?」と感じたことはありませんか?

実は、これらの行動はADHD(注意欠如・多動症)強迫性障害(OCD)の両方の特性が関係していることがあります。どちらか片方でも大変なのに、2つの特性が重なると、子どもも親も“頭も心も休まらない状態”になってしまうことがあるんです。

ADHDの子は、「気になることを頭から切り替えにくい」「忘れたらどうしよう」といった不安を感じやすい傾向があります。一方、強迫性障害は「失敗したらどうしよう」「ちゃんとやらなきゃ」という不安を和らげようとして、同じ行動を何度も繰り返すのが特徴。
この2つが合わさると、「確認をしないと落ち着かない」「洗わないと不安でたまらない」というサイクルが生まれやすくなります。

でも、安心してください。
こうした行動は“悪いこと”でも“わがまま”でもなく、「安心したい」というサインなんです。子どもなりに、不安や混乱を落ち着けようとする“自己防衛の行動”とも言えます。

この記事では、そんな「こだわり行動」の背景にある子どもの心理や、家庭でできるやさしい支援のしかたを、専門的な視点も交えながらわかりやすくお伝えします。

「どう声をかけたらいいの?」「やめさせたほうがいいの?」と悩むママが、少しでも“安心して向き合えるヒント”を見つけられるように。
ひとつずつ、ゆっくり一緒に整理していきましょう。

ADHDと強迫性障害(OCD)とは?違いと共通点をわかりやすく解説

子どもの行動を見ていて「集中できない」「こだわりが強い」と感じること、ありませんか?
実は、ADHD(注意欠如・多動症)強迫性障害(OCD)は、まったく別の特徴を持ちながらも、似たような行動に見えることがあるんです。
ここでは、まずそれぞれの特徴をやさしく整理し、どんな違いと共通点があるのかを見ていきましょう。

ADHD(注意欠如・多動症)の特徴と子どもに見られる行動例

ADHDと聞くと、「落ち着きがない」「すぐに忘れる」といったイメージを持つ方も多いですよね。
でも実際には、それだけではありません。ADHDには不注意・多動性・衝動性という3つの側面があり、子どもによって現れ方が違います。

たとえば――

  • おもちゃで遊んでいても、途中で別のことが気になって中断してしまう。
  • 話を聞いているのに、頭の中では全然別のことを考えている。
  • 思いついたらすぐ動いてしまい、あとから「やっちゃった…」と後悔する。

このように、頭の中に“やりたいこと”や“気になること”が次々浮かぶのがADHDの子どもたちの特徴です。
そして忘れっぽさや集中の切り替えにくさから、「本当にできているかな?」「間違ってないかな?」と不安になりやすく、“確認行動”につながることもあります。

さらに、ADHDの子どもには感覚過敏をもつケースも多くあります。
「手が少しでもベタベタしていると気になる」「服のタグがチクチクして集中できない」など、感覚的な不快感が強いと、その不安を減らすために手を何度も洗う・確認するといった行動が現れることもあるのです。

強迫性障害(OCD)の特徴と代表的な症状

一方で、強迫性障害(OCD)は“頭の中の不安を落ち着けるために、同じ行動を繰り返してしまう”という特徴があります。
本人も「やりすぎだな」「意味がないかも」とわかっていても、やめられない。
それがOCDの苦しさです。

たとえば、子どもによく見られる行動にはこんなものがあります。

  • 「ちゃんと閉めたかな?」とドアを何度も確認する
  • 「手が汚れている気がする」と何度も手を洗う
  • 「順番を間違えるのが怖い」と決まった並びにこだわる
  • 「数字が気になる」と同じ回数だけ動作を繰り返す

このような“不安を打ち消すための繰り返し行動”は、安心感を得るための一種の自己防衛です。
でも、安心は一時的で、すぐにまた不安が戻ってきてしまうため、行動が止まらなくなってしまうことがあります。

ADHD+強迫性障害の併発に見られる特徴

実は、ADHDとOCDの併発(ダブル特性)はめずらしくありません。
研究でも、ADHDの子どもの中に不安傾向や強迫的行動を併せ持つ子
が一定数いることがわかっています。

このタイプの子どもは、

  • ADHDの衝動性によって“思いついたらすぐ確認したくなる”
  • OCDの不安によって“やめようと思ってもやめられない”

