「自閉症の子どもに合う遊びって、どう選べばいいの?」
おもちゃを買ってもすぐ飽きてしまう、遊び方がワンパターンになりがち…そんな悩みを抱える親御さんも多いのではないでしょうか?
遊びは、自閉症の子どもの安心感や発達を支える大切な時間です。しかし、「どうやって関わればいいの?」「新しい遊びに興味を持ってくれない…」と、試行錯誤している方も多いかもしれません。
この記事では、自閉症の子どもが落ち着いて楽しめる遊びを20種類ご紹介します。さらに、遊びを通じた発達サポートの方法や、親子で無理なく遊びを続けるコツも解説!お子さんにぴったりの遊びを見つけて、毎日の生活に楽しい時間を増やしていきましょう。
はじめに
子どもにとって「遊び」は、ただの暇つぶしではなく、成長に欠かせない大切な活動です。特に自閉症の子どもにとって、遊びは感覚を整えたり、コミュニケーションのきっかけになったりする重要な手段となります。
でも、「うちの子は遊びに興味がないみたい…」「どういう遊びが合っているのかわからない」と悩んでいる親御さんも多いのではないでしょうか?
実際、自閉症の子どもは、定型発達の子どもとは少し違った遊びの楽しみ方をすることがよくあります。例えば、同じ動きを何度も繰り返したり、特定の感覚刺激(触る・見る・聞くなど)を好んだり、他の子と関わらず一人で遊ぶことを選んだりすることも珍しくありません。こうした遊び方には子どもなりの意味や安心感があり、大人が無理に変えようとする必要はないのです。
遊びがもたらす発達への影響
では、自閉症の子どもにとって、遊びがどんな成長の助けになるのでしょうか?
- コミュニケーション力の向上
- 遊びを通じて親やきょうだい、友達と関わる機会が増えます。特に「ターンテイキング(順番を守る)」のある遊びは、社会性を学ぶ第一歩になります。
- 感覚統合の促進
- 自閉症の子どもは感覚過敏や感覚鈍麻を持っていることが多く、触る・聞く・見るといった感覚刺激への反応が独特です。遊びの中でさまざまな感覚を経験することで、感覚の偏りを調整する手助けになります。
- 情緒の安定
- 好きな遊びに集中することで、気持ちが落ち着くことがあります。例えば、ブランコに乗る、リズムよく体を動かすなどは、心を安定させる効果が期待できます。また、ルーティンのある遊びは予測しやすいため、安心感を与えることにもつながります。
親子で一緒に楽しむことの大切さ
「遊び」と聞くと、どうしても子どもが一人で楽しむものと思いがちですが、親子で一緒に遊ぶことが実はとても大切です。
- 親が一緒に遊ぶことで、子どもが「安心」できる
→ 知らない遊びや新しい環境に対して不安を感じやすい自閉症の子どもも、親と一緒ならチャレンジしやすくなります。 - 子どもの興味や得意なことを深く理解できる
→ 「この遊びが好きなんだ」「こういう動きが落ち着くんだ」といったことが分かると、子どもに合った遊びを選びやすくなります。 - 言葉のやりとりが自然に増える
→ 「これやってみる?」「すごいね!」といった日常の会話のきっかけが増えるので、自然なコミュニケーションを育てることにつながります。
遊びは、自閉症の子どもにとって安心できる時間であり、成長を支える大切なツールでもあります。親子で楽しみながら、子どもに合った遊びを見つけることで、自然とコミュニケーションや感覚統合の力が育っていきます。
この後の章では、自閉症の子どもがリラックスできる「好きな遊び」20選を紹介していきます!「どんな遊びをすればいいの?」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
自閉症児の「好きな遊び」とは?特徴と選び方
子どもによって好きな遊びはさまざまですが、自閉症の子どもには特有の遊び方の傾向があります。「なぜこの遊びが好きなの?」「どうして同じことを何度も繰り返すの?」と疑問に思うこともあるかもしれません。でも、それにはちゃんとした理由があるんです。
ここでは、自閉症の子どもがどんな遊びを好むのか、そして親がどのように遊びを選べばいいのかを詳しく解説していきます。
自閉症の子どもの遊びの特徴
① 繰り返しのある遊びを好む傾向
自閉症の子どもは、同じ動作を何度も繰り返す遊びを好むことがよくあります。例えば、積み木を積んでは崩す、ブロックを同じ形に並べる、車のおもちゃを同じ方向に走らせるといった遊びです。
