ADHDの子が興味のないことをやらないのはなぜ?やる気を引き出す親の関わり方と対処法

目次

ADHDの子どもが興味のないことを「やらない・できない」理由とは?

「勉強しなさい」「早く着替えて」「片づけてって言ったでしょ!」
…と声をかけても、全然動かない。
そんなとき、思わず「なんでできないの?」「怠けてるの?」と思ってしまうこと、ありますよね。

でも実はそれ、意志が弱いわけでも、サボっているわけでもないんです。
ADHDの子どもたちには、“脳の動き方”そのものにちょっとした特徴があります。
その特性を知ると、「なるほど、だから動けなかったんだ」と腑に落ちるはずです。

脳の仕組みがカギ!ADHDの子は“興味で動く脳”を持っている

ADHDの子どもたちは、よく「好きなことには集中できるのに、嫌いなことは全然やらない」と言われますよね。
実はその背景には、“ドーパミン”という脳内物質が深く関係しています。

ドーパミンは、簡単に言えば“やる気スイッチ”を押してくれる物質です。
でも、ADHDの子どもはこのドーパミンが出にくい傾向があります。

そのため、

  • 興味があること → ドーパミンが出て「楽しい!もっとやりたい!」
  • 興味がないこと → ドーパミンが出にくく「つまらない…動けない…」

というふうに、同じ子でも“スイッチの入り方”が全く違ってしまうんです。

つまり、ADHDの子は「やらなきゃ」ではなく「やりたい」でしか動けない脳の特性を持っているということ。
だからこそ、一般的な「我慢してやる」「頑張って終わらせよう」という考え方が通じにくいのです。

「楽しい」「面白そう」「できそう」と感じた瞬間に、ものすごい集中力(いわゆる過集中)を発揮するのも、このドーパミンの働きが関係しています。

興味がない=苦痛? ADHDの子どもが抱えるストレスとは

大人でも、「興味のない仕事」「退屈な会議」ってつらいですよね。
それと同じで、ADHDの子どもにとって興味のないことは“苦痛”に近い感覚なのです。

頭では「やらなきゃ」「ちゃんとしなきゃ」とわかっていても、体が動かない。
このギャップが、子ども自身にとってもストレスになります。

さらに、親から「どうしてできないの?」「また忘れたの?」と叱られることで、
「自分はダメなんだ」「怒られるからやりたくない」と、悪循環が起きてしまうことも。

実はこれ、ADHDの子どもが最も苦しむポイントなんです。
“やりたくない”のではなく、“やりたいのに動けない”という状態。
この「できない」と「やらない」の違いを、親が理解してあげることが、支援の第一歩になります。

ADHDの子どもがつまずきやすいシーン3選

「興味がないこと」=「やらない・できない」になりやすい場面は、日常のあちこちにあります。
ここでは、特につまずきやすい3つのシーンを見てみましょう。

① 宿題やプリントなど“退屈な作業”

ADHDの子にとって、単調で繰り返しの多い作業は苦手分野です。
「あと何分で終わるのかわからない」状況では集中力が続きません。
“ゴールが見えない”ことが、最大の敵なんです。

② 片づけ・整理整頓

「何からやればいいのかわからない」「途中で別のことに目がいく」など、
ADHDの特性である注意の切り替えの難しさが出やすい場面です。
気づいたら違うおもちゃで遊んでいた…なんてよくありますよね。

③ 朝の支度や身支度

時間の感覚がつかみにくいため、支度がスムーズに進まないことも。
「あと5分で出発!」と言われても、5分がどれくらいなのかイメージしづらいのです。
このため、焦ってパニックになったり、逆に動けなくなったりすることもあります。

また、興味のあること――例えばゲームや絵、ブロックなど――にはものすごく集中できるのに、
それ以外のことは全く手がつかないという“極端な差”も特徴的です。

このギャップがあることで、親は「できるときもあるのに、なんで今はできないの?」と感じがちですが、
実はこれこそがADHDの脳の特性による自然な現象なんです。

つまり、ADHDの子どもが「興味のないことをやらない・できない」とき、
それは“やる気がない”のではなく、“脳が動けない状態”になっているだけ。

だからこそ、親が「どうすれば動けるようになるか」を知ることが大切なんです。
このあと紹介する関わり方や工夫で、“やらなきゃ”が少しずつ“やってみようかな”に変わっていきますよ。