というように、行動がエスカレートしやすい特徴があります。

たとえば、ADHDの「気になったらすぐ動く」特性と、OCDの「完璧にしたい」という特性が重なると、
「忘れていないか不安で何度も確認」「手の汚れが気になって止まらない」
といった行動が繰り返されるのです。

また、周囲からは「神経質すぎる」「落ち着きがない」「わがまま」と誤解されてしまうことも少なくありません。
しかし、これらは性格ではなく、“脳の働き方の違いによる自然な反応”です。

ママとしては、「どうしてこんなにこだわるの?」「なぜ止められないの?」と思うかもしれませんが、
実はその行動の裏には、「安心したい」「失敗したくない」という切実な気持ちがあるんです。

「手を洗う」「確認が止まらない」行動の本当の理由とは?

お子さんが「手を何度も洗う」「ドアを何回も確認する」――。
そんな姿を見ると、「なんでこんなに気にするの?」「どうしてやめられないの?」と、つい心配になりますよね。
でも、実はこの行動にはちゃんと“理由”があります。

それは、子ども自身が「不安をコントロールしようとしている」からなんです。
ここでは、その背景にある心理や環境の影響、そして親の関わり方で変わるポイントを見ていきましょう。

不安をコントロールするための“自己防衛行動”

「汚れが気になる」「ちゃんと閉めたか不安」「間違えたくない」――。
こうした気持ちが強くなると、子どもは“安心したい”という思いから同じ行動を何度も繰り返します。
これはわがままではなく、不安を減らすための“自己防衛行動”なんです。

たとえば、

  • 手が少しでも汚れている気がすると気持ち悪くて洗わずにいられない。
  • ドアを閉めたか心配で、何度も確認しないと落ち着かない。
  • 「やらなかったら悪いことが起きるかも」と思い込み、やめられない。

大人でも「ガスの元栓ちゃんと閉めたかな?」と気になること、ありますよね。
それと同じで、子どもにとっては“安心を取り戻すための行動”なのです。

さらに、ADHDの子どもは「記憶への不安」を感じやすい傾向があります。
「ちゃんとやったはずなのに覚えていない」「自分の記憶に自信がない」ため、何度も確認してしまう。
つまり、
「忘れちゃうかも」+「失敗したくない」=確認が止まらないという状態になりやすいのです。

行動を悪化させる環境的要因

実は、こうした“確認や手洗いが止まらない行動”は、まわりの環境によって強くなることがあります。
特に気をつけたいのが、親の声かけや生活リズムです。

たとえば――

  • 「早くして!」「何度もやらないで!」と焦らせるような言葉
  • 「なんでまた洗うの?」といった否定的な反応
  • 夜更かし・朝のバタバタ・刺激の多いテレビやゲーム

これらはすべて、子どもの不安や緊張を強めてしまう要因になります。

感覚過敏がある子どもは、「ちょっとの汚れ」「手のベタつき」「音や匂い」などを強く感じるため、
一度不快な感覚を覚えると「もう嫌だ」「もっときれいにしなきゃ」と思いやすいんです。

また、生活リズムの乱れや睡眠不足も脳のストレス処理機能を低下させるので、
不安を感じやすくなり、行動が悪化することがあります。

つまり、子どもの「確認行動」や「手洗い」は、心と体が疲れているサインでもあるのです。

親が止めようとすると逆効果になる理由

つい、「もうやめなさい!」「大丈夫だから!」と言って止めたくなる気持ち、わかります。
でも、ここで気をつけたいのが、“止めさせようとするほど不安が強まる”ということ。

なぜなら、子どもにとっては“確認すること”や“洗うこと”が、自分を安心させるための方法だからです。
それを突然やめさせられると、安心の手段を奪われたように感じて、
かえって不安が再燃(ぶり返す)してしまうことがあります。

だからこそ、まず大切なのは「やめさせる」ことではなく、
“どうしたら安心できるか”を一緒に見つけること。

たとえば――

  • 「1回洗ったら、深呼吸しておしまいね」
  • 「確認したら、ママに“OK!”って言ってみよう」
  • 「どうしたら安心できるかな?」と一緒に考える

こうした声かけは、子ども自身が「安心の切り替えスイッチ」を見つける手助けになります。

親の目的は「行動を止めること」ではなく、「安心を他の形で与えること」。
これを意識するだけで、親子の関係がグッとやわらかくなり、
子どもも少しずつ「確認しなくても大丈夫かも」と思えるようになります。