これは単に「飽きないから」ではなく、繰り返しの中に安心感を感じているためです。同じ動きをすることで、次に何が起こるかを予測しやすくなり、不安を減らすことができます。また、繰り返すことで自分の動きや感覚を確かめ、コントロールできるようになっていきます。
💡 親の関わり方のポイント
- 無理に別の遊びをさせようとせず、「楽しい」という気持ちを大切にする
- 「どうして同じことをするの?」ではなく、「この遊びを通してどんな感覚を楽しんでいるのかな?」と視点を変えてみる
② 感覚遊び(触覚・視覚・聴覚)への強い興味
自閉症の子どもは、五感の感じ方が独特なことが多いため、感覚刺激を求める遊びを好むことがあります。
例えば…
- 触覚が好きな子 → スライムや粘土をこねる、毛布やぬいぐるみを触る
- 視覚が好きな子 → キラキラ光るおもちゃを見つめる、水の流れをじっと眺める
- 聴覚が好きな子 → 音の出るおもちゃを何度も鳴らす、特定の音楽を繰り返し聴く
逆に、感覚過敏がある子は、触ることを嫌がったり、特定の音を避けたりすることもあります。
💡 親の関わり方のポイント
- 子どもが心地よいと感じる感覚を探し、それを活かした遊びを取り入れる
- 触られるのが苦手な子には、無理にスキンシップをとるのではなく、まず手袋をつけて触る・道具を使うなどの工夫をする
- 音が苦手な子には、ボリュームを調整できるおもちゃを選ぶ
③ 想像遊びよりも具体的な遊びを好むことが多い
定型発達の子どもは「おままごと」や「ヒーローごっこ」などの想像力を使う遊びを好むことが多いですが、自閉症の子どもは具体的な動作や決まったルールがある遊びを好むことがよくあります。
例えば…
- 想像遊びよりも、実際に形を作る遊びが好き(レゴ、パズル、積み木など)
- ルールがはっきりしている遊びが安心する(トランプやすごろくなど)
- ごっこ遊びは苦手だけど、実際の道具を使った遊びなら興味を持つ(本物の工具でネジを回す、水を注ぐ遊びなど)
💡 親の関わり方のポイント
- 想像遊びを無理にさせるのではなく、子どもが興味を持つリアルな道具を取り入れる
- 例えば、おままごとが苦手でも、本物の調理器具でバナナを切る遊びなら興味を持つこともある
④ ルーティンを守ることで安心する遊び方
自閉症の子どもは、「いつも同じ手順で遊ぶ」「特定の流れを守る」ことにこだわることがあります。例えば、電車のおもちゃを必ず右から左へ動かす、毎回同じ順番でおもちゃを並べる、遊び始める前に必ず特定の行動をする…といったことが見られます。
これは、「予測できること」が安心につながるからです。新しいことに挑戦するのが苦手な子は、まず「決まった流れ」で遊ぶことで安心感を得ているのです。
💡 親の関わり方のポイント
- ルーティンを尊重しながら、少しずつ変化を加えていく
- 例えば、同じおもちゃで遊ぶときに、「今日は青い車も入れてみる?」と少しだけバリエーションを増やしてみる
自閉症児が落ち着く遊びの選び方
では、親はどのように遊びを選べばいいのでしょうか?
① 興味のあるものを活かした遊びの選び方
好きなものをベースにすると、新しい遊びにもスムーズに移行できます。例えば、電車が好きなら「電車を走らせるだけ」でなく、積み木で線路を作る、駅のアナウンスごっこをするなど、遊びを広げていくこともできます。
② ルールがシンプルで分かりやすい遊びを選ぶ
複雑なルールがあると理解が難しく、すぐに興味を失ってしまうことも。最初は「○○をしたら次は○○」といった単純な流れのある遊びから始めるのがおすすめです。
③ 感覚過敏・鈍麻に配慮した遊び方
- 音が苦手なら静かに遊べるおもちゃを選ぶ
- 触るのが苦手なら、スポンジや手袋を使って少しずつ慣れる
- 逆に感覚刺激を求める子なら、思い切り体を動かす遊びを取り入れる
④ 一人遊びから徐々に社会的な遊びに発展させる工夫
- 最初は一人で遊ぶ時間を尊重し、そこに親が少しずつ関わる
- 例えば、子どもがブロックで遊んでいたら、隣で「ママも作ってみるね!」と自然に入る
自閉症の子どもが落ち着く遊び20選!安心できる遊びを見つけよう
自閉症の子どもにとって、遊びはただの娯楽ではなく、安心感を得たり、ストレスを和らげたりする大切な時間です。でも、「どんな遊びが合っているかわからない」「試してみてもすぐに飽きてしまう」と悩んでいる親御さんも多いのではないでしょうか?
