ソーシャルストーリーって何?ADHDの子にも使える理由をまずチェック!
子どもの行動に困ったとき、「どうして分かってくれないの?」「何度言っても同じことの繰り返し…」と、ついイライラしてしまうこと、ありませんか?特にADHDの特性がある子は、衝動的な行動や注意の持続が難しい場面が多く、周囲からも誤解されやすいものです。
そんなとき、子ども自身が「どうすればいいのか」を視覚的に理解できるツールがあるとしたらどうでしょう?それが、今回ご紹介する「ソーシャルストーリー(Social Story)」です。
ソーシャルストーリーとは?誰のための支援法?
ソーシャルストーリーは、1991年にアメリカの教育者キャロル・グレイさんによって開発された支援方法です。もともとは、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちのために作られたものなんですが、最近では「これ、ADHDの子にも応用できるんじゃない?」と注目されています。
簡単に言うと、ソーシャルストーリーは、子どもが社会のルールや場面の意味を理解しやすくするための“物語形式の支援ツール”です。
たとえば、
- 「公園では順番を守って遊ぼう」
- 「おもちゃを貸してって言われたらどうする?」
- 「先生に注意されたとき、どう返事をすればいい?」
といった日常の具体的なシチュエーションを、「ぼくは〜」「わたしは〜」と主語を自分にして書かれたストーリーで伝えるのが特徴です。こうすることで、頭ごなしに「こうしなさい!」と言われるよりも、子どもが自分の気持ちに寄り添いながら状況を理解しやすくなるんですね。
なぜ注目されている?発達支援の現場で広がる活用シーン
もともとASDの子ども向けに使われてきたソーシャルストーリーですが、最近はADHDやグレーゾーンの子どもたちにも効果があることがわかってきました。
なぜなら、ADHDの子どもたちもまた、
- 抽象的なルールを理解するのが難しかったり
- 自分の感情を言葉にするのが苦手だったり
- 繰り返しの支援や視覚的な見通しがあると安心できたり
という共通する特性を持っていることが多いからです。
実際、保育園や小学校、療育の現場でも「トラブルの予防」や「行動の切り替え支援」として導入されているケースが増えているんですよ。
また、ソーシャルストーリーは「子どもに寄り添うスタンス」で書かれているのも魅力のひとつ。
指導的・命令的ではなく、あくまでも“分かりやすく伝える”ための手段として使われるため、子ども自身が抵抗感なく受け入れやすいんです。
基本の3ステップ構成とポイントをわかりやすく紹介
ソーシャルストーリーには、基本的に以下の3つの文の種類があります。
- 記述文(事実や状況を説明する文)
例:「○○くんは、おもちゃで遊ぶのが大好きです。」 - 指導文(どうすればよいかを伝える文)
例:「遊び終わったら、おもちゃを元の場所に片付けます。」 - 肯定文(それによってどうなるか・良いことがあるよという文)
例:「片付けると、お部屋がきれいになって気持ちいいです。」
この構成があることで、子どもが状況を「事実として理解」→「どう行動すればいいか学習」→「行動の意味づけ」までを自然に行えるようになるんですね。
しかも、「こうしなきゃダメ!」という説教くさい言い方ではなく、「こうするといいよ」と優しく伝える形式なので、子どもも大人もストレスが少ないのがポイントです。
ADHDの子にも「わかりやすく伝える」工夫は効果的!
ADHDの子は、「ダメでしょ!」「ちゃんとしなさい!」と何度注意しても、どうして怒られているのかが分からなかったり、感情が先に立ってパニックになってしまったりすることがあります。
そんなときこそ、「わかりやすく伝える」「先に知らせる」「安心して行動できるようにする」というソーシャルストーリーの考え方は、とても有効です。
ADHDの子どもがつまずきやすい場面とは?親や先生が知っておきたい実態
「ちゃんと座ってなさいって言ったでしょ!」
「また忘れたの?何回言ったら覚えるの?」
…こんなセリフ、つい口に出してしまった経験、ありませんか?