つまり、「手を洗う」「確認が止まらない」といった行動の裏には、
“不安をコントロールしたい”という強い気持ちが隠れています。

そして、その不安をやわらげるために必要なのは「叱ること」でも「我慢させること」でもなく、
“安心できる環境と関わり方”を整えていくことなんです。

ADHD+強迫性障害の子どもへの正しい接し方

ADHDと強迫性障害を併発している子どもは、「頭の中がいつも忙しくて落ち着かない」と感じていることが多いです。
そんな中で「手を洗う」「確認する」などの行動は、子どもにとって安心を保つための大切な手段

だからこそ、親がどう関わるかで、安心感にも行動にも大きな変化が出てきます。

ここでは、子どもが少しずつ“自分で落ち着ける力”を育てていくための、やさしい関わり方を紹介します。

否定せず“気になる気持ち”を受け止める

つい「そんなこと気にしないで」「大丈夫でしょ」と言ってしまいがちですよね。
でも、「気になる」=子どもにとって本気の不安なんです。

たとえば、

  • 「汚れている気がする」
  • 「ちゃんと閉めたか忘れた」
  • 「失敗したらどうしよう」

こうした気持ちは、本人にとってとてもリアルで強い不安。
それを軽く否定されると、「わかってもらえなかった」と感じて、かえって不安が強まってしまいます。

だからこそ、まずは「気になるんだね」「心配なんだね」と、気持ちに寄り添う言葉をかけてみましょう。
それだけで子どもは「理解してもらえた」と感じて、少しずつ安心を取り戻します。

大切なのは、行動を止めるより“気持ちを認める”こと。
不安の背景には「安心したい」「失敗したくない」という素直な気持ちがあると理解してあげてくださいね。

行動の目的を理解してアプローチする

「どうして何回も同じことをするの?」と疑問に思う行動も、実はちゃんと理由があります。
その多くは、“安心したい”という目的から生まれています。

たとえば、手を何度も洗うのは「汚れを落としたい」だけではなく、
「清潔=安心」というイメージが強いから。
確認を繰り返すのは「大丈夫」という確証を何度も得たいからです。

親が「もうやめなさい」と言うと、その“安心のチャンス”を奪ってしまい、逆に不安が膨らんでしまいます。
そこで大切なのが、“一緒に終わりを決める”サポートです。

たとえば、

  • 「手を1回洗ったらママとハイタッチしよう」
  • 「ドアを1回確認したら、“OK!”って言って終わりにしよう」

こうして「終わり」を見える形で決めておくと、安心しながら少しずつ行動を短くできます。
やめさせるより、「安心できる形で終わる」ほうが、結果的に不安が減りやすいんです。

「安心できる行動ルール」を一緒に決める

ADHDの子どもは、「いつ終わるか」が見えないと不安になりやすい傾向があります。
そこでおすすめなのが、“見通しのあるルールづくり”です。

たとえば、

  • 「手を1回洗ったら、次は深呼吸してみよう」
  • 「確認は1回だけ。終わったらシールを貼ろう」

このように、ルールを“目で見てわかる形”で示すことで、安心しながら行動を切り替えやすくなります。
また、ルールを押し付けるのではなく、一緒に決めることもポイント。

「どうしたら安心できるかな?」と聞きながら、
子ども自身に“安心の仕組み”を作ってもらうことで、主体性も育ちます。

少しずつ変えていくことが目的なので、最初から完璧を目指さなくて大丈夫。
「1回減らせたね」「今日は自分で終われたね」という小さな成功を積み重ねていきましょう。

親の落ち着きが“子どもの安心”につながる

子どもが同じ行動を繰り返していると、親もつい焦ってしまいますよね。
「またやってる…」「いつまで続くの?」と、心の中でため息をついてしまうこともあると思います。

でも、ここで知っておきたいのは、親の焦りは子どもの不安に伝わりやすいということ。
子どもは親の表情や声のトーンにとても敏感です。

たとえば、

  • 親の声が少し強くなるだけで「怒られた」と感じる
  • 焦って話すと「早くしなきゃ」とプレッシャーを感じる
  • 親の不安な表情を見ると「やっぱり自分は変なのかな」と思い込んでしまう