そんなときは、子どもが興味を持ちやすい遊びの種類を知ることが大切です。特に、自閉症の子どもが落ち着いて楽しめる遊びは、感覚・運動・創造・ルールの4つのカテゴリーに分けられます。
「うちの子はどんな遊びが好きなのかな?」と考えながら、以下のリストから気になるものを試してみてくださいね!
① スライムや粘土遊び(触覚を刺激しながらリラックス)
スライムや粘土は、触るだけで楽しい不思議な感触が魅力です。ムニムニした触り心地が子どもに安心感を与え、リラックスにつながります。また、手でこねたり形を作ったりすることで、指先の感覚を刺激しながら遊べます。
💡 ポイント
- 柔らかい粘土から始めて、慣れたら硬めのものに挑戦するといいですよ!
- 色や香り付きの粘土を選ぶと、さらに感覚の幅が広がります。
② 砂遊び・小麦粉粘土(感触を楽しみながら自由に遊べる)
砂のサラサラした感触や、小麦粉粘土のしっとりした感触を楽しむことで、子どもは感覚刺激を受けながら自由な発想で遊べます。型抜きや形を作る遊びを通じて創造力も育まれます。
💡 ポイント
- 触るのが苦手な場合は、スコップやスプーンを使って少しずつ慣れさせるのがおすすめです。
- 水を加えると感触が変わり、より楽しい体験ができます!
③ 水遊び(お風呂や水風船)(リラックス効果がある)
水は、自閉症の子どもにとって心を落ち着かせる効果があります。お風呂での水遊びや水風船で遊ぶ時間は、楽しいだけでなく、リラックスにも最適です。
💡 ポイント
- コップやペットボトルで水を注ぐ遊びなど、シンプルな動きから始めましょう。
- 水が苦手な場合は、霧吹きやスポンジを使って少しずつ慣れさせてみてください。
④ 光るおもちゃ・プロジェクター遊び(視覚刺激が心を落ち着かせる)
暗い部屋で光るおもちゃやプロジェクターを使うと、視覚的な刺激が子どもに安心感を与えます。 ゆっくりと色が変わる光や動きのある映像は特におすすめです。
💡 ポイント
- 動きのある光や、ゆっくり色が変化するおもちゃを選ぶと効果的です。
- 部屋を少し暗くすると、よりリラックスした空間を作れます。
⑤ 音楽に合わせたリズム遊び(安心感を与える)
好きな音楽に合わせて手を叩いたり、体を揺らしたりすることで、子どもはリズム感と安心感を育てられます。
💡 ポイント
- 太鼓やタンバリンを使うと、音を出す楽しさも加わります。
- 好きな曲を繰り返し流すと、さらに安心して楽しめます。
⑥ トランポリンやバランスボール遊び(自己刺激を満たす)
飛び跳ねたり、バランスボールに座って弾んだりする動きは、子どもの心を落ち着かせる自己刺激となります。
💡 ポイント
- 狭いスペースでも使える小さなトランポリンやバランスボールを用意すると便利です。
- 子どもが自分のペースで楽しめるよう見守りましょう。
⑦ ブランコやハンモック遊び(揺れが落ち着きをもたらす)
前後や左右の揺れは、自閉症の子どもにとって特に安心感を与える刺激です。
💡 ポイント
- 前後の揺れが苦手な場合は、左右に揺れる動きから試してみてください。
- 安全に楽しめるよう、しっかり固定できるものを選びましょう。
⑧ ヨガやストレッチ遊び(親子でスキンシップを楽しむ)
親子で一緒にヨガやストレッチをすると、スキンシップを通じて安心感が得られます。また、深呼吸を取り入れることでリラックス効果も期待できます。
💡 ポイント
- 簡単なポーズから始めて、子どものペースに合わせて進めましょう。
- 動きながら「気持ちいいね」と声をかけてあげると、楽しい時間になります。
⑨ 風船バレーやボール遊び(ルールがシンプルで楽しい)
シンプルなルールで遊べる風船バレーやボール遊びは、初めてのルール遊びにもピッタリです。
💡 ポイント
- 柔らかいボールや風船を使うと、安全に楽しめます。
- 子どもの成功体験を増やすため、無理のないルール設定を心がけましょう。