でも実は、それらの“困った行動”は、子どもがわざとやっているわけじゃないことがほとんど。ADHD(注意欠如・多動症)の子どもには、脳の特性として「できない理由」がちゃんとあるんです。
まずは、親や先生がその背景をしっかり理解しておくことが、支援の第一歩です。
ADHDの「困った行動」は特性からくるもの
ADHDの子どもたちは、一般的に以下のような特性を持っていると言われています:
- 不注意(集中が続かない、忘れ物が多い、指示が抜ける)
- 多動性(じっとしていられない、動き回る)
- 衝動性(思ったことをすぐ言う、順番を待てない、手が出る)
このような行動が日常のあちこちで見られるため、周囲からは「落ち着きがない」「わがまま」「しつけがなってない」と誤解されがち。でもそれは、本人の意思や性格の問題ではなく、“脳の発達のバランス”によるものなんです。
たとえば、「静かにしよう」と思っていても、目の前に興味のあるものが現れたら反射的に反応してしまう。それがADHDの子の自然な反応であり、悪気があるわけではありません。
お友だち・先生とのトラブルになりやすいのはなぜ?
ADHDの子がつまずきやすい場面の中で、特に多いのが「対人関係のトラブル」です。
例えば…
- 順番を待てずに列に割り込んでしまう
- お友だちの話を最後まで聞かずに自分の話ばかりする
- 手や口が先に出てしまって「乱暴だ」と誤解される
このような行動が続くと、周囲から「わざとやっている」と見られてしまい、孤立してしまうことも少なくありません。
さらに、先生との関係でも、
- 授業中に立ち歩く
- 注意されたときに逆ギレする
- 宿題や持ち物の忘れが頻繁に起こる
といったことがあると、「困った子」とレッテルを貼られてしまうことも…。
でもそれは、本人が“わかっていない”わけではなく、“行動のコントロールが難しい”からなんです。
つまり、周囲が「ちゃんとやればできるでしょ」と思ってしまうと、どんどん子どもとの関係がすれ違ってしまう。そこにこそ、誤解と支援のミスマッチが生まれるポイントがあるんですね。
怒っても伝わらない?子どもが理解しやすい伝え方のヒント
ここで知っておきたいのが、「ADHDの子には、“口で説明する”だけでは伝わりにくいことが多い」ということ。
なぜなら、
- 言葉を聞いても、頭の中でイメージに変換するのが苦手
- 一度に複数の指示を出されると、途中で抜け落ちる
- 感情が先に高ぶると、内容が頭に入らない
といった特性があるからです。
たとえば、「今は静かに座ってね」と言っても、頭では理解できていても、体が勝手に動いてしまう感覚がある。
また、「なんでそんなことするの!」と怒られると、感情が先にパニックを起こしてしまい、話の内容どころではなくなるということも。
だからこそ大事なのが、「視覚的に」「短く」「具体的に」「肯定的に」伝えること。
ここで、ソーシャルストーリーのような“見てわかる・読んで納得できるツール”が、とても役立つんです。
子どもが自分のペースで読めて、繰り返し確認できて、「こうすればよかったのか」と自分で気づける。これが、ただ叱るのでは得られない“理解と安心”につながる支援なんですね。
つまずきは“支援のサイン”!行動の裏側を見てみよう
ADHDの子が何度も同じ失敗を繰り返すように見えても、それは「わざと」ではなく、「うまくできない」「伝わっていない」だけかもしれません。
親も先生も、「またか…」とつい嘆きたくなる気持ちは当然ですが、その困りごとは、支援のサインでもあります。
次の章では、ADHDの子にソーシャルストーリーがどう役立つのか、そしてどんな場面で実際に効果があったのかを具体的にご紹介していきます。
「できない」から「できた!」への一歩を一緒に探していきましょう!
ADHDにも効果アリ!ソーシャルストーリーが頼れる理由とは?
「ソーシャルストーリーって、自閉症の子向けの支援じゃないの?」
そんなふうに思っている方、多いかもしれません。
たしかに、ソーシャルストーリーは元々、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちを対象に開発されたツール。でも最近では、ADHDの子どもにもかなり効果的に使える!と、保護者や支援者の間で再注目されているんです。
なぜADHDの子にも“効く”のか?
その理由を、現場での実例や専門的な視点も交えながら、わかりやすく解説していきます。
行動を変えるより「安心感」で動けるようになる!