だからこそ、まずは親が落ち着いて関わることが大切です。
ゆっくりした声で、「大丈夫、ここにいるよ」と伝えるだけで、
子どもは「安心できる場所にいる」と感じられます。

もしママ自身が疲れていたら、少し距離を取って深呼吸をしてみましょう。
ママの落ち着きが、子どもの安心の土台になるからです。

このように、ADHD+強迫性障害の子どもにとって必要なのは、
「やめさせる」ことではなく、“安心して終われる関わり方”です。

少しずつでも「安心の形」を一緒に探していくことで、
子どもは“自分で不安を落ち着ける力”を育てていけます。
焦らず、一歩ずつ、親子で“安心のペース”をつくっていきましょう。

今日からできる!家庭での実践的支援法

ADHD+強迫性障害の子どもを支えるとき、いちばん大切なのは「安心できる環境づくり」です。
特別な道具や専門的な知識がなくても、家庭のちょっとした工夫で、子どもの不安をやわらげたり、行動を落ち着けたりすることができます。

ここでは、「今日からすぐできる」おうちでの支援方法を、具体的に紹介します。

「確認チェックリスト」で安心を“見える化”

ADHDの子どもは、忘れやすい特性をもっていることが多く、
「ちゃんとやったっけ?」という不安が強迫的な確認行動につながることがあります。

そこでおすすめなのが、「確認チェックリスト」です。
「ドア閉めた」「手を洗った」「宿題入れた」など、
よく確認してしまう項目をリスト化し、終わったらチェックするだけ。

チェックリストを使うことで、

  • 「ちゃんとできた」という目に見える安心感が得られる
  • 「忘れたらどうしよう」という不安が減る
  • 親が何度も声をかけなくてもすむ

といったダブルの効果が生まれます。

紙に書いて壁に貼ってもいいですし、ホワイトボードやスマホアプリを使ってもOK。
子ども自身が「終わった!」とチェックを入れることで、達成感や自己肯定感も育ちます。

タイマー・時計を使って「区切り」を視覚化

ADHDの子どもは、時間の感覚をつかみにくいという特性があります。
「あとどのくらいで終わるの?」「まだ終わらないの?」という不安が続くと、
確認行動やこだわり行動が悪化してしまうこともあります。

そんなときに役立つのが、タイマーや時計を使った「見える時間支援」。

たとえば――

  • 「あと3分で終わりね」と言って、タイマーを一緒にスタート
  • 「この針がここまで行ったらおしまいだよ」とアナログ時計で示す

このように“時間の見通し”を視覚化することで、安心感がぐっと増します。
「区切り」があると、子どもは「もう少しで終わる」と理解しやすく、
強迫的な繰り返しを自然に減らすきっかけになります。

“安心アイテム”で不安をやわらげる

子どもが落ち着けるお気に入りのアイテムを持つことも効果的です。
たとえば――

  • 手触りが心地よいぬいぐるみやタオル
  • 香りがやさしいアロマストーン
  • ポケットに入るお守りや小さなキーホルダー

これらは単なるモノではなく、「安心を持ち歩けるおまもり」のような存在になります。

特に、感覚過敏のある子どもは触覚・嗅覚を通じて落ち着きを取り戻しやすい傾向があります。
「柔らかい」「あたたかい」「いい香り」などの心地よい感覚刺激を活用することで、
頭の中の不安が静まりやすくなります。

親が「これ触ると落ち着くね」と一緒に共感してあげることで、
そのアイテムが「安心のスイッチ」になります。

睡眠・食事・生活リズムを整える

実は、生活リズムの乱れが不安やこだわり行動を強めることがあります。
ADHDの子どもはもともと脳の切り替えが苦手なので、
睡眠不足や栄養バランスの乱れがあると、さらに落ち着きにくくなってしまいます。

たとえば、

  • 寝る時間が毎日バラバラ → 不安が強まり、朝の支度にも影響
  • 甘いお菓子・カフェイン・添加物の摂りすぎ → 感覚過敏や集中の乱れ
  • 朝食を抜く → 血糖値が不安定になり、気持ちも不安定に