⑩ 障害物競走やサーキット遊び(運動の達成感を味わえる)
ゴールに向かって進む遊びは、達成感を味わう良い経験になります。
💡 ポイント
- 小さなハードルやトンネルを使って、家庭でも簡単にコースを作れます。
- 最初は簡単なコースから始めて、徐々にレベルを上げていきましょう。
⑪ 積み木やレゴ遊び(自由に組み立てる楽しさ)
積み木やレゴは、自由に組み立てたり、崩したりする楽しさが魅力の遊びです。シンプルな動作の中に、想像力や空間認識能力、集中力を高める要素が詰まっています。自閉症の子どもにとって、同じ形を作ったり、規則的に並べたりする遊び方も安心感につながります。
💡 ポイント
- 最初は単純な形を作るところから始めて、少しずつ難易度を上げると◎
- 「◯◯を作ろう!」と声をかけるより、子どもが好きなように組み立てるのを見守るのがポイント
⑫ お絵描きや塗り絵(表現力を伸ばす)
お絵描きや塗り絵は、自由に表現できる遊びのひとつです。色や形を楽しみながら、自分の気持ちをアウトプットする練習にもなります。ルールがなく、自分のペースで進められるので、ストレスを感じにくい遊びでもあります。
💡 ポイント
- クレヨンや色鉛筆など、子どもが持ちやすい画材を選ぶと◎
- 「上手だね!」ではなく、「◯◯の色を使ったんだね!」と子どもの表現を認める声かけを意識する
⑬ シール貼りやクラフト遊び(指先を使うことで集中力を高める)
シールを貼る、ハサミを使って紙を切る、のりで貼る…といったクラフト遊びは、手先の動きを鍛えながら、集中力を養うのにピッタリ! 特に、細かい作業が好きな子は、何時間でも夢中になれることもあります。
💡 ポイント
- シール貼りが苦手なら、大きめのシールから始めると◎
- ハサミを使うのが難しい場合は、「ちぎり絵」からチャレンジしてみるのもアリ!
⑭ 紙芝居や絵本を読む遊び(想像力を育む)
ストーリーのある遊びは、子どもが「次はどうなる?」と想像する力を伸ばすのに役立ちます。絵本の読み聞かせはもちろん、紙芝居のように親が大げさに声を変えたり、表情豊かに読むと、より楽しい時間になります。
💡 ポイント
- 最初は短めの絵本から始めて、興味が湧いたら少しずつ長いお話にも挑戦!
- 「これなに?」と質問しながら読むと、自然にやりとりの機会が増える◎
⑮ ままごとやごっこ遊び(人とのやりとりを学べる)
ごっこ遊びは、日常の場面を再現しながらコミュニケーションを学べる遊びです。お店屋さんごっこやお医者さんごっこなど、子どもが興味を持ちそうなテーマで遊ぶとスムーズに入れます。
💡 ポイント
- 最初は簡単な役割から始めて、少しずつセリフを増やしていくと◎
- もし想像遊びが苦手でも、本物の道具(お玉やカップなど)を使うと興味が持ちやすい
⑯ 簡単なカードゲーム(UNO・神経衰弱)(ルール理解の練習)
カードゲームは、「順番を守る」「ルールに従う」といった社会性を学ぶ練習にピッタリ! シンプルなゲームなら、すぐにルールを理解でき、楽しく遊べます。
💡 ポイント
- 最初は簡単なルールのゲームからスタートするのが◎(例:神経衰弱や「色合わせゲーム」)
- うまくできたら「やったね!」と大げさに褒めると、成功体験につながる
⑰ すごろくやボードゲーム(順番を守る練習になる)
「順番を待つ」「サイコロを振る」といったシンプルなルールがある遊びは、ゲーム感覚で社会性を身につけるのに役立ちます。
💡 ポイント
- 初めは親がルールを少し手伝いながら、一緒に遊ぶと◎
- 勝ち負けにこだわりすぎないよう、「楽しく参加すること」を意識する
⑱ 音楽に合わせて止まるゲーム(リズム感とルール理解を育む)
「音楽が流れている間は動く、止まったら静止する」というシンプルなルールの遊び。リズム感を養いながら、遊びの中でルールを守る練習ができるのがポイント!