「やらない・できない」ときに逆効果なNG対応

ADHDの子どもが「やらない」「できない」とき、つい親も焦ってしまいますよね。
「なんでできないの?」「さっきも言ったでしょ!」と、言葉が強くなってしまうこともあると思います。

でも実は、頑張らせようと思ってやっていることが、逆効果になってしまう場合があるんです。
ここでは、ADHDの特性を踏まえて“やりがちなNG対応”と、その理由をわかりやすく解説します。

「やるまで終わらせない!」の強制は逆効果

「終わるまでゲーム禁止!」「宿題が終わるまで立っちゃダメ!」
…そんな“やるまで終わらせない方式”、やったことありませんか?

実はこれ、ADHDの子どもにはあまり効果がないどころか、逆効果になることも多いんです。

なぜかというと、ADHDの子の脳はプレッシャーや恐怖で動くタイプではなく、“安心”で動くタイプだから。
「やらないと怒られる」という状況では、脳がストレスを感じて思考がストップしてしまうんです。

大人でも、緊張しすぎると頭が真っ白になることがありますよね。
それと同じで、ADHDの子は叱られた瞬間、脳の“やる気スイッチ”が完全にオフになります。

つまり、「罰よりも安心が行動を生む」ということ。
「ここまでできたね」「あと少し一緒にやってみよう」と、安心できる声かけのほうがずっと効果的なんです。

強制して動かすよりも、「安心できる環境」を整えることが最大の支援になります。

「どうしてできないの?」の言葉が自信を奪う理由

「なんでできないの?」「昨日はできたのに!」
この言葉、つい口から出てしまうことがありますよね。
でも、ADHDの子どもにとっては、この一言が心に深く刺さってしまうことがあるんです。

ADHDの子どもは、脳の特性上、“比較”や“評価”にとても敏感です。
そして、何度も失敗を経験しているため、すでに「どうせ自分はできない」と思い込みやすい傾向もあります。

そこに「どうしてできないの?」と責めるような言葉が加わると、
「やっぱり自分はダメなんだ」という気持ちが強くなり、行動する意欲がさらに下がってしまいます。

また、“昨日はできたのに今日はできない”というのも、ADHDの特徴のひとつです。
集中の波が大きく、その日の体調・環境・刺激量によってできる日とできない日があるのです。

だから、昨日できたことが今日は難しくても、それは「怠け」ではなく脳の調子の違い
親が「できた」「できなかった」ではなく、“やろうとした気持ち”を認めてあげると、子どもは安心して次の行動につなげやすくなります。

「ごほうび作戦」だけに頼ると失敗するワケ

「宿題が終わったらシールをあげよう!」「片づけできたらお菓子ね!」
この“ごほうび作戦”、うまくいくときもありますよね。

でも、注意したいのは、ごほうびに頼りすぎると「やらされてる感」が強くなってしまうということ。

ごほうびがあるからやる → ごほうびがなければやらない
という状態になってしまうと、子どもの「自分からやる力(内側のやる気)」が育ちにくくなってしまうんです。

また、ADHDの子どもは“ごほうびへの興味”にも波があります。
最初はワクワクしていても、数日で飽きてしまうことも多いんです。

大切なのは、ごほうびを「動機づけのきっかけ」に使うこと。
「やったらこれがもらえる」ではなく、「頑張れたね」「一緒にやれてうれしい」といった感情的なごほうび(承認)に変えていくことが理想です。

つまり、“物”より“気持ち”のごほうびのほうが、長い目で見ると子どもの自信を育てるんです。
成功するごほうびの使い方については、次の章でくわしく解説しますね。

まとめ:叱るより“安心”が力になる

ADHDの子どもは、「怒られると動くタイプ」ではなく、「安心すると動けるタイプ」。
つまり、“脳が安心できる環境を作ること”が、行動を促す最短ルートなんです。

  • 「やるまで終わらせない」は脳のストップボタン
  • 「どうしてできないの?」は自信を削る言葉
  • 「ごほうび作戦」は一時的な効果にとどまりやすい

叱るよりも、「わかってるよ」「一緒にやってみよう」と声をかけてあげること。
それが、ADHDの子の“やる気スイッチ”を押す、いちばんの近道なんです。

ADHDの子が興味のないことに取り組めるようになる工夫と対処法

「どうしてもやる気が出ない」「始めるまでが大変」──ADHDの子どもにはよくあることですよね。
でも、実はほんの少しやり方や環境を工夫するだけで、“やらない”が“できた!”に変わることがあります。