つまり、「心の落ち着き」は生活の安定とつながっているんです。

寝る前は静かな照明にして、スマホやテレビを早めにオフ。
朝はカーテンを開けて光を浴び、「1日のリズム」を体に覚えさせるようにすると効果的です。

“失敗しても大丈夫”と伝える日常会話

ADHD+強迫性障害の子どもは、「失敗したらどうしよう」「間違えたら怒られる」と強く感じやすいタイプです。
そのため、失敗=悪いこと”という思い込みを少しずつやわらげてあげることが大切です。

たとえば、

  • 「間違ってもいいよ、次に活かせば大丈夫」
  • 「うまくいかなくても、ちゃんと考えたね」
  • 「もう一度やってみよう」

こうした肯定的な言葉を意識して伝えることで、
子どもは「失敗しても安心できる」という経験を積み重ねていきます。

特に強迫傾向のある子は、「完璧じゃないとダメ」という思いが強いので、
親が「間違ってもいいよ」と自然に言ってあげるだけでも、不安が和らぐことがあります。

「完璧よりも、安心してチャレンジできることが大事なんだよ」
そんなメッセージを、日常会話の中で少しずつ伝えていきましょう。

家庭でできる支援は、どれも「安心を見える形にする」ことがポイントです。
行動をやめさせるより、
「安心の形」を一緒に作る。
それだけで、子どもは少しずつ不安をコントロールできるようになります。

焦らずに、今日できることから始めてみてくださいね。

学校や園との連携で支援を広げよう

家庭でできる支援を少しずつ続けていくと、子どもも落ち着きやすくなります。
でも、学校や園で同じような不安が出ることもありますよね。
たとえば、「手を洗うのに時間がかかる」「確認が止まらなくて授業に入れない」など。

そんなとき大切なのは、先生や支援員さんとの連携です。
家庭と学校が同じ方向を向いて関わることで、子どもが安心して過ごせるようになります。

ここでは、先生に伝えるときのコツや、支援会議での効果的な伝え方を紹介します。

先生に伝えるべきポイント

まず伝えたいのは、「確認行動=不安を落ち着けるための行動」だということです。

多くの先生は、最初「確認が多い=こだわりが強い」「手を洗いすぎて時間がかかる=困った行動」と受け止めがちです。
でも、実際には「落ち着きたい」「安心したい」という、子どもなりの対処行動なんです。

この背景を先生に理解してもらえると、対応がガラッと変わります。

たとえば――

  • 「確認が止まらない=悪いこと」ではなく、「安心を得ようとしている行動」
  • 「手を洗う回数が多い」よりも、「きれいにして落ち着きたい」という意図がある
  • 強制的に止めると不安が爆発してしまうことがある

といった点を共有することで、先生も“叱る”ではなく“見守る”姿勢を取りやすくなります。

また、伝えるときは「〇〇しないでほしい」ではなく、
「〇〇のように関わってもらえると安心します」とお願いの形で伝えるのが効果的です。

たとえば、

「手洗いが長くても、焦らせず“あと1回で終わりね”と声をかけてもらえると助かります」
「確認しているときは“もう大丈夫だよ”より、“確認して安心できたね”と言ってもらえると落ち着きます」

といった形で、具体的な対応方法を伝えると、先生も理解しやすくなります。

支援会議・面談での効果的な伝え方

学校や園での支援会議・個別面談では、限られた時間の中で先生や支援スタッフに状況を伝える必要があります。
そんなときに役立つのが、「行動の頻度・きっかけをメモして共有する」ことです。

たとえば、

  • どんな場面で確認が増えるのか(例:登校前、給食の前など)
  • どのくらいの頻度で起きるか(1日何回・どれくらいの時間)
  • どんな声かけをすると落ち着くか

これらを客観的にメモしておくと、先生にも状況が伝わりやすいです。

さらに大事なのが、伝え方のニュアンス。
「困っている」「やめさせたい」というよりも、

「この行動は安心するためにやっているんです」
「不安が強くなると確認が増えるので、落ち着ける時間を少し取ってもらえると助かります」

というように、「困りごと」ではなく「安心のための行動」として説明するのがポイントです。

これは、支援の方向性を「やめさせる」から「安心できる方法を一緒に探す」へと変える大事な一歩。
学校側も「行動の意味」を理解できると、叱る対応から支援的な関わりに切り替えやすくなります。