💡 ポイント
- 最初は短い時間でやって、少しずつ長くしていくと◎
- 「またやりたい!」と思えるよう、楽しい雰囲気を大切にする
⑲ かくれんぼや鬼ごっこ(仲間との交流を楽しむ)
かくれんぼや鬼ごっこは、シンプルなルールの中で「追いかける」「隠れる」といった遊びのやりとりを学ぶのに役立ちます。
💡 ポイント
- 隠れる場所やルールを最初に確認して、安心して遊べる環境を作る◎
- もしルールを理解するのが難しい場合は、「親が鬼になって優しく誘導」してあげるとスムーズ!
⑳ ルーティンを活かしたスケジュール遊び(生活リズムを整える)
「朝は歯磨きをする」「お昼ご飯の前に手を洗う」など、生活の中で決まった行動を「遊び感覚で」取り入れると、自然と習慣化しやすくなります。
💡 ポイント
- 「次はこれだね!」と、視覚的に分かるスケジュール表を用意すると◎
- 「できたらシールを貼る」「ごほうびマークをつける」といった小さな達成感を味わえる仕組みを作ると、モチベーションアップにつながる!
自閉症の子どもが安心して楽しめる遊びには、感覚・運動・創造・ルールの要素が詰まっています。 遊びの中で「できた!」という経験を増やすことで、自己肯定感も高まります。
お子さんがどんな遊びを楽しめるのか、一緒にいろいろ試しながら、「これ好きかも!」という遊びを見つけてみてくださいね!
遊びを通じて自閉症児の発達をサポートする方法
遊びは、ただ楽しいだけではなく、子どもの発達を促す大切な機会でもあります。特に自閉症の子どもにとって、遊びはコミュニケーションを学んだり、感覚の調整をしたり、自己肯定感を高めたりするための重要な手段です。
でも、「うちの子は遊びながらコミュニケーションを取るのが苦手」「なかなか新しい遊びに挑戦してくれない」と悩むこともありますよね。そこで、遊びを通じて発達をサポートする具体的な方法を紹介します。
遊びを通じたコミュニケーションの促し方
自閉症の子どもは、言葉でのやりとりが苦手だったり、相手の気持ちを読み取るのが難しかったりすることがあるため、遊びの中でコミュニケーションの練習を取り入れることが大切です。でも、無理に会話を増やそうとすると、プレッシャーを感じてしまうこともあるので、自然にやりとりが生まれる工夫をしてみましょう。
① 遊びの中で簡単な言葉やジェスチャーを取り入れる
言葉のやりとりが苦手な子でも、遊びながらなら自然にコミュニケーションを学ぶことができることがあります。
例えば、ボール遊びをするときに…
- 「いくよー!」と声をかけてから投げる
- 子どもが投げ返したら「ナイス!」と褒める
- 「次は赤いボールにしよう!」と色を指定する
こんなふうに、シンプルな言葉を遊びに取り入れると、自然に言葉のやりとりが増えていきます。
ジェスチャーも効果的です。
- 「こっちに来て!」と手招きする
- 「すごいね!」と親が大げさに拍手をする
- 「もう一回やりたい?」と頷きながら聞いてみる
こうした非言語のコミュニケーションを増やすことで、子どもも安心して反応しやすくなります。
② 目線や指差しを活用して、自然なやりとりを増やす
自閉症の子どもは、相手の目を見ることが苦手だったり、指差しをあまりしなかったりすることが多いですが、遊びを通じて「見る」「指差す」の練習をすることができます。
例えば…
- 積み木を積むときに「次はどれにする?」と指差して聞く
- おもちゃを並べて「どっちが好き?」と選ばせる
- 絵本を見ながら「わんわんはどこ?」と一緒に探す
このように、視線を向けるきっかけを作ったり、指差しを促したりすることで、少しずつコミュニケーションの幅が広がっていきます。
③ 遊びの選択肢を示し、子どもに選ばせることで意思表現を促す
自閉症の子どもは、自分の気持ちや希望を言葉で伝えるのが苦手なことがあります。でも、「どっちがいい?」と選ばせることで、無理なく意思表示の練習ができるんです。
例えば…
- 「今日はブロックと粘土、どっちで遊ぶ?」
- 「このボールとこの車、どっちが好き?」
- 「こっちの道を通る?それともあっち?」