ここでは、子どもが“興味のないこと”にも少しずつ取り組めるようになるための、家庭でできる簡単な工夫や支援のコツを紹介します。

① 見通しを立てると「安心して動ける」ようになる

ADHDの子どもが苦手なのは、「いつ終わるかわからない作業」です。
例えば、宿題やお片づけ。終わりが見えないまま続くと、「もう無理!」と投げ出したくなるのは当然です。

そこで効果的なのが、「見通し」を立ててあげること。
「あと10分で終わるよ」「この3つだけ片づけよう」と、“区切り”をはっきりさせることで、子どもの脳が安心します。

たとえばこんな工夫があります:

  • タイマーを使って「5分だけやってみよう」と区切る
  • チェックリストで「やること」を見える化する
  • ビジュアルスケジュール(絵や写真で予定を見せる)を使う

このように“ゴール”を目で確認できると、ADHDの子でも「やってみようかな」という気持ちになりやすいんです。

「全部やりなさい」ではなく、「ここまでやったら休憩しよう」のように、細かく分けるのがポイントです。

② “やる理由”を一緒に見つけることで行動が変わる

ADHDの子どもは、「やらなきゃ」だけでは動きません。
でも、「やる理由」が自分の中でハッキリすると、不思議とスイッチが入ります。

たとえば、「宿題を早く終わらせて、好きな動画を観よう」とか、「お片づけをしたら、お気に入りの絵本を読もう」など。
“やる理由”を本人と一緒に見つけることが大切なんです。

これは単なるごほうびとは違い、「自分の行動が何かにつながる」感覚を育てる支援です。
親が「やらせる」ではなく、「一緒に理由を見つける」という姿勢で関わると、子どもは納得して行動しやすくなります。

たとえばこう言い換えてみましょう:

  • NG:「早くやりなさい!」
  • OK:「早く終わらせて、好きなことしようか!」

このように、「義務」ではなく「目的」を共有するだけで、子どもの気持ちは大きく変わります。

③ 興味あることと組み合わせて“楽しく取り組む”

ADHDの子どもにとって、興味のないことは“苦痛”に近いですが、ちょっとした「楽しさ」をプラスするだけで、ぐっと動きやすくなります。

たとえばこんな工夫:

  • 勉強 × 好きなキャラクターのノートや文房具を使う
  • 掃除 × 音楽やリズムに合わせてやってみる
  • 朝の支度 × ゲーム感覚でタイマー競争にする

こうした「遊びの要素」を取り入れると、子どもの脳にドーパミンが出やすくなり、やる気が自然とわいてきます。

さらに、ADHDの子には“過集中(ハイパーフォーカス)”という強みがあります。
一度ハマるとものすごい集中力を発揮するので、その力を上手に利用するのもポイントです。

たとえば「お片づけ競争!」とゲーム化したり、「できた分だけシールを貼る」といった達成を可視化する仕組みを作ると、過集中モードが良い方向に働きます。

要は、「つまらないことを楽しく見せる工夫」がコツなんです。

④ 「できた!」を積み重ねる小さな成功体験の作り方

ADHDの子どもにとって、「できた!」という達成感が次の行動エネルギーになります。
逆に、「また怒られた」「失敗した」と感じると、どんどん自信をなくしていきます。