また、もし学校側に心理士や特別支援コーディネーターがいる場合は、
家庭での工夫(チェックリスト・タイマーなど)を共有しておくのもおすすめです。

「家ではこの方法で落ち着くことが多いです」と伝えるだけでも、
学校での対応がぐっとスムーズになります。

つまり、学校との連携のポイントは――

  • 行動の意味を共有する
  • “安心のルール”を一緒に作る
  • 「やめさせる」より「落ち着ける環境づくり」へ

この3つです。

子どもが家庭でも学校でも同じように安心して過ごせるように、
「つながる支援」を意識していきましょう。

専門医や支援機関に相談すべきサイン

家庭での支援や環境調整を続けていても、なかなか落ち着かないこともあります。
「もう少し様子を見ようかな」と思いながらも、心のどこかで「このままで大丈夫かな…」と不安に感じること、ありますよね。

実は、ADHD+強迫性障害(OCD)の併発は、専門的なサポートが早いほど改善しやすいと言われています。
ここでは、「そろそろ専門医や支援機関に相談したほうがいい」サインと、相談時に知っておきたいポイントをまとめました。

受診を検討すべきタイミング

お子さんの行動が次のような状態になってきたら、早めの受診を検討するサインです。

■ 手洗いや確認に1時間以上かかる

「きれいにしたい」「ちゃんと閉めたい」という気持ちが強くなりすぎて、
生活の時間の大半を“確認”や“手洗い”に使っている場合は、日常生活に支障が出ています。
本人も「やめたいのにやめられない」という苦しさを感じていることが多いです。

■ 学校・外出・睡眠に支障が出るほど不安が強い

「外が汚い気がする」「ちゃんとできないかも」といった不安が強すぎて、
登校や外出を嫌がるようになったり、寝る前に何度も確認して寝つけなかったりする場合は、
心のエネルギーが限界に近い状態です。

ADHDの特性による集中力のムラも加わると、本人は常に緊張状態になってしまいます。
「朝からずっと疲れている」「夜になっても不安が消えない」ようなら、専門的な支援が必要なサインです。

■ 生活全般に疲労や混乱が見られる

いつもよりイライラしやすくなったり、泣くことが増えたり、
表情が少なくなったりするのも見逃せないサインです。
これは、脳が“がんばりすぎて疲れている”状態とも言えます。

家庭での支援だけで抱え込まず、
「相談する=助けてもらう第一歩」と考えてくださいね。

小児精神科・発達支援センターの活用法

「病院に行くほどじゃないかも…」「どこに相談すればいいかわからない」
そう思う方も多いですが、実は今は発達に関する相談窓口がいくつもあります。

代表的なのは、

  • 小児精神科・児童発達外来(診断・治療・薬の相談)
  • 発達支援センター(相談・心理士面談・療育の案内)
  • 教育相談センター・スクールカウンセラー(学校生活との連携)

それぞれ役割が少しずつ違うので、まずは地域の発達支援センターなどに問い合わせてみるのがおすすめです。

■ 診察時に伝えるべき内容

受診するときは、医師や心理士にできるだけ具体的に伝えることが大切です。
たとえば――

  • どんな行動を、どのくらいの頻度でしているか
     (例:「1日に10回以上手を洗う」「寝る前に30分確認する」など)
  • どんな場面で強く出るか(登校前・食事前・寝る前など)
  • そのときの感情の変化(焦り・不安・涙・怒りなど)

これらをメモや記録として持参すると、診察がスムーズになります。
「お母さんがどう感じているか」も立派な情報です。

■ カウンセリング・行動療法・環境調整の併用が有効

治療というと「薬を飲むのかな?」と心配される方も多いですが、
ADHD+強迫性障害の支援は、薬だけではなく“環境と心の両面”から整えることが基本です。

たとえば――

  • カウンセリング(心理士による安心づくり)
  • 行動療法(少しずつ不安を減らしていく練習)
  • 生活環境の調整(学校・家庭の連携サポート)

これらを組み合わせることで、子どもの「安心の土台」をつくることができます。

特に、親が安心して相談できる場所を持つことは、家庭全体の安定にもつながります。
「困っているから行く」ではなく、「安心を取り戻すために行く」という感覚で大丈夫です。