このように、選択肢を2つか3つに絞ると、答えやすくなるので、子どももスムーズに意思を伝えられます。
「遊び」を通じた成功体験の積み重ね
自閉症の子どもは、新しいことに挑戦するのが苦手だったり、「できなかった…」という経験で自信を失ってしまうことがあるため、遊びを通じて成功体験を積み重ねることがとても大切です。
① 簡単な目標を設定し、達成できたら褒める
例えば、風船バレーをするときに…
- 最初は「1回続けられたらOK!」
- 次は「3回続けられたらすごい!」
というふうに、小さな目標を設定して、達成できたら「やったね!」と大げさに褒めてあげると、「できた!」という達成感を味わうことができます。
② 小さな成功を積み重ねて、自己肯定感を育てる
自閉症の子どもは、できないことに対して敏感なことが多いので、「できた!」という経験を少しずつ増やしていくことが重要です。
例えば…
- 積み木を1個積めたら「すごい!」
- ボールをキャッチできたら「やったね!」
- シールを貼れたら「上手!」
小さなことでも成功を実感できると、「やってみよう!」という気持ちが生まれます。
③ 子どものペースに合わせて、無理なく遊びを広げる
「この遊び、うちの子には難しいかも…」と思ったら、いきなり全部やらせるのではなく、ステップを細かく分けるとスムーズです。
例えば、ボードゲームなら…
- まずはコマを動かすだけ(ルールなしで遊ぶ)
- サイコロを振るだけ(結果は気にせず)
- 親と一緒に少しずつルールを覚える
こんなふうに、少しずつ遊びの幅を広げることで、無理なく新しい遊びに挑戦できるようになります。
- 体を動かす遊びを増やす(トランポリン、ボール遊び)
- 圧刺激を取り入れる(抱きしめる、マッサージ)
感覚過敏・感覚鈍麻に配慮した遊び方
自閉症の子どもは、感覚の感じ方が他の子と違うことがよくあります。 ある子は「音が大きすぎてつらい…」「服のタグがチクチクして気になる…」といった感覚過敏がある一方で、別の子は「強く押してもらうと気持ちいい!」「ちょっとの刺激ではあまり感じない…」といった感覚鈍麻が見られることもあります。
どちらのタイプの子も、その子に合った遊び方や環境を工夫することで、より楽しく安心して遊ぶことができます。 「どうして遊びに集中できないんだろう?」と思ったときは、お子さんの感覚の特性を考えながら、刺激の調整をしてみると良いかもしれません。
① 過敏な子には、刺激を和らげる工夫をする
感覚が過敏な子は、強い音や刺激を避けることで、安心して遊べるようになります。 例えば、大きな音が苦手な子は、人混みや騒がしい環境では遊びに集中できなかったり、触覚が敏感な子は、特定の素材が不快に感じられたりすることがあります。
💡 こんな工夫を試してみよう!
▶ 音が苦手な場合
🔹 静かな場所で遊ぶ → 騒がしい環境ではなく、家の中の落ち着いた空間で遊ぶと、安心して楽しめます。
🔹 おもちゃの音量を調整する → 音の出るおもちゃは、ボリュームを下げたり、優しい音のものを選ぶと◎。
🔹 ヘッドフォンや耳栓を活用する → 外の音が気になるときは、ノイズキャンセリングヘッドフォンや耳栓を使うのもアリ!
▶ 触るのが苦手な場合
🔹 柔らかい素材のものから試す → ふわふわの毛布、柔らかいぬいぐるみ、滑らかなスライムなど、心地よい触感のものを選ぶと◎。
🔹 手袋や道具を使って触れる → 直接手で触るのが難しい場合は、スプーンや手袋を使うと少しずつ慣れやすい!
🔹 圧刺激を活用する → 優しく包み込むようなブランケットや加重ブランケットが落ち着く子もいます。
無理に「これも触ってみよう!」と勧めるのではなく、子どもが少しずつ慣れていける環境を作ることが大切です。
② 感覚鈍麻の子には、少し強めの刺激を取り入れる
感覚鈍麻がある子は、普通の刺激ではあまり感じにくいため、少し強めの刺激を取り入れた遊びが効果的です。例えば、「くすぐられてもあまり感じない」「ぶつかっても痛がらない」などの特徴がある場合、遊びの中で適度な刺激を加えていくと、感覚のバランスを整えやすくなります。
💡 こんな遊びがオススメ!