そのため、小さな成功を積み重ねる支援がとても大切。
たとえ1分でも机に向かえたなら、それは立派な成功です。

親が気づいた瞬間に、
「ちゃんと始められたね!」
「昨日より早くできたね!」
と、行動を具体的にほめるのがコツです。

特にADHDの子には、「結果」より「過程」を評価する言葉が響きます。

  • NG:「まだ全部できてないよ」
  • OK:「途中までできたね、がんばったね」

たったこれだけで、子どもの“自己肯定感”はぐんと上がります。

そしてその小さな「できた」の積み重ねが、「自分でもできるんだ」という自信に変わり、次の行動を後押ししてくれるんです。

まとめ~「やらない」には理由がある!ADHDの子をやる気に導く4つの関わり方

ADHDの子どもにとって、“やらない・できない”の裏には必ず理由があります。
それは「意志が弱いから」ではなく、「脳の仕組み的に動きづらい」だけ。

だからこそ、

  • 見通しを立てることで安心を与え、
  • やる理由を一緒に考え、
  • 楽しさをプラスして、
  • 小さな成功をほめる。

この4つのステップを意識するだけで、子どもは少しずつ“やる気を出す力”を身につけていきます。

「できない子」ではなく、「やり方を変えればできる子」。
そんな視点で見てあげることが、いちばんの支援になるんです。

家庭でできる!ADHDの子どもへの関わり方・支援法

「家でどんなふうに関わればいいの?」
ADHDの子どもを育てる中で、いちばん多いお悩みのひとつですよね。

専門家の支援や学校での配慮ももちろん大切ですが、毎日の生活の中で親ができる関わり方こそが、子どもの成長を大きく支える力になります。
ここでは、家庭で無理なくできる3つの関わり方を紹介します。

① 「一緒にやる」が最強!伴走型サポートの効果

ADHDの子どもにとって、「ひとりで始める」ことがいちばん難しいハードルです。
頭の中では「やらなきゃ」とわかっていても、なかなか体が動かないんです。

そんなときこそ、親が“一緒にやる姿勢”を見せてあげるのが効果的。
「宿題しなさい!」と声をかけるより、
「ママもお手紙書くから、一緒に机に座ろう」と誘う方が、子どもはすっと動けることが多いんです。

このときのコツは、“正面から向き合う”のではなく、“横に並んで寄り添う”スタイル。
いわゆる「横並びスタイル」です。
正面から見つめられるとプレッシャーを感じる子も多いですが、横に座って同じ方向を見ることで、安心感が生まれやすくなります。

また、「見守りながらも手を出しすぎない」バランスも大切。
手を出しすぎると「自分でできない」と感じてしまうこともあるため、あくまで“サポート役”に徹するイメージでOKです。

子どもが自分のペースで動けるように、

  • 「一緒に始める」
  • 「途中で励ます」
  • 「終わったら喜び合う」
    この3ステップを意識するだけで、行動へのハードルはぐっと下がります。

② 感情の切り替えを助ける“タイマー習慣”

ADHDの子どもは、時間の感覚がつかみにくく、“今やっていること”から“次の行動”へ切り替えるのがとても苦手です。
たとえば、「テレビ終わったらお風呂ね」と言っても、頭では理解していても行動に移れないことがあります。

そんなときに役立つのが、“タイマー習慣”です。

「あと5分で終わりね」と伝えるだけでなく、実際にタイマーをセットして、
“音や光で視覚的に時間を知らせる”ことがポイントです。

おすすめの使い方は:

  • タイマーで5分前の合図を出す(「ピピッ」と鳴ったら“次の準備”の合図)
  • 音楽で切り替える(朝の支度BGM、片づけソングなど)
  • 視覚タイマーを使って“残り時間が見える”ようにする

このように、子どもの脳に「そろそろ次に行くんだな」と予告を与えることで、安心して切り替えができるようになります。

また、タイマーを“敵”ではなく“味方”に感じてもらうことも大事。
「タイマーが鳴ったら終わり!」ではなく、
「タイマーが鳴ったらママと一緒に次のことしよう!」と声をかけてみましょう。

感情の切り替えを助けるのは、“指示”ではなく“予告と安心”です。
少しずつ“切り替えの型”を作っていくことで、日常生活がスムーズになります。

③ 環境を整えると行動がスムーズになる

ADHDの子どもにとって、環境の影響はとても大きいです。
集中できる・できないは、本人の努力というより“環境の合う・合わない”によって変わることが多いんです。

たとえば、「静かな自室で勉強する」よりも、
リビングのテーブルで、家族の気配を感じながらの方が集中できる子もいます。

なぜなら、ADHDの子は“安心感がある場所”で力を発揮しやすいからです。
一人きりだと不安になって集中が続かないケースも少なくありません。

また、照明や音も意外と大事です。

  • 照明が明るすぎるとソワソワする
  • テレビの音や時計の音が気になる
  • 夕方より朝の方が集中しやすい

といったように、感覚の刺激が行動に影響することもあります。

なので、「集中できない」ときは“性格”のせいにせず、
「環境が合っていないのかも?」と視点を変えてみることが大切です。

環境調整のポイントは:

  • 気が散るものを減らす(テレビ・おもちゃ)
  • 照明を柔らかくして落ち着く空間にする
  • 静かすぎるより、心地よい生活音がある場所を選ぶ

また、時間帯を変えるだけでうまくいくことも。
「夕方は疲れてできないけど、朝はスムーズ」など、子どもの“得意なリズム”を見つけていきましょう。

まとめ:家庭が“安心できる練習の場”になる

ADHDの子どもにとって、家庭は“安心して失敗できる場所”です。
外で頑張っている分、家の中ではリラックスして挑戦できる環境が大切です。

  • 「一緒にやる」ことで安心を与え、
  • 「タイマー」で切り替えの練習をし、
  • 「環境を整えて」集中しやすい空間を作る。

この3つを意識するだけで、子どもの行動がぐっとスムーズになります。

家庭での関わりは、特別な支援スキルがなくても大丈夫。
大切なのは、「どうすればできるか」を一緒に考えていく姿勢です。
その積み重ねが、子どもにとって何よりの安心と自信につながっていきます。

やる気を引き出す「声かけ」と「ごほうび」の黄金ルール

ADHDの子どもは、「やる気スイッチ」がなかなか入らないことがあります。
でも実は、ちょっとした声のかけ方や、ごほうびの使い方次第で、子どもの意欲はぐっと変わるんです。

ここでは、毎日の生活の中でできる“やる気を引き出す関わり方”を3つの視点から紹介します。
どれもすぐに実践できる内容なので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

① ごほうびは“結果”より“行動”を褒めるために使う

ADHDの子どもにとって、「やり始める」こと自体が大きなハードルです。
そのため、「結果」よりも「行動そのもの」を褒めることがとても大切なんです。

たとえば、

  • 宿題を“全部終わらせた”よりも、「机に座れた」「1問やってみた」を評価する
  • 片づけを“完璧にした”よりも、「少し動けた」「途中までできた」を認める

このように、“始められたこと”や“少し頑張れたこと”を褒めてあげると、子どもの脳は「行動したらうれしいことが起きる」と学習します。

そして、その積み重ねが“成功体験”となり、「やればできる」という自信を育てていきます。

また、ごほうびを使うときは、

  • 「全部できたらお菓子ね」ではなく、
  • 「少し頑張れたらママとハイタッチ!」

のように、“物”ではなく“気持ちで伝えるごほうび”を取り入れるのもおすすめです。
子どもにとって、「ママが笑顔で褒めてくれた」という経験は、何よりのごほうびになるんです。

つまり、ごほうびは“ご褒美”ではなく、“行動を認めるツール”として使うことがポイントです。

② 命令ではなく“共感+提案”の声かけに変える

「早くやって!」「いい加減にしなさい!」
つい言ってしまう言葉ですが、実はこれ、ADHDの子どものやる気スイッチをオフにしてしまうことがあるんです。

なぜなら、ADHDの子は“感情にとても敏感”で、命令口調で言われると「責められている」と感じてしまうことが多いから。
そうなると、頭の中がパニックになって、余計に動けなくなってしまいます。

そこでおすすめなのが、“共感+提案”の声かけです。

たとえば、

  • NG:「早く宿題しなさい!」
  • OK:「やりたくない気持ちわかるよ。でも5分だけ一緒にやってみようか?」

たったこれだけの違いで、子どもの反応が変わります。

共感の言葉を最初に入れることで、子どもは「わかってもらえた」と感じ、安心して行動に移れるんです。
さらに、「一緒に」「少しだけ」という言葉を添えることで、ハードルを下げて取り組みやすくなります。

親が“指示する”のではなく、“提案する”スタイルに変えることで、子どもは自分から動けるようになります。
「命令」より「共感+提案」が、やる気を引き出すカギです。

③ 成功体験を“見える化”して自信につなげる

ADHDの子どもは、がんばっても成果がすぐに見えにくいと、やる気をなくしてしまいがちです。
だからこそ、“できた!”を見える形に残すことがとても大切なんです。

おすすめは、「シール表」や「達成ノート」。
小さなことでもシールを貼ったり、ママが「今日できたこと」をメモしてあげると、子ども自身が“前に進んでいる”ことを実感できます。

たとえば:

  • 朝の支度ができたらシール1枚
  • 宿題を始められたら星マーク
  • 片づけできたら「できたね!」と書いてシールを貼る

こうした“見える成果”は、ADHDの子どものモチベーション維持にとても効果的です。

さらに、「昨日よりちょっと早くできたね」「昨日より静かにできたね」など、“比較対象を他の子ではなく、昨日の自分”にする声かけも大切。
これにより、子どもは他人と比べられる不安が減り、「自分でも成長できている」という実感を持てます。

つまり、「成功体験を見える化」=自信を育てる支援なんです。
自信がつくと、やる気のエンジンがどんどん強くなっていきます。

まとめ:やる気は“叱る”より“認める”で育つ

ADHDの子どもは、「やらない子」ではなく、「やる気の出し方がちょっと違う子」。
そのやる気を引き出すには、叱るよりも“認める”関わり方が何倍も効果的です。

  • ごほうびは「結果」より「行動」を褒めるために使う
  • 声かけは「命令」ではなく「共感+提案」に変える
  • 成功体験を“見える化”して自信につなげる

この3つを意識するだけで、子どもの表情や行動が少しずつ変わっていきます。

そして何より大事なのは、「やる気は育てるもの」ではなく、「引き出すもの」という考え方。
ママの関わり方ひとつで、子どもの中の小さなやる気の芽が、ぐんぐん育っていきます。

「やらない」時こそチャンス!行動の裏に隠れたサインを読み取ろう

ADHDの子どもが“やらない”“動かない”とき、
つい「やる気がない」「興味がない」と感じてしまうこと、ありますよね。

でも実は、その「やらない」行動の裏には、必ず何かのサインや理由が隠れています。
そしてその理由を見つけられたときこそ、子どもの成長につながるチャンスなんです。

ここでは、“できない”“やらない”行動の裏にある3つの背景と、そこから見えてくる支援のヒントを紹介します。

① 本当に“興味がない”のではなく「難しすぎる」ことも

ADHDの子どもは、やる前に「どうせ無理」と感じてしまうことがあります。
でもそれは、本当に興味がないからではなく、“難しすぎる”と感じているだけのことも多いんです。

たとえば、

  • 宿題の手順が多すぎる
  • 話の流れを覚えながら書くのが大変
  • 説明を聞いたけど頭に入らない

こうした場合、脳の「ワーキングメモリ(作業記憶)」や「処理速度」の特性が関係しています。
つまり、「一度にいくつものことを覚えて処理する」ことが苦手な傾向があるのです。

だから、やらない=興味がないではなく、
「やり方が合っていない」だけのことも多いんですね。

そんなときは、課題をスモールステップ(小さな段階)に分けることが効果的です。
たとえば、

  • 宿題を「国語→休憩→算数」と区切る
  • 「1問だけやってみよう」と始める
  • 「1ページの半分だけ」など量を減らす

このように、“できる範囲”を見つけてあげると、やる気のハードルがぐっと下がります。
子どもに合ったサイズに分けることが、行動を引き出す第一歩なんです。

② 感覚過敏・不安・失敗体験が影響していることも

ADHDの子どもが“やらない・動けない”背景には、感覚の過敏さや不安、過去の失敗体験が関係していることもあります。

たとえば、

  • 照明がまぶしすぎて集中できない
  • 消しゴムの匂いや鉛筆の音がイヤ
  • 教科書の紙の感触が苦手
    といったように、感覚的な刺激が行動をブロックしているケースも少なくありません。

さらに、「前にうまくいかなかった」「叱られた」という記憶が残っていると、
“また失敗するかも…”という不安が強くなり、体が動かなくなることもあります。

これは怠けているのではなく、「脳が防御反応を起こしている」状態なんです。

そんなときに大事なのは、
「どうしてできないの?」ではなく、
「何がイヤなんだろう?」と“理由を一緒に探す姿勢”です。

たとえば、
「音が気になる?」「まぶしい?」「どうしたらやりやすいかな?」とやさしく聞くだけで、
子どもは安心して気持ちを話してくれることがあります。

原因がわかれば、対応も変えられる。
子どもの「やらない」は、SOSのサインであることを忘れずに受け止めてあげましょう。

③ うまくいかない日も「学びのチャンス」として受け止める

ADHDの子どもは、できる日とできない日の差がとても大きいです。
昨日できたことが今日はできない…そんなこともしょっちゅう。

でもそれは、「努力が足りない」わけでも「意欲がない」わけでもありません。
脳の調子・気分・環境など、いろんな要因でパフォーマンスが変わるだけなんです。

だからこそ、うまくいかない日こそチャンス。
その日を“反省の日”にするのではなく、“気づきの日”として受け止めることが大切です。

たとえば、
「今日はここまで頑張れたね」
「昨日より少し短い時間だったけど、始められたのはすごいよ」
と声をかけることで、子どもは「失敗しても認めてもらえた」と感じ、次のチャレンジにつながるんです。