子どもが笑顔で過ごせるためには、ママが「ひとりで抱えない」ことが何より大切です。
少しでも「いつもと違うかも」と感じたら、早めに専門家に相談してみてください。

支援は、早く始めるほど“親子の安心”を取り戻すスピードも早くなります。

家庭で支援を続けるために大切な3つの心得

ADHD+強迫性障害の子どもへの支援は、「短距離走」ではなく「マラソン」のようなものです。
すぐに結果が出ないことも多く、時には「これでいいのかな」と不安になることもありますよね。

でも大丈夫。子どもは、親が“安心して見守ってくれる存在”でいるだけで、少しずつ前に進んでいけます。
ここでは、家庭で支援を続けていく上で大切にしたい3つの心得を紹介します。

焦らない・比べない・責めない

まず何より大切なのが、この3つの姿勢です。
「焦らない」「比べない」「責めない」
頭ではわかっていても、実際にやるのはなかなか難しいですよね。

でも、発達や行動の変化には時間がかかるのが当たり前なんです。
昨日よりちょっと落ち着いて過ごせた、確認の回数が1回減った――そんな小さな変化こそが、確かな前進です。

「〇〇ちゃんはできてるのに」「どうしてうちの子だけ…」と感じてしまうときもあります。
でも、子どもたちはそれぞれ違うペースで成長しているんです。
比べるのは他の子ではなく、「昨日のわが子」

そして、もし子どもがうまくいかない日があっても、
「なんでまた同じことを…」と責めるのではなく、
「今日は不安が強い日なんだな」「明日はもう少し落ち着くかも」と、“波があるのが自然”と受け止めてあげましょう。

子どもは、親が焦らず見守ってくれることで、
「失敗しても大丈夫なんだ」と安心してチャレンジできるようになります。

ママ自身のメンタルケアを忘れない

支援を続けていくうちに、どうしてもママ自身が疲れてしまうことがあります。
「子どものために頑張らなきゃ」と思う気持ちはとても素晴らしいことですが、
ママの心が限界になると、どんな支援も続けられません。

だからこそ、「ママの心のケア」も支援の一部なんです。

たとえば、

  • 家族に「今日は少し休みたい」と伝える
  • 支援センターや相談機関に話を聞いてもらう
  • 同じ悩みを持つママ友と気持ちを共有する
  • 「今日はここまで頑張った」と自分を褒める

こうした小さな積み重ねが、心の回復につながります。

中でもおすすめなのは、「1日の終わりに“できたこと”を3つ思い出すこと」。
「怒らずに話せた」「一緒に笑えた」「深呼吸できた」――
どんな小さなことでも構いません。

それを意識することで、“できていないこと”より“できたこと”に目を向けられるようになります。
これは、ママの自己肯定感を保つうえでとても大切な習慣です。

子どもを支える力の源は、ママの笑顔です。
子どもが安心するのは、ママが無理をして完璧に支援をする姿ではなく、
「ちょっと休みながらでも、ちゃんと見てくれている」その温かさなんです。

焦らず、比べず、責めず――。
そして、「自分も支えを受けていいんだ」と思えることが、
結果的に子どもにとって一番の安心につながります。

ママが安心して笑える時間を、どうか大切にしてくださいね。

体験談:繰り返し行動が落ち着いた“家庭での工夫”

ここでは、実際に「ドアの確認が止まらなかった子ども」の行動が、少しずつ落ち着いていった家庭での実践例を紹介します。
特別な方法ではなく、「安心の仕組みを一緒に作った」だけ。
この体験談からも、“焦らず・寄り添う支援”がどれほど効果的かが分かります。

ドアを何度も確認していた子が、チェックリストで安心を得た事例

小学2年生のAくんは、外出前に「ドアがちゃんと閉まっているか」気になって、
毎朝10回以上確認しないと出かけられませんでした。
ママが「もう大丈夫だよ」と言っても、Aくんは納得できず、
遅刻ギリギリまでドアを開けたり閉めたりを繰り返す日々。

ママもつい「もう!間に合わないでしょ!」と焦ってしまい、
お互いに疲れ切ってしまっていたそうです。

そんなとき、支援センターでアドバイスを受け、
ママは「確認チェックリスト」を作ることにしました。

リストには「①ドアを閉めた」「②鍵をかけた」「③ハンカチを持った」など、
Aくんが気にしやすい項目を3つ書いて、チェック欄をつけました。

そして外出前、
「今日はこれを一緒に確認しようね」と言いながら、
ママとAくんが一緒にリストをチェックする“確認タイム”を設けたのです。

「一緒に確認」→「自己確認」へとステップを踏む支援で成功

最初の1週間は、ママが隣で「じゃあ次はドアね」と声をかけながら、
一緒にチェックしていきました。
するとAくんは、「紙にチェックがついてるから安心できる」と少し笑顔に。