ADHDの子に対して、私たちはつい「どうしたら行動を改善できるか」「問題行動を減らすにはどうするか」と、“行動の矯正”に目が行きがちです。
でも実は、それよりも大事なのが、子ども自身が「安心できる環境の中で、次にどうすればいいかを理解できている」状態をつくること。
ADHDの子どもたちは、
- 見通しが立たないと不安になって行動が荒れる
- 予想外の変化に弱く、切り替えがうまくいかない
- 叱られたり注意されたりする経験が多く、自信をなくしている
…といった心理的ハードルを抱えていることが多いです。
だからこそ、ソーシャルストーリーのように「あらかじめ状況を予告し、どう動けばいいかを本人視点で優しく伝える」支援は、ADHDの子にとっても非常に効果的なんですね。
“安心感があるから動ける”──それが、ADHD支援におけるソーシャルストーリーの大きな役割なんです。
感情のコントロールや切り替えにも◎な理由
ADHDの子どもは、感情の起伏が激しい子が多いと言われています。
たとえば、
- お友だちにちょっと注意されただけで、いきなり怒る
- 「まだ帰りたくない!」と泣きながら駄々をこねる
- 思い通りにいかないと、すぐにイライラしてしまう
といったこと、よく見られませんか?
これは、ADHDの子に多く見られる「情動のコントロールが苦手」という脳の特性によるもの。大人が「落ち着いて!」と言っても、それ自体が難しい状態なんです。
そこで効果を発揮するのが、感情が高ぶる前の段階で伝えておけるソーシャルストーリー。
たとえば…
📘 「イヤな気持ちになったとき、どうしたらいい?」
📘 「帰る時間が近づいたら、こうやって準備しよう」
📘 「思い通りにいかないとき、気持ちを落ち着ける方法があるよ」
…といった内容を、子どもが落ち着いているタイミングで読んでおくことで、実際の場面で思い出しやすくなるんです。
つまり、ソーシャルストーリーは「怒った後に読む」のではなく、“怒る前に心の準備ができるようにする”ためのツールとして使うのがベストなんですね。
また、文に合わせてイラストや写真を使えば、子ども自身が感情を客観視しやすくなり、行動の切り替えもしやすくなるというメリットもあります。
実際の成功事例に学ぶ:ADHDっ子に効いたソーシャルストーリー
ここで、実際にあったソーシャルストーリーの活用例をご紹介します。
■事例:6歳の男の子(ADHD・衝動性が強め)
この子は、園でお友だちの順番を待てずに割り込んでしまい、トラブルが頻発していました。何度注意しても直らず、先生も困り果てていたそうです。
そこで、「順番を待つってどういうこと?」をテーマに、次のようなシンプルなソーシャルストーリーを作成しました。
📘タイトル:『じゅんばんって なあに?』
- すべりだいでは ひとりずつ あそぶよ。
- ○○くんが あそんでいたら、つぎは ぼくのばん。
- ぼくは まっているあいだ、しずかに みていられるよ。
- じゅんばんを まもると、みんな たのしくあそべるね!
このストーリーを、毎朝園に行く前に読むようにしたところ、1週間ほどで割り込み行動がぐっと減ったそうです。
先生からも「○○くん、ちゃんと待ってたね!すごい!」と褒められ、自信にもつながりました。
ここでのポイントは、
- 叱るのではなく、事前に行動の意味を伝えていたこと
- 成功した体験を、子ども自身が自覚できたこと
この2つが組み合わさることで、行動だけでなく気持ちの面でも落ち着いてきたという報告がありました。
行動の「その前」に働きかけることが鍵!