そして親にとっても、「どうすればスムーズにできるか」を考えるヒントになります。
つまり、“できなかった日”も、子どもを理解する貴重な情報源なんです。

ADHDの子どもにとって大切なのは、「できた・できない」で評価しないこと。
「今日はどう感じた?」「何がやりづらかった?」と、気づきを一緒に言葉にしていくことが、成長への一歩になります。

まとめ:「やらない行動」には必ず意味がある

ADHDの子どもが“やらない”とき、そこには必ず「理由」や「メッセージ」が隠れています。
それを見つけることができれば、子どもの世界が少しずつ変わっていきます。

  • 本当に興味がないのではなく、“難しすぎるだけ”のこともある
  • 感覚過敏や不安、過去の失敗がブレーキをかけていることもある
  • うまくいかない日も、「学びのチャンス」に変えられる

ママが「できない」ではなく「どうしてかな?」という視点で見守るだけで、
子どもは安心して自分のペースで進めるようになります。

「やらない」は、止まっているのではなく、“次の一歩を見つけるためのサイン”なんです。

家庭だけで抱え込まない!学校・支援機関との連携方法

ADHDの子育ては、どうしても家庭に負担が集中しがち。
「先生に迷惑をかけていないかな…」「家での困りごとを話していいのかな…」と、つい遠慮してしまうこともありますよね。

でも、家庭だけで抱え込まなくて大丈夫です!
学校や支援機関とつながることで、ママの気持ちも軽くなり、子どもも安心して力を発揮できるようになります。

ここでは、「先生との連携」と「専門機関の活用」について、実践的な関わり方を紹介します。

① 先生との連携で“無理のない課題設定”を共有する

ADHDの子どもは、興味のあることには集中できても、
「やらなきゃいけないこと」になると途端にやる気が落ちてしまうことがあります。

学校では、集団のペースに合わせる必要があるため、どうしても本人にとって“ちょっと難しい課題”になることが多いんです。
だからこそ、家庭と学校で“ちょうどいい課題設定”を共有することが大切です。

たとえば、

  • 「家では音読の途中で集中が途切れやすいです」
  • 「書く課題は嫌がるけど、口で答えるのは得意です」
    といったように、“できる・できない”を正直に伝えるだけで、先生の理解がぐっと深まります。

先生は家庭での様子を知ることで、

  • プリントの量を調整する
  • 書くより話す課題に変える
  • ごほうびシールなどでモチベーションを高める
    といったように、その子に合った学び方を提案してくれることもあります。

実際に、学校でも“興味を持てる課題”に変える工夫として、

  • 好きなキャラクターを登場させた作文テーマ
  • 自分の得意分野を活かせる自由研究
    など、「やりたい気持ち」を引き出すアイデアが取り入れられることもあるんです。

ママが“橋渡し役”として、「うちの子はこういう時に頑張れるんです」と伝えるだけで、
子どもの学校生活がぐっとスムーズになりますよ。

② 支援センター・発達支援サービスを活用しよう

ADHDの子どもにとって、専門家の視点からのサポートはとても心強い味方です。
「家庭や学校ではどうしたらいいかわからない…」という時こそ、支援センターや専門機関に相談してOKです。

主な支援機関には、こんなものがあります👇

  • 児童発達支援(未就学児):遊びやリトミックなどを通して、集団生活の基礎を育む支援を受けられます。
  • 放課後等デイサービス(小学生〜高校生):放課後に通って、宿題のサポートや社会性トレーニングなどを受けられます。
  • 発達相談センター・子育て支援センター:発達特性に合わせた関わり方のアドバイスや、他機関へのつなぎも行ってくれます。

これらのサービスを利用すると、「家庭」「学校」「専門家」がチームになって、子どもを支える形が作れます。

たとえば、

  • 学校での困りごとを支援員さんに共有
  • 家庭での工夫を相談して新しいアイデアをもらう
  • 苦手な場面の練習を支援の場で行い、成功体験を積む

このように、それぞれの場所での支援をつなぐことで、子どもの「得意」を伸ばす循環が生まれます。

また、発達支援サービスのスタッフは、専門知識をもとに子どもの強みを見つけるプロです。
家庭では見落としがちな「この子のすごいところ」を一緒に見つけてくれることも多いんです。

子どもを支えるのは「チーム」!