▶ 体を動かす遊びを増やす
🏃 トランポリン → 跳ねる刺激が楽しく、全身の感覚を活性化するのにピッタリ!
⚽ ボール遊び → 少し強めに転がすボールをキャッチすることで、手の感覚も刺激される。
🛝 滑り台やジャングルジム → 高いところから降りる刺激が気持ちよく感じる子も。
▶ 圧刺激を取り入れる
🤗 ギューッと抱きしめる → 「ぎゅー!」と言いながら、しっかり抱きしめると安心感が得られる。
💆 マッサージやボディブロー → ゆっくり押す、トントンと軽く叩くなど、リズミカルな圧力が心地よい子も!
🛏 クッション遊び → 大きなクッションや加重ブランケットに包まれると、心地よく落ち着くことも。
「もっと強く!」と子どもが要求することもありますが、力加減を調整しながら、安全に遊ぶことが大切です。
③ 子どもの好みに合わせた環境作りが重要
どんなに楽しい遊びでも、環境が合っていなければ、子どもは落ち着いて楽しめません。 例えば、明るすぎる部屋や、ざわざわした場所では集中しづらいことがあります。また、「遊びたい!」と思っても、いつものルーティンが崩れると不安になってしまうことも…。
💡 環境を整えるコツ
▶ 落ち着ける空間を作る
🛏 クッションや布団で安心できるスペースを作る
🎧 音に敏感な場合は静かな部屋を用意する
▶ 遊ぶ前に流れを決める
📅 スケジュール表を作る → 「今は○○の時間、次は△△をするよ」と事前に伝えると安心!
🔄 毎回同じ流れで遊びを始める → ルーティンを作るとスムーズに遊びに入れる。
「この遊びが楽しい!」と感じられる環境を整えることで、安心して夢中になれる時間が増えていきます。
子どもの感覚の特性に合わせた遊び方を工夫することで、遊びの時間がより楽しく、安心できるものになります。 感覚過敏の子には刺激を減らして安心できる環境を作る、感覚鈍麻の子にはしっかりとした刺激を取り入れる遊びをすることで、遊びへの興味も自然と広がっていきます。
「なんだか遊びに集中できないな…」と感じたときは、ぜひお子さんの感覚の特性を観察してみてください。そして、その子に合った環境や遊びを見つけて、一緒に楽しい時間を過ごしましょう!
遊びを継続するためのポイント
「せっかく楽しい遊びを見つけたのに、すぐに飽きてしまう…」「うちの子は遊びにあまり興味を示さない」と感じることはありませんか? 自閉症の子どもにとって、遊びはただの娯楽ではなく、安心感を得たり、発達をサポートしたりする重要な時間です。
でも、遊びが続かない理由はいくつか考えられます。例えば…
- 興味のある遊びが限られていて、新しい遊びに移行しづらい
- 遊びのリズムが合わず、集中しにくい
- 遊びに親が関わることで、より楽しくなるのに、つい「子どもだけで遊んでほしい」と思ってしまう
そこで、遊びを長く続けていくためのコツを紹介します。
子どもの「好き」を尊重することが大切
① 無理に他の遊びを押し付けず、好きな遊びをベースに広げる
「いろんな遊びを経験してほしい!」と思うのは親として自然なことですが、子どもが興味を示していない遊びを無理にさせようとすると、逆に遊びそのものが嫌になってしまうこともあります。
自閉症の子どもは、特定の遊びに強いこだわりを持つことが多いですが、それを無理に変えようとするのではなく、好きな遊びを起点に少しずつ広げていくのがポイントです。
例えば…
- 電車が好きな子なら… → 「電車を走らせるだけ」から、「線路を作る」「駅のアナウンスごっこをする」などに発展させる
- 水遊びが好きな子なら… → お風呂で水を流す遊びから、「スポンジを使って泡遊び」「霧吹きで水をスプレー」などに広げる
こうすることで、無理なく遊びの幅を広げることができます。
② 遊びの時間を決め、日常のルーティンに組み込む
自閉症の子どもは、予測できるスケジュールの中で安心して過ごす傾向があるため、「遊ぶ時間」をあらかじめ決めてルーティンに組み込むと、遊びが定着しやすくなります。
例えば…
- 「おやつの後に10分間、ブロック遊びをする」
- 「お風呂の前にトランポリンをする」
- 「寝る前に絵本を読む」
こういった決まった流れがあると、子どももスムーズに遊びの時間に入れるようになります。
③ 子どもの集中できる時間に合わせて遊ぶ