ADHDの子どもは、「ダメ」と言われる前に、「こうしたらいいよ」と教えてもらえれば行動できる力を持っているんです。
ソーシャルストーリーは、そんな子どもたちの“未来の行動”に向けて、優しくナビゲートしてくれるツール。
特に、「感情の爆発」や「切り替えの難しさ」に悩むADHDっ子にとっては、“心の安全地帯”のような役割を果たすこともあるんですね。
ADHDの子に効果的なソーシャルストーリーの作り方【完全ガイド】
「ソーシャルストーリーがいいって聞いたけど、実際どう作ればいいの?」
「自閉症の子向けと何が違うの? ADHDの子にはどう合わせたらいい?」
そんなふうに迷っている方のために、ここではADHDの子どもに合わせたソーシャルストーリーの作り方を、わかりやすく&具体的に解説していきます。
はじめてでも大丈夫!コツさえつかめば、おうちでも保育園・学校でもすぐに取り入れられる内容なので、ぜひこのページを参考にしてみてくださいね。
まずはここから!「困りごとを見える化」するコツ
いきなりストーリーを書き始める前に、まずやっておきたいのが、「何に困っているのか?」を明確にする作業です。
よくあるのが、
「落ち着きがないから」「癇癪を起こすから」「指示が通らないから」など、行動の“表面だけ”を見てしまうケース。
でも実際には、その行動の奥には、
- 何をすればいいのかがわかっていない
- 急な変化に不安になっている
- 感情がうまく言葉にできずに爆発している
…といった「見えにくい困りごと」が隠れていることが多いんです。
だからこそ、まずは大人が「何が原因で、どんなときに、どんな行動が出ているか」をできるだけ具体的に書き出してみることが大切です。
たとえば、
- 「朝の登園前、靴を履かずにぐずる → 急かされることが苦手?」
- 「お友だちと遊んでいるとすぐ怒る → 順番が理解できていない?」
- 「注意されるとすぐに癇癪 → 注意のされ方に過敏?」
…こんなふうに、“行動の裏側にある気持ちや背景”を見える化しておくと、ストーリーにする内容もグッと伝わりやすくなります。
ADHD向けはココが違う!感情に寄り添う文章の工夫
ADHDの子どもにソーシャルストーリーを作るとき、ASD(自閉症スペクトラム)の子に使うものと同じ型ではうまくいかないことがあります。
なぜなら、ADHDの子は、
- 衝動的に動いてしまう
- 感情の起伏が激しい
- 「納得すること」が行動のモチベーションになる
といった独自の特性を持っているからです。
だから、文章の中では以下のような“感情に寄り添う表現”を意識することがポイントです。
🟠 NGな例(押しつけ型)
「おもちゃは順番を守らなければいけません。」
🟢 OKな例(共感+肯定型)
「早く遊びたくなることがあるよね。でも順番を守ると、お友だちも嬉しいし、あとで自分も楽しく遊べるよ。」
このように、子どもの気持ちに共感しながら、「こうしたら気持ちが楽になるよ」「こんな嬉しいことがあるよ」と前向きなイメージを加えると、ADHDの子どもにも響きやすくなります。
さらに、文章は長くなりすぎず、1文1メッセージ・短文・簡単な言葉を基本にすると効果的です。
実践テンプレートつき:よくあるシーン別の事例紹介
ここからは、実際によくあるADHDの子どものシーンをもとに、ソーシャルストーリーの事例テンプレートを紹介します。
※すべて「本人が読む前提」で「わたし」や「ぼく」視点で書いています。
ケース①:教室を勝手に飛び出してしまう
タイトル:『ぼくは おこったとき、どうすればいい?』
- ぼくは ときどき、いやなきもちに なることがある。
- そのとき、きゅうに からだが うごきたくなる。
- でも、きょうしつを とびだすと、せんせいが しんぱいする。
- ぼくは、いすに すわって ふかい いきを してみる。
- おちついたら、ことばで「いやだった」と いってもいい。
- そうすると、せんせいと はなしが できる。
ケース②:お友だちとすぐケンカしてしまう
タイトル:『なにかを とられたときは?』
- おともだちに おもちゃを とられたら、いやなきもちになる。
- でも、てを だしたり おこったりすると、おともだちも かなしくなる。
- そんなとき、「かえして」と ことばで いえる。
- ことばで つたえると、きもちが すこし らくになる。
- ぼくは、うまく つたえられると じぶんが すごいと おもう。
ケース③:予定変更にパニックになってしまう
タイトル:『よていが かわったとき』
- きょうは こうえんに いくよていだった。
- でも、あめが ふって、いけなくなった。
- かなしくなったり、いらいらすることがある。