やがて、Aくんのほうから「今日は自分でやる!」と言い出すように。
ママはそれを受け止めて、「一緒に確認」から「自己確認」へと少しずつステップアップしていきました。

数週間後、Aくんはリストを見ながら一人でチェックを終え、
ママに「もうOKだよ!」と笑顔で報告。
ドアを何度も開け閉めすることが、ほとんどなくなったそうです。

このプロセスの中でママが意識していたのは、
「やめさせる」ことではなく、「安心の形を変えていく」こと。
無理に止めるのではなく、「紙にチェックする」という安心の方法を用意したことで、
Aくんの不安は自然に和らいでいきました。

「できた瞬間」を一緒に喜び、自信を育てたプロセス

行動が落ち着いてきた頃、ママはAくんの“できた瞬間”を必ず言葉にして伝えるようにしました。

「自分で確認できたね!」
「チェックして終われたね、すごいじゃん!」

この“小さな成功体験”を一緒に喜ぶことが、Aくんの大きな自信につながりました。

強迫的な行動の裏には、「不安」だけでなく、「できないかもしれない」という自己不信もあります。
だからこそ、「できた」「落ち着けた」という経験を重ねることが、
次の安心へとつながっていくのです。

Aくんのママは今、
焦らず寄り添えば、ちゃんと子どもは落ち着いていけるんだ」と感じているそうです。

この体験が教えてくれるのは――

  • 無理に止めるのではなく、「安心の形を見える化」すること
  • 親子で“できた”を喜び合うこと
  • 少しずつ“自分で安心できる力”を育てていくこと

こうした支援の積み重ねが、繰り返し行動を和らげる第一歩になります。

家庭での小さな工夫が、子どもにとっては大きな安心の変化になる。
そんなことを改めて教えてくれる事例です。

まとめ:ADHD+強迫性障害の子どもに必要なのは“安心の土台”

ADHDと強迫性障害(OCD)を併せ持つ子どもへの支援で、いちばん大切なのは――
「やめさせること」ではなく「安心を与えること」です。

「何度も確認する」「手を繰り返し洗う」といった行動は、
本人にとって“落ち着くための方法”であり、“安心を取り戻す手段”です。
だから、それを無理に止めようとするほど、不安が強まり、行動がエスカレートしてしまうこともあります。

大切なのは、「どうしてその行動をしているのか?」という行動の背景を理解すること。
そして、「安心の形を別の方法で作れるようにサポートすること」。
たとえばチェックリストやタイマー、安心グッズなど、「安心を“見える形”で支える工夫」が、
子どもの自己コントロール力を育てていく大きな助けになります。

また、家庭だけで頑張ろうとせず、学校や支援機関とチームで支えることも大切です。
先生や支援員さんに「確認行動=不安を落ち着けるための行動」であることを伝えると、
「やめさせる指導」から「安心して終われる支援」へと関わり方が変わります。
子どもが家庭でも学校でも同じルールで安心できるように、
情報を共有しながら“チームで育てる支援”を意識していきましょう。

そして何より忘れないでほしいのは、
子どもが前に進むためには、「安心できる環境」こそが成長の土台だということ。

「安心して失敗できる」
「安心してもう一度挑戦できる」

この経験を積み重ねることで、子どもは少しずつ自分の力で不安をコントロールし、
新しいことにチャレンジできるようになります。

ママも子どもも、完璧でなくて大丈夫。
焦らず、比べず、一歩ずつ。
小さな「できたね」を一緒に喜ぶことが、安心と自信を育てるいちばんの支援になります。

今日も、あなたの「見守るまなざし」が、きっとお子さんの安心につながっていますよ。

以上【「手を何度も洗う」「確認が止まらない」ADHD+強迫性障害の子への接し方】でした

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この記事を書いた人

約30年の間に培った障害福祉分野での知識や経験を、このブログで余すことなくお伝えしていきます。
所持資格:社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員等

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