子どもによって、集中しやすい時間帯は異なります。朝が得意な子もいれば、夕方に落ち着いて遊べる子もいます。
「今遊ぶ時間だから!」と決めても、子どもが疲れていたり、不機嫌だったりすると、なかなか遊びに乗ってこないことも…。そんなときは、無理に遊ばせようとせず、子どもが集中できる時間帯を見つけて、柔軟に遊ぶ時間を調整してみましょう。
親子で楽しむことを忘れずに
遊びは、子どもが一人でやるもの…と思いがちですが、親が一緒に遊ぶことで、子どもがより楽しめるだけでなく、発達にも良い影響を与えることがわかっています。
① 親も一緒に楽しむことで、子どもも安心感を持つ
自閉症の子どもは、「新しい遊び」や「ルールのある遊び」に対して不安を感じることがよくあります。でも、親が一緒に遊んでくれると、「安心できる環境」と感じて、遊びに取り組みやすくなるのです。
例えば…
- トランポリンが初めてで怖がっていたら、親が先に跳んでみる
- 粘土遊びに興味がないなら、親が「こんなの作ってみたよ!」とお手本を見せる
- カードゲームをするときに、「一緒にやろう!」と誘ってみる
こうすることで、子どもが安心して遊びに参加しやすくなります。
② 競争ではなく、協力型の遊びを取り入れる
勝ち負けがはっきりする遊びは、自閉症の子どもにとってプレッシャーになりやすいこともあります。「負けたら怒ってしまう」「勝てないと遊びたくなくなる」といったケースもありますよね。
そんなときは、競争する遊びではなく、協力する遊びを増やすのがおすすめです。
例えば…
- すごろくを「誰が一番にゴールするか」ではなく、「一緒にゴールを目指すゲーム」にする
- 積み木を「どっちが高く積めるか」ではなく、「一緒に大きなタワーを作る」にする
- パズルを「誰が早く完成させるか」ではなく、「協力して1つのパズルを完成させる」にする
こうすることで、遊びの中で「一緒にやる楽しさ」を体験できるようになります。
③ 遊びを通して、親子の絆を深める
親が一緒に遊ぶことで、「楽しい!」という気持ちを共有でき、親子の絆が深まるというメリットもあります。
例えば、子どもが「これ見て!」と嬉しそうに作品を見せてきたときに…
- 「すごいね!これどうやって作ったの?」と興味を持つ
- 「これ、ママにも作れるかな?」と一緒にやってみる
- 「この色、すごくキレイ!」と具体的に褒める
こうしたちょっとした会話が、子どもにとって「一緒に遊ぶって楽しい!」という気持ちにつながります。
遊びを続けるためには、子どもの「好き」を大切にしながら、無理なく広げていくことが重要です。そして、親も一緒に楽しむことで、子どもが安心して遊びに取り組めるようになります。
「どんな遊びをすればいいかわからない…」と悩んだときは、子どもが自然に手を伸ばすものを観察してみましょう。そこから少しずつ、新しい遊びを取り入れていくことで、親子で楽しい遊びの時間を増やしていけますよ!
さいごに
遊びは、自閉症の子どもにとって、安心感を得たり、発達をサポートしたりする大切な時間です。好きな遊びを見つけることで、気持ちが落ち着き、コミュニケーションや感覚の発達にも良い影響を与えます。
この記事では、自閉症の子どもが安心して楽しめる遊びとして、「感覚遊び」「体を使う遊び」「創造的な遊び」「ルールのある遊び」 の4つのカテゴリーを紹介しました。すべての子どもに当てはまるわけではありませんが、お子さんが興味を持つ遊びを見つけて、その楽しみを広げていくことが大切です。
また、遊びの中で自然にコミュニケーションを取ったり、小さな成功体験を積み重ねたりすることで、自信が育ち、親子の絆も深まります。無理に新しい遊びを押し付けるのではなく、お子さんのペースに合わせながら、少しずつ新しいことにも挑戦していきましょう。
まずは、お子さんが一番好きな遊びをじっくり観察してみてください。そして、その遊びを少しずつ広げていくことで、新しい発見があるかもしれません。親子で楽しい遊びの時間をたくさん作ってくださいね!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
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