- でも、あめのひは おうちで おえかきが できる。
- よていが かわっても、たのしいことは ほかにも ある。
補足アドバイス:
- ストーリーは3〜6文程度の短さにおさめると集中しやすい
- 文字だけでなく、イラストや写真を組み合わせるとより効果的
- 印刷して繰り返し読めるようにしておくのがおすすめ
自分に合った“やさしいナビゲーション”を作ってあげよう
ADHDの子にとって、ソーシャルストーリーはただの「読み物」ではありません。
それは、行動の見通しを立てる“ナビゲーション”であり、気持ちに寄り添う“安心材料”です。
だからこそ、「どんな困りごとがあるのか?」「どう伝えれば気持ちが届くのか?」を意識しながら、子ども一人ひとりに合った内容で作っていくことが大切なんですね。
使い方を間違えると逆効果?ADHDっ子に使う時の注意ポイント
ソーシャルストーリーって、ちゃんと使えばとっても効果的なツール。でも…実は使い方を間違えると、かえって子どものやる気をなくしてしまったり、「聞いてくれない…」と大人がガッカリする原因にもなりやすいんです。
特にADHDの子どもは、注意の向け方や感情の反応が独特な分、ちょっとした“使い方のズレ”が大きな影響につながることも。
ここでは、実際によくあるつまずきポイントとその対策を、具体的に紹介していきますね。
飽きちゃう、聞いてくれない…その理由と対策
「せっかく作ったソーシャルストーリー、全然読んでくれない…」
「1回は読んだけど、2回目から完全スルーされてる…」
こんな声、支援者や保護者からよく聞きます。でもこれ、子どもがストーリーの内容に興味を持てていないだけかもしれません。
ADHDの子どもは、
- 興味が持てないと集中が続かない
- 見慣れたものにすぐ飽きてしまう
- 抽象的な表現や長い文章が苦手
…といった特徴があります。
つまり、「長い・退屈・難しい」ストーリーは、最初からハードルが高いんです。
そこでの対策としては:
✔️ イラストや写真をたっぷり使う(自分の写真があるとより◎)
✔️ 1文を短く、1ページに1メッセージで伝える
✔️ 内容を“その子の好きなもの”に寄せてカスタマイズする
✔️ 読む場所やタイミングを変えてみる(お風呂上がりや寝る前など)
また、子どもと一緒にストーリーを作るというのもひとつの方法です。
「次、何て書こうか?」「このとき、どんな気持ちだった?」と会話しながら一緒に考えることで、主体的に関わる気持ちが生まれやすくなりますよ。
「こうしなさい」はNG!子どもが自分で納得する文の書き方
ソーシャルストーリーを作るとき、大人はついつい「こうしなさい」「こうするべき」という内容にしてしまいがち。でも実はこれ、ADHDの子どもにとっては逆効果になることが多いんです。
なぜなら、ADHDの子どもは、
- 「命令口調」や「圧」のある言葉に敏感
- 自分のペースで納得して行動したいタイプが多い
- 「言われると反発したくなる」気持ちが出やすい
…といった傾向を持っています。
なので、ストーリーの中では以下のような“自分で納得しやすい書き方”を意識するのがポイントです。
🟠 NG例:「おもちゃは貸すのが正しいです。そうしなさい。」
🟢 OK例:「おともだちに貸すと、『ありがとう』って言ってもらえて、なんだかうれしい。」
こうした書き方は、行動の背景にある“気持ちの変化”を自然にイメージできるようになる効果もあります。
大事なのは、「大人がどうしてほしいか」ではなく、「子どもがどう感じられるか」を軸に文章をつくること。
それによって、「納得→理解→実践」へと、自然な流れができるんです。
叱った直後に読ませない!タイミングを間違えない工夫
「さっき怒られたばっかりだから、このストーリーを読ませて反省してもらおう」
…これは、実はやっちゃいけないパターンのひとつです。
叱られた直後って、子どもは
- 気持ちが高ぶっていて、冷静に読めない
- 「また怒られてる」と感じて心を閉ざしやすい
- 内容が頭に入らず、“嫌な経験”としてインプットされてしまう
という状態になっています。
ソーシャルストーリーはあくまでも、「安心して読める」「冷静に考えられる」タイミングで使うべきツールなんです。
おすすめのタイミングは:
✔️ 朝の支度前や登園・登校前の落ち着いている時間
✔️ 就寝前などリラックスしているとき
✔️ トラブルが起きる“前”に、予防的に読む
また、「このお話、今日ちょっと読んでおこうか!」と軽く提案する形で読めると、プレッシャーなく取り組める空気が生まれやすいです。
「伝え方」ひとつで、子どもの受け取り方は180度変わる!