ADHDの子どもの支援は、ママ一人で頑張るものではありません。
学校・支援機関・家庭がつながることで、
「どこでも同じサポートが受けられる」安心感が生まれます。

  • 先生との情報共有で、無理のない課題設定ができる
  • 支援センターや専門機関を活用して、子どもの得意を伸ばすサポートを受けられる
  • 家庭・学校・支援がつながることで、子どもの自信が育つ環境ができる

ママが少し勇気を出して「相談してみよう」と声をかけることが、
子どもにとっての一番の支援の第一歩になります。

まとめ|ADHDの子が興味のないことを“できるようにする”より“大切なこと”

ADHDの子どもが「やらない」「できない」とき、
つい「どうしたらできるようになるんだろう」と考えてしまうこと、ありますよね。

でも実は、“できるようにする”ことよりも、“できる環境を整えること”の方がずっと大事なんです。

なぜなら、ADHDの子が行動しにくいのは、怠けているからではなく、“脳の特性”によるものだから。
集中しづらかったり、気持ちの切り替えが難しかったりするのは、努力不足ではなく発達の特性なんです。

「できない」にはちゃんと理由がある

ADHDの子どもは、「やりたくないからやらない」のではなく、
「どうやってやればいいかわからない」「気持ちを切り替えられない」といった理由で動けないことが多いです。

だから、「どうしてできないの?」と責めるよりも、
「どうしたらやりやすくなるかな?」と一緒に考える姿勢が大切です。

たとえば、

  • タイマーを使って見通しを立てる
  • 楽しい音楽を流して気分を切り替える
  • ごほうびシールで達成感を見える形にする

こうした工夫があるだけで、子どもの「やってみよう!」という気持ちは少しずつ育っていきます。

親の関わり方で「できない」が「できるかも」に変わる

ADHDの子どもにとって、親の存在は安心できる“伴走者”のようなもの。
親が「大丈夫」「ゆっくりでいいよ」と声をかけてくれるだけで、
子どもの脳はリラックスして、行動しやすくなると言われています。

特に、

  • 「やらせる」よりも「一緒にやる」
  • 「叱る」よりも「認める」
  • 「結果」よりも「過程をほめる」

この3つを意識するだけで、“できない”が“できるかも”に変わる瞬間が増えていきます。

親の関わり方が変わると、子どもの「自信」も育ちます。
そして、自信が育つと、「やってみよう」という気持ちも自然と生まれるんです。

“やらせる”より“できる環境を整える”ことが一番の支援

ADHDの子にとって大切なのは、「努力でどうにかする」よりも「環境でカバーする」という考え方。

たとえば、

  • 集中できる場所や時間を工夫する
  • 興味を持てる教材ややり方を選ぶ
  • 無理のないペースで進める

このように、子どもが「自然と動ける」環境をつくることが、何よりの支援になります。

ママが「頑張らせる」のではなく、
「頑張らなくてもできる仕組み」を整えることが、子どもの自己肯定感を守るカギなんです。

最後に~ADHDの子の成長は一歩ずつ。焦らず待つ勇気が“できた!”を生む

ADHDの子どもを育てる中で、ママが一番大変なのは「焦らず待つこと」かもしれません。
でも、焦らなくて大丈夫。

子どもは、自分のペースで少しずつ成長していきます。
そして、ママが寄り添いながら環境を整えていくことで、
“できない”と思っていたことが、ある日“できた!”に変わる瞬間がきっとやってきます。

大切なのは、
「できる子にする」ことではなく、「この子が安心して伸びていける環境をつくる」こと。

ママがその視点を持てば、家庭はもう立派な“おうち支援の場”になります。
無理をせず、笑顔で一緒に一歩ずつ進んでいきましょうね🌸

以上【ADHDの子が興味のないことをやらないのはなぜ?やる気を引き出す親の関わり方と対処法】でした

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この記事を書いた人

約30年の間に培った障害福祉分野での知識や経験を、このブログで余すことなくお伝えしていきます。
所持資格:社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員等

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