せっかく気持ちを込めて作ったソーシャルストーリーでも、使い方を間違えると“伝わらないどころか嫌われる”可能性すらあります。
でも逆に、
- 興味を持てる工夫を入れて
- 命令ではなく共感の表現で
- タイミングをしっかり見極めて使えば、
ADHDの子どもにとって“やさしくて頼れる味方”になるツールへと変わっていきます。
家庭・園・学校でどう使う?ソーシャルストーリー活用の実例と連携法
ソーシャルストーリーって、作って終わりじゃないんです。
むしろ大事なのは、「いつ・どこで・誰と使うか」という実践の部分。
特にADHDの子どもは、場面や相手によって行動が変わることがよくありますよね。
だからこそ、家庭・園・学校のそれぞれで“連携して使う”ことが効果アップのカギになります。
この章では、家庭・園・学校での実践アイデアや、支援者との連携のポイントをたっぷりご紹介していきます!
家庭での声かけに悩むパパママへ:日常シーンでの使い方
まずは家庭から。パパママの声として多いのが、
- 「毎朝、支度に時間がかかって大変…」
- 「兄弟げんかが絶えない」
- 「癇癪スイッチがいつ入るか分からない」
こういった日常の“プチ困りごと”こそ、ソーシャルストーリーの出番なんです!
たとえば、朝の支度が苦手な子には…
📘 タイトル:「あさの じゅんび、できるかな?」
- ぼくは あさ おきたら、まず おようふくをきます。
- つぎに、はを みがいて、ごはんを たべます。
- じぶんで じゅんびができると、ママが にこにこするよ。
- ぼくも、うれしくなる。
ポイントは、「できてほしい行動」を段階的に、かつ前向きに伝えること。
「ちゃんとしなさい!」ではなく、「こうできると気持ちいいよね」という方向に視点を変えるだけで、子ども自身のやる気がぐっと引き出されます。
また、こんな工夫もおすすめです:
✔️ ストーリーを紙に印刷して、トイレや冷蔵庫に貼る
✔️ 毎朝の“読み聞かせルーティン”に取り入れる
✔️ 家族で登場人物になって一緒に読む(兄弟が協力しやすくなる!)
日常の中にストーリーを溶け込ませることで、自然と行動に変化が生まれやすくなります。
保育園・学校での活用アイデアと連携のコツ
園や学校では、集団生活ならではの課題がたくさんありますよね。
- 集団行動への参加が苦手
- 急な予定変更でパニック
- 先生の指示が通らない
こういった課題に対しても、ソーシャルストーリーは“トラブル予防の道具”として効果を発揮します。
たとえば、こんなシーンで使われています:
🔸 避難訓練がある日
→ 前もって「地震のときのおはなし」を読んでおくことで、音や流れに備えられる
🔸 遠足などのイベント前
→ 「バスの中でのおやくそく」をストーリーで確認し、テンションの暴走を防ぐ
🔸 教室で注意されるとすぐに泣く子
→ 「せんせいに ちゅういされたときは?」というストーリーで気持ちの整理を支援
ここで大切なのは、先生たちが“指導”の代わりに“支援”として使うこと。
そのためにも、保護者との共有がすごく重要です。
連絡帳に「今日こんな場面で読みました」とメモを書く
保護者とLINEや連絡アプリでストーリーを共有する
同じストーリーを家庭と園で使うことで、子どもにとって一貫性が生まれる
園や学校は“共通理解の場”にすることが、ストーリーの効果を最大化するコツです。
効果を最大化するには?親・先生・支援者のチームづくりがカギ
ソーシャルストーリーは、子どもひとりに合わせて“カスタマイズ”していくもの。
だからこそ、子どもを取り巻く大人たちが「チーム」で支えていくことがとても大切です。
そのチームとは…
保護者(家庭での様子を一番よく知っている)
担任の先生・保育士(集団場面での行動や傾向を見ている)
支援員・心理士・療育スタッフ(専門的な視点でのアドバイスができる)
このように、それぞれの立場から情報を出し合って、「どんなときに、どういう支援が必要か?」を共通理解することで、ストーリーもより子どもにフィットする形に変わっていきます。
月1回の振り返りミーティングを設けている園も
ストーリーに子ども本人のアイデアを取り入れることで「やらされ感」を減らす工夫も
特にADHDの子どもは、場面によって行動が大きく変わることがあるため、複数の視点で観察・支援していく姿勢が不可欠です。
ひとりじゃないから、変われる。支援は“チーム戦”!
ソーシャルストーリーは、紙1枚の支援ツールかもしれません。
でもその背後には、子どもを理解したい・助けたいと願う大人たちの連携があってこそ効果を発揮します。
家庭での「もうちょっとだけ頑張ってみようね」
園での「一緒にやってみようか?」
学校での「こうしたら安心だよ」という声かけ
こうした日々の積み重ねが、子どもにとって“世界は優しい”と思える土台になります。
「できた!」「わかった!」が増えていく未来のために、あと一歩、一緒に進みましょう。
ADHDの子にこそ、ソーシャルストーリーを!できた!が増える支援を始めよう
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
「ソーシャルストーリーって聞いたことあったけど、ADHDの子にも使えるの?」という疑問から始まり、使い方・作り方・注意点・実例まで、かなり詳しくお伝えしてきました。
結論として言えるのは、ADHDの子にもソーシャルストーリーはしっかり役に立つ!ということ。
しかも、それは単なる「行動を直すツール」ではなく、子どもの心に“安心”を届ける方法なんです。
ADHDでも「わかる・できる・安心」が増える理由
ADHDの子どもたちは、
- 注意が散りやすかったり
- 衝動的に動いてしまったり
- 感情の切り替えが苦手だったり
…といった特性を持っています。
でも、だからといって「できない子」なわけではありません。
「わかればできる」「見通しがあれば落ち着ける」──これがADHDの子の支援において、何より大切な視点です。
ソーシャルストーリーはその「わかる」「できる」「安心」の3つを、やさしく・わかりやすく・視覚的に伝えるツールなんですね。
そしてその積み重ねが、「できた!」という成功体験につながり、子ども自身の自信を育てる土台になります。
支援は押しつけじゃなく“寄り添い”が大事
ADHDの子に限らず、すべての子どもにとって大切なのは、「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じること。
「こうしなさい!」と押しつけられるよりも、
「そう思っちゃうこと、あるよね」と共感してくれる誰かがいることの方が、行動を変えるきっかけになります。
ソーシャルストーリーは、まさにその「寄り添い方」を形にしたもの。
- 何度も読み返せる
- 自分のペースで理解できる
- 気持ちの整理ができる
そんなふうに、“自分で考えて動ける”ようになるプロセスを支えるツールなんです。
支援って、指導じゃなくて、“ともに歩くこと”なんだなぁと、あらためて感じます。
親も子もラクになる!家庭で始める小さな一歩
「育児って、こんなに大変だったっけ…」
「言っても言っても伝わらない…私の伝え方が悪いの?」
そんなふうに、悩みや自信喪失のループに入ってしまうパパママ、本当にたくさんいます。
でも、ちょっと発想を変えてみてください。
✔️ 毎日怒るのではなく、“伝わる工夫”を1枚の紙で始めてみる
✔️ 「できなかったこと」に注目するより、「できるように支える方法」を考える
✔️ 大きな変化じゃなくていい。小さな“安心の積み重ね”が、未来の自立につながる
ソーシャルストーリーは、専門家だけのものじゃありません。
むしろ、いちばん子どものそばにいる親だからこそ、その子の気持ちに寄り添ったストーリーが作れるんです。
1つ作ってみたら、「あれ?なんかうまくいった!」って感じること、きっとあります。
そこからまた次の支援が生まれて、子どもの「できた!」が少しずつ増えていく。
支援は、完璧じゃなくていい。“できることを、できるかたちで”続けていくことが何より大切です。
ソーシャルストーリーは、子どもへのラブレター
ちょっと照れくさいかもしれないけれど、私はソーシャルストーリーって子どもへの“ラブレター”のようなものだと思っています。
「あなたのことをわかりたい」
「こうするときっとラクになるよ」
「いまは難しくても、大丈夫」
…そんなメッセージが詰まっているんです。
ADHDの子どもたちは、うまくできないことが多くて、まわりと比べて自信をなくしがち。
でも、“あなたの味方だよ”というストーリーがそっと寄り添ってくれるだけで、心のエネルギーがふわっと増えることもあるんです。
ぜひ、今日からできることを1つ試してみてください。
家庭から、子どもに寄り添うソーシャルストーリー支援、始めてみませんか?
以上【ADHDの子どもにも効果ある?今すぐ試したくなるソーシャルストーリー活用術&注意点まとめ】でした。
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